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04 王家の特殊耐性




「まずは身近な耐性からだ。我が国、聖ヴェルベリア王国の王家の血筋は、みな一様にSランク相当の高い耐性を持っている。近年の研究で、その特性は幾つか明らかになっている」


 言いながら、リリーナ先生は黒板に字を書いていきます。


―☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆―


1:常時ライフ最大値まで回復

2:常時レリックアーマーを展開

3:常時無敵

4:毒、呪い無効

5:蘇生

6:全ての攻撃行動が遠距離魔法化している


―☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆―


 どの特性もヤバイです。

 いや、というか蘇生ってなんでしょう。死ぬ気無いんですか?

 我が国の王家、なんというか無敵すぎません?


「さて、順番に解説していこうか。まずは1番。常時ライフ最大というのは、ダメージを受けた時、それと同時にライフを最大に回復させるという恐るべき力だ。何がどのように恐ろしいか分かるかな? そうだな……クエラ君、答えてみたまえ」


 リリーナ先生はお姉さまを指名します。


「常にライフが最大値に回復するわけですから……例えば何らかの方法でライフを0まで一瞬で削っても、それと同時にライフが最大値に回復するわけで、絶対に戦闘不能にはならないということでしょうか」

「ふむ、正解だ」


 お姉さまの回答は、十分な答えだったようです。リリーナ先生は満足そうに頷きます。


「実は、世の中にはライフを最大値まで回復する相手というのはそう珍しくない。復元という技能持ちは、攻撃の直後にライフが最大まで回復する。特別な条件下で常時ライフ最大という状態に入るモンスターもいる。が、それと王族の耐性では話が違う。王族のライフ最大というのは、本当に常時なのだ。いついかなる時も、眠っているときでさえ、勝手に発動し続けている。一切の隙が存在しない」


 なるほど、と私は考えました。

 先日のオリハルコンゴーレムであれば、回復は直後です。ライフが0になる瞬間があるから、戦闘不能フラグが立ちます。

 けれど、ダメージを受けると同時に最大値まで回復されるのであれば、0になる瞬間が存在しません。

 こうなると、ダメージフローでも戦闘不能にできないということになります。

 なんと恐ろしい耐性でしょう。


「さて、次にレリックアーマーについてだ。これは比較的、普遍的な特殊耐性だ。以前の授業でも、何度かレリック魔法については教えたと思う。この場合は、あらゆるダメージをレリック魔法で生み出したアーマーが代わりに受け止めてくれる、という仕組みだ。これにより、自分自身に直接のダメージが通らない。言うなれば、自分の肉体を身代わりしてくれる人形のような存在だ」


 なるほど、と私は感心してしまいます。

 私が普段使っているアーマーは、魔力を纏うものです。

 そのダメージは私に直接響きます。

 ですが、レリックアーマーであれば、アーマーが受け止めたダメージは私に通りません。

 レリックが全てを代わりに受けてくれるのですから。

 こんなに心強いアーマーはそうそう存在しないでしょう。

 そのうち、私も自分のアーマー技能をレリックアーマーに変えてしまいましょう。

 その方が強いに決まっています。


「さらに言うと、王族の方々は本人がそもそも常時無敵だ。技能レベルで言えばSランクの無敵を持っている。これにより、攻撃自体が当たりもしない。……と言うよりも、レリックアーマーと無敵は表裏一体とも言える」


 表裏一体、というのはどういうことでしょうか。

 つい首をかしげて、聞き入ってしまいます。


「例えばレリックアーマーに私が剣で斬りつけたとしよう。この時、私の剣は相手の身体に突き刺さっていることになる。もしも本人が無敵でなかった場合、この剣は本人にも突き刺さってしまう。ようするに、レリックアーマーで攻撃を受けるということは、自分自身も同じ攻撃が存在する場所に立っているということだ。当たった瞬間消滅する遠距離魔法でもない限り、本人もレリックアーマーが受けたものと同一の攻撃を受けることになる」


 ふむふむ、なるほど。

 つまり、攻撃範囲にアーマーと本人の両方が重なっているから、両方がダメージを受けてしまう。

 だから無敵が必要、というわけですね。


 ……あれ?

 でもそれっておかしくないでしょうか?


「先生、質問だにゃ!」


 私が疑問に思ったタイミングで、アンネちゃんが挙手しました。


「何かな、アンネ君」

「どうせ無敵になるんにゃら、そもそもレリックアーマーなんて要らないんじゃないかにゃ? 無敵だけでいいと思うにゃ」


 アンネちゃんの言う通りです。私も、同様の疑問を抱きました。

 レリックアーマーだけでは意味が無いのであれば、そもそも無敵になれば良いのでは? と思ってしまいます。


 しかし、リリーナ先生は首を横に振って否定します。


「残念ながら、考えが甘い。レリックアーマーの本質は、攻撃を受け止めることにある。例え本人が無敵であっても、レリックアーマーは攻撃を受け、あたかもダメージを食らったように振る舞い、場合によっては怯んだような動作さえ偽装できる。これは戦闘における、大きな情報的アドバンテージだ」


 先生に言われ、アンネちゃんはハッと気付いた様子です。私も理解できました。


「あたかもごく普通の存在のように、自らを偽装し、常時無敵という本質を隠す。これこそが恐ろしいんだ。また、レリックアーマーだけでも、ブリッツのような持続力の無い遠距離魔法を完全に無効化する。実質、遠距離魔法無効化と考えればそれだけでも強い耐性と言えるだろう」


 先生に言われるほどに、私は考えを改めます。

 確かに、無敵があれば攻撃は受けません。でも、対策をされる可能性があります。

 それを避けるという意味で、自分の無敵をごまかせるレリックアーマーは戦略上でとても有用なのでしょう。


 それに、攻撃にちゃんと当たるということは、例えば「相手に当たったら消滅する」攻撃魔法もしっかり消滅してくれるということになります。

 もしも無敵だけだった場合、攻撃魔法が消えてくれず、戦闘中に視野を狭める原因になるかもしれません。


 また、攻撃を受け止めるということは、相手に「効いている」と思い込ませることにもなります。

 となれば、相手は単に無敵を相手する以上に攻撃行動で消耗していくことが考えられます。


 そうやっていろいろ考えるほどに、実はレリックアーマーは有能である、ということが理解できてきました。

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