12 はじめてのステータス確認
リグレットさんの前に立っていた女の人が、試験官に呼ばれて前に出ます。
試験官は3人。全員がサーチ使いで、より正確にステータスを判断する為にこうして複数人でサーチを使うそうです。
サーチの結果は、試験官にしか開示されません。
当然ですね。人によっては、秘密にしたい情報なども含まれていますから。
しかし、だとしてもまずいのです。
私が全属性適性、耐性持ちだとバレた場合、その適性を試す試験を受ける羽目になるに違いありません。
とすれば、私のずば抜けた才能は受験者の皆様にお披露目されることになります。
あわわわわ! やばいのです!
想像しただけで心臓が! 鼓動が止みます! いやむしろ実際はバクバクいっているのですが!
……いや、ともかく今は慌てている場合ではありません。
逃げることは出来ないのです。試験官の三人のサーチの精度が悪く、私の適性を見逃してしまう可能性に掛けるしかありません。
ああ、なんとも頼りない。
「次! 307番!」
リグレットさんの番号です。リグレットさんが3人の試験官の前に出ていきます。
「お願い致しますわ」
丁寧に、お辞儀をするリグレットさん。
――あれ、この仕草。
どこかで見たような気が……。
っと、それどころではありません。
私はリグレットさんのステータスを、スーパーサーチで見ることにしました。
というのも、この試験会場でリグレットさんが最も優れた受験者のはずです。
その数値を参考に、上手く封印を調整できれば、単純なステータスに関しては目立たないように出来るかもしれないのです。
さっそく、私はリグレットさんの方を見て意識を集中します。
すると、私の意識の中にリグレットさんのステータス情報が流れ込んできました。
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リグレット・ベーゼ・クラウサス(Regret Beuze Crausus)
ライフ:4674
パワー:4892
攻撃力:323
防御力:204
魔法力:1645
敏捷性:492
技能:剣術(C) 射撃術(C)
魔法適性:火(B)、土(B)、風(B)、雷(B)
魔法耐性:火(D)、水(D)、土(D)、風(D)、雷(D)、闇(D)
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ライフとは、体力のようなもの。これがゼロになると、行動不能になるそうです。気絶などの状態になるだけで、死ぬこととはまた別なのだとか。
パワーは、魔法等の特別な技を使うために必要なエネルギーのことです。時間経過や薬などで回復させることもできます。
攻撃力は、魔法以外の攻撃に関与するステータス。高いほどダメージが大きくなります。
防御力は、全てのダメージの軽減に関与するステータス。高いほど受けるダメージが減ります。
魔法力は、魔法攻撃に関与するステータス。高いほど魔法によるダメージが大きくなります。
敏捷性は、行動の素早さのことです。これが高いほど、攻撃は速さを増していきます。魔法使いだと、なぜか詠唱短縮や無詠唱の魔法発動に影響するそうです。
そして、技能。これはその人が使える特殊技術についての数値です。
魔法適性、魔法耐性に関しては……説明する必要はないでしょう。
見て分かりましたが、やはりリグレットさんは魔法の天才のようです。
適性よりも耐性の方が多いのが不思議ですが、ともかくこれがずば抜けた才能であることは見るだけで理解できます。
そしてやはり、リグレットさんは貴族だったようです。名前の構造がこの国の貴族のものと同じ。
しかし――はて、ベーゼ・クラウサスとなればどこかで聞いたことがあるような気がします。
まだ10歳の私は社交界に顔を出すことがほとんどなく、よその家にもあまり興味が無いので、詳しくないのです。
にしても、どこかで聞いたことがあるような……。
と、そんなことを考えている場合ではありません。
リグレットさんのステータスを参考に、自分がどの程度のステータスなのか確認しておきましょう。
試しに、封印を最大まで働かせてスーパーサーチします。
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ファーリ・フォン・ダズエル(Fali Fon Dazzuel)
ライフ:6928
パワー:3839
攻撃力:624
防御力:503
魔法力:928
敏捷性:493
技能:剣術(B) 弓術(C) 槍術(C) ストレージ(S)
魔法適性:火(C)、水(C)、土(C)、雷(C)
風(C)、光(C)、闇(C)、命(C)、無(C)
魔法耐性:火(A)、水(A)、土(A)、雷(A)
風(A)、光(A)、闇(A)、命(A)、無(A)
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ダメみたいですね、これは。
調整もクソもありません。最大封印で、既にリグレットさんを色々上回っています。
ストレージ、技能に出ちゃうんですね。しかもSって。
というか、なんで私の攻撃力600もあるんです? 前期試験トップクラスだったリグレットさんをどうして倍ちかく上回ってるんです?
『それはね~ユッキー』
「うわああああああっ!?」
いきなり、私の頭の中に声が響きました。
わけのわからない出来事に、つい声を張り上げてしまいます。
周りから視線が飛んできます。ああ、見ないで下さい。目立つのは嫌なのです……。
『あははは! ユッキー、私だよ。カミさま』
確かに、声はカミさまのものです。でも、なぜ頭の中に声が響くのでしょうか。
『私はユッキーと繋がってる特別な存在だからね。思念だけで会話をするぐらい造作もないよ』
(って、心の中を読まれました!?)
『そだね』
(はぁ~、姿さえ見れたらお仕置きしてやったのです)
と、そうではなく。
(なぜ私のステータスは最大封印でもこんなに高いのです?)
『元々、ユッキーは前世から身体能力すごかったんだよ? まあ超人的ってほどじゃなかったけど。今世ではお父さんに鍛えられてるから、かなり高くなってるね』
なるほど……確かに、前世でもスポーツは不得手ではありませんでした。
まあそもそもスポーツが好きではなかったのであまり身体を動かすことはなかったのですが。




