29 相部屋の相手は?
ハンター学園の生徒は、全員が学園の敷地内にある大きな寮で生活することになります。
部屋は小さく、しかも2人部屋。
そういう多少不便な環境で共同生活をすることで、社会性を教育する目的もある、とリリーナ先生から説明されました。
そして、私の部屋まで案内してくれると、リリーナ先生は立ち去っていきます。
なんでも、私が見つかったこと、寮まで送ったことを報告しなければいけないのだとか。
教員ですし、それも仕事のうちでしょう。
私は、すこし人恋しい気持ちになりましたが、リリーナ先生を引き止めはしませんでした。
一人きり、部屋の隅に膝を抱えて座ります。2人部屋なので、もうひとり誰かがこの部屋に住むことになるはずです。
けれど、今は私しかいません。
もうひとりの子は、部屋を出払っているのでしょうか?
そう思って部屋を見回しますが、生活感が無く、どうやらこの部屋に先住民はいないようです。
なら、相部屋の相手は誰なのでしょう。
前期試験までの合格者なら、既に寮へ入っているはずです。
私のお姉様も、寮に入るため、お屋敷を出ました。
だから、この部屋に今住んでいる人が居ない以上、相部屋の相手は今日の合格者ということになります。
リリーナ先生から、合格者は308人中17名と教えてもらいました。
17……いえ、16分の1の確率。
それは私が逃げ出したあの人と相部屋になる確率。
考えると、さらに気分が滅入ります。
もう、会わない。
そして、近づかない。
それが一番なのですから。
そんな考えで頭がいっぱいになっている時――バアンッ、と部屋の扉が勢い良く開きました。
「――ファーリッ!!」
そこに立っていたのは、リグレットさん。
次の瞬間、リグレットさんは私に駆け寄ってきて――そのまま、ぎゅっと私を抱き締めました。
「もう、随分探しましたのよ!? 急に泣いて出ていくから、心配しましたわっ!!」
「えっ、あの……その」
「どうして合格発表も見ないで、逃げ出したのです? それを答えるまで、わたくし貴女を許しませんわ!」
有無を言わさぬリグレットさんの強い口調に、私はつい、正直に答えてしまいます。
「だって……リグレットさんが、お友達になれないって、それで私、嫌われたって思って……」
言葉が詰まって、声にできません。
「――うええぇぇんっ!!」
私は、感情が爆発したように泣きじゃくります。
抱き締めてくれるリグレットさんの胸に顔を埋めて、涙も鼻水も流しながら泣きました。
リグレットさんは服が汚れるのも気にしないで、私の背中を優しく撫で続けてくれます。
私が落ち着くまで、リグレットさんはずっと私を慰めてくれました。




