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異世界転生してもステータスはそのままでって言ったのですが!?  作者: 桜霧琥珀
一章 初めてのおともだち
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28 寂しい合格




 私は逃げ出してから、訓練場からも離れて、ハンター学園の敷地内をとぼとぼ歩いていました。


 一応、今日の目的は忘れていません。

 ハンター学園の入学試験に合格すること。


 だから、逃げて帰りたくても、合格発表を見に行かなければなりません。


 でも……リグレットさんと鉢合わせするのが怖くて、合格発表を見に行くことすらできません。

 だから私は、敷地の隅っこに座り込み、呆然と時間が過ぎるのを待っていました。

 いずれ、合格発表を見終えたリグレットさんは、立ち去っていくはずです。

 それを待って、後から見に行きましょう。


 いっそのこと、不合格の方がいい、とさえ思ってしまいます。

 リグレットさんに会いたくない。

 そんな、後ろ向きの気持ちばかり募ります。


「――こんなところにいたのか!」


 急に、大人の女性の声が聞こえます。

 見ると、見覚えがあります。今日の試験で、試験官をしていた人です。


「急にいなくなった、と騒ぎになっていたぞ。ほら、立ちなさい」

「……はい」


 私は言われるがままに立ち上がります。


「さて、とっくに合格発表の時間は過ぎている。訓練場まで、戻って見に行くかい?」


 問われて、私は首を横に振ります。


「そっか。まあ、喧嘩したんじゃ仕方ないかな。……安心しなさい。君は文句なしの合格。今日から聖ヴェルベリア王立ハンター学園の正式な生徒だ」


 それを聞いて、安心したような、不安なような、不思議な気持ちになります。

 ハンター学園に入学するのは最初の目標の一つ。

 でも、きっとリグレットさんも合格しています。

 また顔を合わせることもあるはずです。


 私が考え込んでいると、その頭を試験官の女の人がぽん、と軽く叩きました。


「暗い顔をしない。今日から君は生徒だ。つまり、私は君の先生ということにもなる。先生の言うことは聞きなさい。いいね?」

「は、はい……」

「よろしい」


 女の人は、うんうんと頷きます。


「私はリリーナ。この学園の魔法科の教員をしている。もしかすると、君のクラスの担当になるかもしれないね。その時はよろしく、ファーリさん」

「あ……はい」


 どうやら、とっくに私の名前は知られているようです。

 まあ、サーチの件でかなり話題になったでしょうから、当然のことではありますが。


「ともかく、今日から君は学園の生徒。これからは寮で生活してもらうことになるんだけど……部屋割りも合格者発表と一緒だったからね。君は行きたくないでしょう。寮まで案内してあげるよ」

「えっと……」

「ん? もしかして、今日からだと都合が悪いのかな?」

「い、いえっ!」


 むしろ、それを期待して宿はチェックアウトしています。

 そして、荷物は全てストレージの中です。

 今からでも寮に行けるのはありがたいことです。


「あの、ありがとうございます……リリーナ先生」

「うん。それじゃあ、寮に行こうか」

「はい」


 私は先生に引き連れられ、学園の寮へと向かったのです。

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