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11 なにがなにやら




 お姉さまに告白されてから、数日が経ちました。


 その間、私は考えなきゃいけないこと、考えてしまうことで頭がいっぱいで、授業にもまるで身が入りませんでした。


 リグと私の、これからの関係について。

 告白するべきか、やめておくべきか。

 そもそも告白して、上手くいくのかどうか。

 告白しないにしても、じゃあ私はリグとこれからどういう距離感でお友達を続ければいいのか。


 お姉さまに告白されたことについて。

 返事はいらない、期待していないと言っていたけれど、でも本当にお姉さまに対して、私はこのままでいいのか。


 考えても考えても、答えは見つかりません。



 答えは出なくても、私は一つ選択をしました。

 これはある日の、授業でのこと。


 いつもどおりリグの膝の上に座って、授業を受けていた私。

 授業が終わって、休み時間となったところで、近くのクラスメイトが話しかけてきたのです。


「ファーリちゃんとリグレットさんは、ホントにいつも仲良しだね」


 その子の言葉に、リグは嬉しそうに笑っていました。


「ええ。わたくしとファーリは、とっても仲良しですの」


 リグの言葉に、私は追い打ちをかけます。


「はい! 私とリグは、とーっても仲良しな『お友達』なのです!」


 お友達、という言葉をわざと強調して言いました。

 そうやって、私とリグがあくまで普通の友人関係だとアピールしたのです。

 こうすることで、きっと不必要な混乱や騒動の種は潰せるはずだと考えたのです。


 でも、この作戦は私にとって諸刃の剣でした。


「――っ。そうね。わたくしとファーリは、最高のお友達ですもの」


 リグは、一瞬だけぴくりと身体を震わせてから、ほんの少しだけ、本当に私ぐらいにしか分からないぐらいうっすらと、悲しげな声で言うのです。



 リグは何度も、私がお友達だと強調するたびに、そういった反応を示していました。

 何度も、何度も。私にしか分からない程度の異変を見せていました。


 ああ――こんなの、私にとっては、答え合わせのようなものです。

 お友達だと強調されて、悲しむ理由なんて一つしかないじゃありませんか。


 リグが、お友達以上の関係を望んでいる。

 それ以外に、無いじゃないですか。


 なんて……苦しいのでしょう。

 私とリグは、想い合っているのに。

 それが分かっているのに。


 なのに私は……リグに、想いを伝えることができない。

 恋人同士になることができない。


 だって、そんな関係を選んでしまったら、私は人殺しになるのですから。

 自ら誰かの死を望むことなんて、私には出来るはずもありません。

 悪人や敵ならまだしも、無関係な人々が死ぬかも知れないのです。

 私は、軽々しく好きだなんて伝えられません。




「――あああ~~っ! もう! なんだかなぁ~! なのです!!」


 ある日の放課後。私は考えすぎてパンクしそうな頭を抱え、大きな声を上げました。

 我慢とストレスの限界だったのです。


 この日はちょうど教室の掃除の日で、私が当番でした。


「急にどうしたんだにゃ!?」


 そして、もうひとりの当番であるアンネちゃんが、私の突然の声に驚いていました。


「ううん、なんでもないのです。ちょっと最近、いろいろあったものですから……」

「いろいろって……もしかして、クエラちゃんやリグちゃんも関係してるのかにゃ?」

「どうしてそれが分かったのです!?」

「最近、みんなちょっと変な感じだにゃ。そりゃ分かるに決まってるにゃ」


 どうやら、アンネちゃんには私たちの様子が変だということもお見通しだったようです。

 それにしても、私だけじゃなくてリグやクエラお姉さままで様子がおかしくなっていたとは。

 私は自分で手一杯だったので気付きませんでしたが……どうやら、二人にもかなりのストレスがかかっているのかもしれません。

 特に、リグのストレスは私のせいですね。申し訳ないのです。


「……何か、あったのかにゃ? もし話せるなら、アタシにも相談してほしいにゃ」


 アンネちゃんは優しく笑いながら、私の手を取って言ってくれました。

 我慢とストレスで荒んだ心に、ケモ美少女の思いやり。

 ケモナーの私には、これはもうたまらなく沁みます。


「……うぅ~! アンネちゃ~んっ!!」


 私は半泣きになりながら、アンネちゃんに抱きつきます。そして胸元のもふもふと、おっぱいの柔らかさを同時に堪能します。


「やっぱりアンネちゃんは最高なのですぅ~!」

「おー、よしよしだにゃ。これは本当に、かなり参ってたみたいだにゃ……」


 アンネちゃんは、私の頭を撫でてくれます。


 そのまましばらく、私はアンネちゃんの胸の中に顔を埋めて、癒やされ続けるのでした。

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