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異世界転生してもステータスはそのままでって言ったのですが!?  作者: 桜霧琥珀
八章 決戦、帝国議会!
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26 終焉の神シュバルツシルト




 姿を現したのは、真っ黒な神――シュバルツシルト。


 髪は黒、肌は濃い褐色、そして暗色のドレス。

 そんな姿の中、ただ一つだけ輝く紫色の瞳。


 終焉の名に相応しい、恐ろしげな姿の女の子です。

 外見こそ、カミさまと同じく少女のものですが、実際は何百何千年と生きた神の一人なのでしょう。


「あの、カミさま。この人は?」

「終焉の神シュバルツシルト。私と同格の神の一柱で、あらゆる存在の終わりを司る。神の世界に欠かせない一人で……もしも、急にファンタズムを消し飛ばしたとしても、誰も彼女を責めることが出来ない。そんな相手だよ」


 言われて、私はなるほどと納得しました。

 つまりこの人が、私を殺せる数少ない存在なのですね。


 そう思うと、警戒心がいっそう強まります。


「まあまあ、そう警戒せんといてーな。ウチはただな? オモロイもん見せてくれたアンタにお礼言いに来たんや」

「私に、ですか?」

「せやせや。まさかなぁ、ちっと手を加えたぐらいで、アンタみたいにスーパーコード使いこなせる駒が作れるとは思うてなかってん」


 駒、という言い方に、つい眉を顰めてしまいます。

 それを見て、シュバルツシルトさんはニヤリと笑います。


「そういうとこ、オモロイやんけ。ウチに駒や言われて、機嫌悪うなったか?」

「……そうですね。気分を害しました」

「そりゃおもろいな! 所詮駒のくせしてな! いっぱしの神にでもなったつもりかいな!」


 露骨に私を見下したような口調に、つい苛立ってしまいます。

 私だけじゃありません。

 この人は……自分が転生させたはずの、エシルクロニアのことさえ駒と言ったのです。


 恐らくは神でないもの自体を全て見下しているのでしょう。


「まあ、ええわ。今日はな、挨拶ぐらいしとこと思ってん」

「挨拶、ですか?」

「せや。せっかくオモロイことしてくれそうなんやから。これからも、ウチを楽しませてくれな?」


 そう言って、シュバルツシルトは次にカミさまの方に視線を向けます。


「それとカミーユ。アンタもウチの為に、こんなおもろいもん用意してくれて、ありがとな!」

「あんたの為じゃないよ。私は、私の為にユッキーを転生させたんだから」

「は? 何言うてんねん。ゆっきぃ? 駒の名前なんぞいちいち覚えとるんかいな! ケッタイな奴っちゃなぁ!」

「駒じゃない」


 カミさまは、シュバルツシルトを睨みつけます。


「ユッキーは、駒なんかじゃない」

「おー、こわ! そら結構なことで!」


 シュバルツシルトは、わざとらしく怖がるような素振りを演じてみせます。

 明らかに、こちらを挑発するような言動。

 苛立ちが高まっていきますが、ここは抑えます。


 今ここで、シュバルツシルトに手を出してはいけません。

 相手は気分次第で私を殺してしまえる存在ですから。

 こちらから手を出して、もし本気になられたりしたら……その時が、私の終わりの時です。


 悔しいけれど、やっぱり耐えなければいけない時です。

 だって私は、まだまだ弱いのですから。


 ――そんなことを考える私の目には、どんな光が映っていたのか。

 シュバルツシルトは、愉快げに私の目を見て笑っていました。


「――ま、今日はこんなところでええわ」


 そう言って、私たちに背中を見せます。


「ほな、またな! 次はもっとオモロイ駒を用意したるからなぁ!」


 そして、シュバルツシルトは闇の中へと歩きだし、姿を消します。

 途端に――闇は晴れて、元の場所に戻りました。

 戦いの場所、議事堂跡に。

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