18 リグレットへの助力
「――安心して下さい、リグ。これは、勝てる相手なのです」
私は――リグの隣に姿を現します。
突然の出来事に、リグは驚いてこちらを見ます。
「ふぁ、ファーリっ? なの、ですか?」
リグは、私が居るということを信じられないようです。
まあ、無理もありません。側に居なかったはずの私が、急に姿を現したのですから。
それに――見た目も違いますからね。
顔立ちや背格好などは同じですが、髪の色がゴールドブロンド、そして瞳の色は綺麗な蒼。
どちらもちょうど、リグと全く同じ色です。
髪と瞳の色だけがリグとおそろいの、姿形はファーリ・フォン・ダズエルである何者か。
そんなやつが、突然隣に現れたのですから、困惑するのも無理は無いのです。
「今は説明するよりも先に、あの人を倒すほうが先なのです」
「わ、わかりましたわ」
私が言うと、リグは困惑しながらも頷いてくれます。
「相手はレリック魔法を多用しています。そしてレリックの保護は一切していません。なので、リグが魔法を当ててコード強制を通して、モンスターピアスという技術で無敵を解除することが可能なのです」
「モンスターピアス、ですの? わたくし、そのような技術はまだ教わっていませんわよ?」
「はい。ですので、今から教えるのです」
そう言って、私はぎゅっと、リグの背中に抱きつきます。
そのままの姿勢で――リグの身体に、モンスターピアスという技能のコードを刻んでゆきます。
「んっ――! こ、これは本当に、慣れない感覚ですわね」
リグはコードを刻まれる感覚に、頬を赤らめて身動ぎします。
「ですが、お蔭で理解できましたわ」
技能として身体に刻まれた以上、その使い方は簡単に理解できるようになります。
今のリグであれば、簡単にリーベリンネさんを撃退できるでしょう。
ふとリーベリンネさんの方に視線を向けると、どうやら突然姿を現した私を警戒して、攻撃の手を止めていたようです。
「……何をしに来たのか、どうやって来たのかも知らないけど。勝つのは私ですわ!!」
そして――不用心に、何の保護もされていないレリック魔法を放ちます。
標的を追尾して爆発する、なんて複雑な挙動は、レリック魔法特有の動きです。
こういう攻撃を、しっかり対処していけばリグはもっと強くなれるのです。
「さあ、リグ!」
「分かりましたわ!」
次の瞬間――リグはモンスターピアスを発動させます。
リーベリンネさんのレリックをコード強制して、威力の無い魔法を撃たせます。
そしてこの魔法を新たに出したレリックに当てさせて――リーベリンネさんにコード強制を通します。
ここでリーベリンネさん自身が持つ無敵解除のコードを実行させることで、リーベリンネさんに攻撃が当たるようになります。
あとは――スレディブリッツでゴリゴリっとライフを削れば終わりです。
「ッ!? きゃあああああっ!!」
突然無敵が剥がれて、スレディブリッツに襲われるリーベリンネさん。
悲鳴を上げた後は、バタリとその場に倒れます。
ライフを削りきられたための戦闘不能――つまり、リグの勝利なのです。
「……やりましたのね?」
「はい。リグの勝ちなのです!」
私はそう言って、リグに微笑みかけます。
「……では、戦いも終わったことですし。説明してくださいませんこと? どうしてファーリがここに居るのか。そして何故わたくしと髪や瞳の色が同じなのか」
「あー、話せば長くなるのです。議事堂跡に戻りながらでいいでしょうか」
「ええ、もちろんですわ」
私とリグはそんなことを会話しながら、戦場となった荒野を後にするのでした。
ファーリさんが居ない場所でファーリさんの主観で書かれていた……かと思いきや!
実はファーリさんの分身が姿を隠して一緒に居ただけなのでした!
さすがファーリさん! いつもみんなと一緒! 素敵だぜ!




