28 帰還と将来の話
皆さんが集まってきたので、私は事の次第を説明しました。
と言っても、ちゃんと私がエシルクロニアを消滅して勝利した、という部分だけですが。
シュバルツシルトに関しては、今教えても仕方のない話ですし。
無駄に恐怖を感じさせてしまうぐらいなら、黙っておきます。
「さあ、帰りましょう!」
そして私は、皆さんに呼びかけます。
「そだね、ファーリさん! 帰れば私とファーリさんの、大事な結婚式が待ってるもんね」
ニコリと笑いながら、エリスはそんなことを言います。
確かに、帰れば私たちは救国の英雄。
そしてその功績を根拠にエリスと結婚。
さらに権力、後ろ盾を得た私はリグやお姉さま、アンネちゃんを側室に迎える。
つまり……夢にまで見た、イチャイチャラブラブ生活が待っているのです!
「それを聞くと、帰るのが楽しみになってきたのです!」
私はグッとガッツポーズをします。
「情勢も安定するでしょうし、当分は平和になりますわね」
リグが言って、私を背中から抱きしめてきます。
「そうなれば、待っているのはわたくし達の幸せな結婚生活ですわ」
「けっこん……」
リグに言われて、ぼうっと考えてみます。
朝起きたらリグが隣にいたり。
朝食をみんなで一緒に食べて。
学校がおやすみの日は、お昼まで街を誰かと一緒にブラブラしたり。
そして午後はハンター活動をして、夕食をどこかでみんな一緒に食べて。
「あれ、想像してみたら普段と同じ光景が浮かんできたのですが」
「同じでいいさ」
私のつぶやきに、お姉さまが反応します。
「僕らは、僕ららしくしていればいい。無理して普段と違うことをしようなんて、本末転倒だよ」
「そのとおりにゃ。ふつーにしてればいいにゃ」
アンネちゃんも、お姉さまに頷きます。
みんな、気持ちは同じなのでしょうね。
これからの――私たちが一緒に過ごす明日が、それだけで楽しみで、幸せなのです。
だからなのか、私はその分もっと嬉しくなって、笑顔が溢れてきます。
「――では、みんなで帰りましょう。私たちの国に!」
言って私は、手を前に差し出します。
その手の上に、リグ、お姉さま、アンネちゃん、エリスが手を重ねてきます。
「と、いうわけで。帰りは急ぎに急いで、私が全速力で帰ろうと思います」
「は?」
リグが声を上げて、他のみんなも不思議そうな表情を浮かべて私の方を見ます。
「スーパーサーチの力で、最大20キロメートル先までなら見通せます。そしてその地点に私たちをコード強制して座標を書き換えて瞬時に移動……ようするにテレポートみたいなことをするのです」
「20キロって、聖ヴェルベリアまではそんなに近くないよ、ファーリさん?」
エリスが疑問を口にします。
「ええ。なので、次々とテレポートを繰り返します。そうすれば、一瞬で帰り着くのです」
「それ、どうしてゴルトランドに来る時使わなかったのかにゃ?」
次の疑問はアンネちゃん。
「あの時は皆さんと一緒に経験を積むという目的もありましたし、何より一度も見ていない場所へ飛ぶのは難しいのです。帰りなら、ほぼ正確な座標に移動できるのです」
「ほぼ正確、ね。ファーリ、それはどの程度の正確さなんだい?」
さらにお姉さまの質問。
「大丈夫なのです。時々ミスして土の中とかに出ちゃうかもしれませんが、今の私たちなら平気なのです。何の問題も無いのです」
「いえ、ファーリ? 土の中に突然埋まるのは、気持ちとして問題が」
最後にリグの文句が出ました。
ですが私はもう聞き入れません。
「文句は帰ってから聞くのです! 私は、もう早く帰りたくてウズウズしているのです! 強行突破させてもらいます!」
そう宣言すると私は――みんなが苦笑いを浮かべているのに関わらず、コード強制を発動。
座標書き換え――テレポートで、議事堂跡から姿を消すのでした。
その後、結局何回かミスして土の中に出てしまったのですが、特に問題は無かったのです。
一つあったとすれば、帰った途端リグがプリプリと怒りだしたことぐらいでしょうか?
まあそれはそれで、可愛いかったので良しとしましょう!
あとがきを書き忘れていました、すみません!
八章は、この話で完結です!
次の章、九章からは新たな環境でイチャイチャするファーリさんたちのお話になります。
ただ、九章からはまだアイディアを練っている段階なので、すぐに更新は難しい状態です。
少しの期間、更新をお休みしますが、またすぐに更新再開出来るようがんばります!
これからもどうぞ、ファーリさんの活躍やイチャラブにご期待下さい!




