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41 時計塔へ




 私はリグをお姫様抱っこしたまま、屋根の上をどんどん飛び移っていきます。


「ちょっと、ファーリ!? こんな移動をしなくても、普通に歩いて行けませんの!?」

「はい。歩いて行けない場所に行こうと思っているので、どうせならこうやって移動したほうが早いかなと思ったのです」


 私が説明すると、またリグはため息をつきます。


「……もうこの際、その辺りは気にしませんわ。それよりも、ファーリったらいつのまにこんな身体能力を? 以前見たステータスであれば、こんな動きは不可能だと思うのですけれど」

「あ、その件ですか。それなら、ステータスを見てもらったほうが早いのです」


 私は言って、サーチの魔法を発動します。

 そして、リグに私のステータスを見せます。


―☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆―


ファーリ・フォン・ダズエル(Fali Fon Dazzuel)


ライフ:1325276

パワー:2156679

攻撃力:9785

防御力:8749

魔法力:79314

敏捷性:16590


技能:剣術(S) 弓術(S) 槍術(S) ストレージ(S)

   レリック(S) スーパーサーチ(S)

魔法適性:火(S)、水(S)、土(S)、雷(S)

     風(S)、光(S)、闇(S)、命(S)、無(S)

魔法耐性:火(S)、水(S)、土(S)、雷(S)

     風(S)、光(S)、闇(S)、命(S)、無(S)


―☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆―


 私のステータスを見て、リグは驚きます。


「こ、こんなに高いステータスになっていましたの!?」

「はい。いろいろ頑張った結果です」


 私はそう言って――リグに、嘘を吐きました。


 私が表示したステータスは、偽装用のステータスです。

 カミさまが私にしていた封印と似たような原理で、私自身の強さを制限しています。

 こうして、強くても不自然じゃない程度のステータスを常に装っておこう、というのが今の私の方針なのです。


 例えリグであっても……今の私の力について、全て教えてしまうのは気が引けます。

 神の世界の力。スーパーコード。世界のバグ。

 そういった異質な力を、あまり誰にでも教えてしまうのは良くないだろうと考えたのです。


 人が手を出していい力だとは思えませんし、実際に私は人ではなくなりました。

 そんな力に、できれば私の大切な人は出来るだけかかわらずにいてほしいのです。


 秘密を作っているのは悪いことだと思います。

 でも……こればっかりは、教えないほうがいいと考えました。


「これだけ高いステータスがあれば、転生の時期の白真龍の山からも帰ってこれるのも納得ですわ」


 リグが、感心したように言います。

 そのせいで、よけいに騙しているという罪悪感が刺激されます。


「――そんなことより、リグはこれから行く場所について気にならないのですか?」


 私は、つい話をそらしてしまいます。


「それもそうですわね。どこに向かっていますの?」


 見事に、話はそれました。


「あれです!」


 私は言って、顔の動きを使って顎で行く先を示します。


「あれって……もしかして、時計塔?」


 リグは、私が示した場所に気づいてくれました。


 そう、私が向かっているのは……王都で王城の次に高い建造物、時計塔です。

 誰もが知る、時刻を確認するために目を向ける王都の名物の1つです。


 そして――私が向かっているのは、その時計塔のさらに頂上。

 展望台よりも上の、本当に頂上。屋根の上なのです。


「それじゃあ、もっと加速します!」

「きゃっ――!」


 私は宣言すると、さらにスピードを上げます。

 屋根の上を、2つ飛ばしで駆け抜けていきます。

 ぐんぐん時計塔に近づいていき――そして、もうすぐそばまで近寄った段階で、私はひときわ強く踏み込んでジャンプします。


「――行くのですっ!」

「んっ!」


 勢い良くジャンプして、私は時計塔の頂上まで一気に飛び上がります。

 あまりにもの勢いに、リグは目を瞑って、私にぎゅっと抱きついた状態で怖がってしまっています。


 少し、悪いことをしてしまいました。

 けれど、目的の場所には到着しました。

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