16 ファーリVSゴーレム
いよいよ、私の試験開始です。
「始めッ!」
試験官さんの声と同時に、ゴーレムが動き始めます。
私もワンテンポ遅れて行動を開始。子供らしく、わたわたと。これ重要です。
ゴーレムの動きは明らかにクソでした。
武芸の心得がある人ならば、なんということはなく倒せるでしょう。
私もその1人です。今回はほどほどの強さを演じるつもりですが、ここで苦戦をするのは不自然。
私は今日の武器――子供用のショートソードを抜いて、ゴーレムに斬りかかります。
土のゴーレムは回避もすることなく、あっさりと倒されてしまいます。
続く、2体目、3体目……と、私は次々と土のゴーレムを倒していきます。
恐らく、私は受験者の間で相当な実力者として噂されていることでしょう。
なので、土のゴーレム相手に遅れをとるつもりはありません。
問題は、11体目の石のゴーレムからです。
私が10体目のゴーレムを難なく斬り裂くと、続いて11体目が召喚されました。石のゴーレム。ここまで来ると、訓練を受けた兵士並みの動きをしてきます。
ただ、私にとっては赤子同然。パパに仕込まれた剣術の腕前は、この程度の相手をものともしません。
とは言え、石のゴーレムまであっさり撃破してしまうのは良くないのです。
目立っちゃいますからね。
私はゴーレムの攻撃を誘っては回避し、誘っては回避し、と繰り返します。
やがて、ゴーレムの動きに余裕が無くなったところで、足払いをかけます。
石のゴーレムはドスン、と倒れます。
私はその上に馬乗りになって――核の部分を、剣の柄で何度も殴ります。
槍使いであれば、石突を使えば石のゴーレムの処理も楽に出来るでしょう。ですが、私は剣の使い手。バカ正直に切り結べば、刃こぼれは確実。そんなことをするのは、愚かな行為と言えます。
恐らく、試験官はその辺りの対応力も見ているのでしょう。
リグレットさんは全ての石ゴーレムを突きで倒していました。切っ先は欠けているでしょうが、刃こぼれは最小限です。また、突きは一点に力が集中する為、石のゴーレムを破壊するには最も合理的と言えます。
一方で、私の選択です。
私は子供なので、あまり力がありません。――いや、実際のステータスはリグレットさんの倍ぐらいあるのですが。設定としてです。そういう設定で演技をしているのです。
なので、突きでゴーレムを破壊することは不可能。斬撃も無論同様です。
なので、ハンマーを打ち付けるのと同じ要領で、剣の柄の金属部分で核を殴ることに決めました。
子供の力でも、何度も殴っていればいずれ割れます。そうすれば、ゴーレムは行動不能、あるいは動きが悪くなります。
根気よくゴーレムを転ばせ、何度も柄の金属で打つ。
これが私の考えた、子供でも倒せる石ゴーレム撃破の方法です。
1体目の石ゴーレムは、一度目の転倒だけで核にヒビを入れることに成功しました。身体が重い分、そして手足がゴーレムらしく短い分、起き上がるのに苦労していたようです。
つづいて、2体目。ここら辺で、私は息切れをしているフリをします。子供ですので、スタミナは無くて当然。一体目のゴーレムでも全力で何度も柄を振りかぶったのですから、自然なことです。
どうにか2体目の石ゴーレムを倒して、3体目。私は、既に肩で息をしていました。もちろん演技なのですが、子供なので自然な動作です。
2体目は2度も転ばせなければならず、運動量も相当なものになりました。
誰も私のスタミナ切れを嘘とは思わないでしょう。
通算13体目を相手にしながら、私は徐々に追い込まれていきます。
というのも、スタミナ切れでうまく回避ができないのです。
もちろんそれも演技。疲れで回避がワンテンポ遅れているフリを続けます。
そして、決定打。私は足を踏み外すフリをして、わざと体勢を崩します。
そこにゴーレムの重い拳が飛んできます。
私は剣を構えて、衝撃に備えます。
「――そこまでだ!」
ピタッ、とゴーレムの動きが止まりました。
試験官が、試験終了の合図を出したからです。
「12体か。年齢を鑑みれば末恐ろしい成績だな」
試験官さんは私を見て言います。
「ありがとうございました」
私は一礼して、試験の舞台から降りていきました。




