38 山帰り
白真龍の山での用事を済ませた私は、王都へと引き返します。
往路よりも敏捷性が上がっているので、一時間もせずに王都まで戻ることが出来ました。
「……あれ?」
そして、私は立ち尽くします。
なんと、王都の門が閉まっているのです。
「おかしいのです。この時間なら、普通なら門は開放されているはずなのですが……」
日は高く登り、もうお昼前といった頃合いです。
なのに、まるで夜間のモンスターの襲来に備えているときのように、門は固く閉ざされています。
「すみませ~ん! 門を開けてほしいのですが~!」
私はちょっと声を張り上げて、お願いしてみます。
ですが、反応がありません。
「うーん……こうなったら、仕方ないのです」
私はしぶしぶ、強行突破することを決意しました。
と言っても、別に門を壊すわけじゃありません。
身体能力にものを言わせ、街を守る門ごと飛び越えてしまおうという作戦です。
「とりゃっ!」
私はゆるく掛け声を上げると、そのままギュンッ! と勢いよく空中に飛び上がります。
門の高さにかなり余裕をもたせた高度まで飛び上がり、そのまま飛び越えてしまいます。
「――っと。うまくいったのです」
そして、着地。
ドシンッ! と音を立てて、私は門の内側に着地しました。
乗り越え成功です。
「お、お前ッ! 何者だッ!!」
そして、私の背後から声が。
振り返ってみると、そこには門の衛兵らしい格好をした女の人が立っていました。
「えっと……門が閉まっていて帰れなくなっていたので、飛び越えて入ってきてしまいました。ごめんなさいなのです」
「飛び越えてって……いや、確かにそうとしか思えないし、この目でしかと見ていたわけだが……」
私の説明に、衛兵さんは頭をかかえます。
「帰ってきた、ということはお前は王都の民か? 身分証はあるか?」
「あ、はい」
言われて、私は慌てて身分証――ハンター登録をした時、ギルドに発行してもらったカードをストレージから取り出し、衛兵さんに渡します。
「――っ!?」
すると、衛兵さんは目を見開いて驚きます。
そのまま、私の方に掴みかかってきます。
「お前、まさか白真龍の山に行っていたというハンターの少女だというのかっ!?」
「えっと、はい。そうですね」
「まさか、無事に帰ってくるとは!! すまんが、少し詰め所で待っていてくれ! 上に報告せねばならん!」
衛兵さんは言いたいことを言うと、私のハンターカードを持ったままどこかへと走り去ってしまいました。
「……えっと、どうしましょう」
私はその場に取り残されて、ひとまず衛兵さんが戻ってくるのを待つことにしました。




