22 エリスの救出
ところ変わって、ゴルトランド城の地下牢。
エリスがミリエラさんによって、拷問されようとしています。
さすがに放置するわけにはいきませんので、止めに入ります。
「そこまでなのです」
私は姿を見せて、ミリエラさんの背後に立ちます。
「なっ――!?」
驚くミリエラさんはこちらを振り向きます。
私はミリエラさんの肩をポンと叩いて、即死をコード強制。
ミリエラさんは、あっさり戦闘不能になります。
まあ、戦闘要員ではないのですからこんなものでしょう。
それでもレベルやステータスの差で、エリスでは歯が立たないレベルの相手ではあったのですが。
「……えっと、ファーリさん?」
「はい、そうですよ」
私はエリスの問いを肯定します。
例によって例のごとく、この場の私は宝石のような金色の髪に銀色の瞳。
正にエリスと同じ色なのです。
「どうして、ファーリさんがここに? それに、その髪と瞳の色は……?」
エリスは困惑した様子で質問してきます。
「事情があるのです。まあ、まずは地下牢から脱出するのです」
「えっと、うん。分かったよ」
私に言われて、エリスは気を取り直します。
地下牢の鉄格子は私が素手でひん曲げて、人が通れる大きさの穴を作ります。
ステータスが高ければ、こんなことも簡単にできてしまいます。
「……で、事情っていうのは?」
「そうですね。まずは、どうして私が突然現れたのか、についてから話しましょう」
そう言って、私たちが地下牢から脱出しつつ、話を進めていきます。
ちなみに、脱出経路はスーパーサーチを使いながら、警備の穴を突くように私が先導しています。
なので、小声ならお喋りしながらでも誰にも見つからず、城から抜け出すことができてしまいます。
「実は、以前から今のような状況に対応する方法については考えていたのです。何らかの手段で、戦力を分断されたら、皆さんを守れません。何らかの対策が必要だとは考えていました」
実際、今回も私が居なければ皆さん全滅していたはずですからね。
守るための手段というのは、いくらでも用意しておくべきなのです。
「そこで、私はレリック魔法を使用することにしたのです。私本人と全く同じ、私の分身たち。そういう存在を、常に皆さんに同行させておく。これによって、いつでもどこでも皆さんを守れるようになりました」
具体的に言うと、普段から一人につき一つ、レリック魔法をくっつけておくのです。
レリック魔法を介して皆さんを見ていれば、いつでもそのレリック魔法を私の身体に作り変え、助けに入ることが出来ます。
私はとっくに人間を辞めており、普段からスーパーサーチで膨大な情報処理にも慣れています。
なので、平行して四人を見守るぐらいはわけないことなのです。
ちなみに、エリスには分身と説明しましたが、正確に言えば全員が本体とも言えます。
そもそも普段から皆さんと一緒に居る私も、肉体はレリック魔法で構築していますからね。
肉体を作れるのですから、そもそも同時に複数の肉体を用意すればいいのでは? と思ったのがきっかけでした。
という経緯で、私は私の肉体と全く同じ性能の存在を、一人ずつ皆さんの護衛としてつけることになったわけです。
「じゃあ、見た目が私にそっくりなのはどうして?」
「それは、単に区別する為なのです。複数の私が一度に集まった時、全部同じ見た目だと誰が誰だか分からなくなっちゃうのです」
本人役の肉体も含めれば、最大五人の私が集まる可能性もあるわけです。
そんな時、全員が宝石のような赤い髪と金色の瞳をしていたら、誰が何を担当していたのか混乱してしまいます。
なので、見た目に関しては担当に合わせて少しずついじってあります。
ちなみに、リグ担当とエリス担当の私はどちらも金髪で少し紛らわしいですが、服装の色を変えて区別していたりします。
「へぇ~。なんか、よくわかんないけど凄いんだね、ファーリさん」
「そうでもありませんよ。こんなの序の口なのです」
エリスに褒められながら、私は先導を続けます。
向かうは議事堂跡。
本体役の私が、エシルクロニアと対峙する場所なのです。
ファーリさん分身の種明かしでした!
すでに自分の肉体をスーパーコードでどうこうしちゃってるファーリさんですから、肉体を増やすのもどうこうしちゃえば出来てしまうというわけです!
さすがだぜ、ファーリさん!




