23 強くなりたい
私は、堂々とカミさまに言い放ちます。
力を望む。つまり、神にさえなってみせる、と。
「本当に、それでいいの?」
カミさまは疑うように訊いてきます。
でも、心配ありませんよカミさま。
私は、ちゃんと納得して、選択したのですから。
私はそっと、カミさまの手に自分の手を重ねます。
「いいに決まっているのです。もしもこの先、私の力が足りずに大切な人が死んでしまったら……きっと、一生後悔するのです。死ぬ間際まで、きっと。全力で生きていたら、死なずに済んだはずなのに、と。そんなの、私は嫌なのです」
私は、カミさまの手を優しくさすりながら言います。
「だって――そんな人生、きっと幸せでも、穏やかでも、平穏でもないですから。私が望んだ人生じゃないのです」
「でも……神になれば、それこそユッキーの一生は長すぎて、きっと幸せではなくなるよ。穏やかだったり、平穏だったりするかもしれないけど。ユッキーが望んだ形じゃなくなるよ?」
カミさまが、不安げな声で反論してきます。
でも、それに対する答えだって私はしっかり持っています。
「それなら、心配無いのです。大切な人と生きた思い出があれば、私はきっと寂しさより幸せな気持ちでいっぱいになれるはずです。それに、永い時間の中で、また誰かと親しくなって、仲良しになれるかもしれません」
「なれないかもしれないよ?」
「だったら、カミさまを頼るのです。同じ神になるのですから、ずっと一緒にいてくれますよね? だったら、寂しくないのです」
「……っ! ユッキーぃ!」
カミさまは私の言葉を聞くと、泣きそうな声を上げながら、ぎゅうっと強く私を抱きしめてきます。
よしよし、と言いながら、私はカミさまの手を撫でます。
頭を撫でてあげたいのですが、残念ながらカミさまは後ろから抱きついているので不可能なのです。
「……今だから言いますけど、私はカミさまには感謝しているのですよ」
私は、辛そうにしているカミさまを慰める意味もあって、ある思いを口にします。
「ファンタズムに転生してすぐは、正直こんな力、強すぎるって思っていたのです。でも、この力のお蔭でリグと出会えて、一緒にいられて。危ない時はリグを守ることが出来て……やっぱり、この力は必要なんだなって思ったのです」
そう。それは、私がここのところずっと考えていたことです。
最初、私はカミさまからもらった力を不必要だと考えていました。
あまりにも大きすぎる力は、むしろ問題を起こすと思っていたのです。
けれど……力のおかげで結果的にはリグと出会えました。
そして、ハンターとして活動するうち、確かにファンタズムで平穏に暮らし続けるには、特別な力が必要だと気付きました。
この世界は、日本とは……地球とは全く違います。
兵器よりも強い力を持つ存在が、無数にひしめき合う場所です。
こんな場所で、確実に自分の大切な人を守りたいのなら……確かに、バカげたレベルの力が必要になるのでしょう。
「この世界で、普通の生活、普通の幸せを維持しようと思ったら、きっととんでもない力が必要なのです。だから私は……それを実現できる力をくれたカミさまに、今は感謝しているのです」
「う、うん……」
カミさまは、私のうなじに頭をのせた状態で、もぞもぞと動きます。
「えっと、なんだか照れちゃうなあ。こうやって褒められると、なんというか、うれしいよユッキー」
私を抱きしめたままの姿勢で、カミさまはもぞもぞします。照れ隠しなのでしょう。
……こうして普通にしていれば、何の問題もなく可愛らしい女の子ですね。
「あー、なんか照れくさいからごまかすね! というわけでユッキーのおっぱいを揉みます!」
次の瞬間、カミさまは私を抱きしめていた腕を離し、急に私の胸に手をかぶせます。
そして、もみもみ、ともみほぐしてきます。
「おっ、思ったよりあるねユッキー!」
私も、これでも今は女の子。少しずつ胸も膨らみつつあります。
そんな私に、堂々とセクハラ行為をかますカミさま。
「……全く、ちょっと可愛いなと思えばコレなのです」
私は呆れながらも、しっかりどこからともなくエクスコルド――いつものおしおき棒を取り出します。
「いやー、十歳でこの膨らみは将来性高いよユッキー!」
そして、いつもどおり調子に乗ったカミさまにお仕置きするのです。
「うべべべべっ!!」




