02 謎の少女
ハンターギルドでの納品が終わり、私たち4人は寮に戻ります。
時刻は昼下がり。
王都の人通りは賑わいを見せています。
そんな中を4人で揃って歩くので、けっこう歩きづらかったりします。
「ファーリ、大丈夫かしら? 迷子になったりしないでくれますわね?」
「むう、当たり前なのです」
リグにからかうような心配をされましたが、こういう冗談を言い合うのはよくあることです。
別に気分を害するようなこともなく、私たちは道を歩いていきます。
すると、正面の方向から1人の男性がふらふらと歩いてきました。
見るからに汚れた服装や髪をしていて、一見するとよくいる浮浪者の類です。
汚いからあまり触りたくないので、私は道を開けるように少し横へ寄ります。
男性は前を見ていないのか、よろよろ、ふらふらと歩きながら、私のすぐ横を通り過ぎます。
同時に――私は、男性がただの浮浪者でないことに気づきました。
というのも、男性が私の懐から財布を抜き取っていたからです。
昔の私なら気づかなかったかもしれないほどの手並みです。
今は準亜神となっているため、知覚能力も常人のレベルを遥かに越えています。
そのお蔭で、男性が私から財布を盗む様子が手に取るようにわかりました。
もちろん、おとなしく財布を盗まれる趣味はありません。
私は盗賊の方に振り返ると、呼び止めて……場合によっては力づくで、財布を奪い返そうと動きます。
「あの――」
「ちょいとそこの奴! 止まりなさい!」
それと、同時のことでした。
人混みの中から、1人の女の子が姿を現します。
その姿は、とても特徴的です。
ニット帽に髪の毛をほとんど隠していて、髪型が分からないようになっています。
そして、服装が身体のラインがはっきりと分かる、ぴっちりした全身スーツ。
さらに、その上からマントや荷物を吊り下げるためのベルトなどを装備しています。
顔立ちはとても綺麗だとわかりましたが、すぐに女の子だと判断したのは体つきです。
服装がぴっちりしているお陰で、変態にも見紛うほど身体の細部がしっかり確認できます。
いっそ、裸の方が恥ずかしくないかもしれないような格好です。
そんな格好の女の子が飛び出してきて、なんと財布を盗んだ男性の手を掴んで捻り上げます。
当然、その手には盗まれた私の財布が。
「あなた、あそこの女の子から財布を盗んだでしょ!」
「……くっ、てめえ!」
「おとなしくしなさい。犯罪者の腕の一本ぐらい、どうってことないんだからね」
言うと、女の子はその手に力を込めます。
すると、男性はまるで為す術無く組み伏せられます。
女の子の腕一本に、男性の全身の力が負けているのです。
このことから、女の子がかなりのステータスの持ち主であることが伺えます。
男性は女の子が込める力に耐えかねたのか、ついに財布をぽろりと手放します。
途端に女の子も男性を開放します。
「けっ……覚えてろよ、クソッ!」
男性は言い捨てると、そのまま逃げるように走ってその場を去りました。




