03 授業中もイチャイチャ
朝食が終われば、授業の始まりです。
今日の最初の授業は魔法座学です。
「――さて、諸君。今日はまず、前回の授業のおさらいからいこう」
担任であり教科担当のリリーナ先生が、教壇に立ちながら言います。
私はそれを、リグの膝の上に座りながら聞きます。
そう、膝の上です。
隣でも前後でもなく、リグの膝の上に座って授業を受けます。
リグは私の髪を梳いたり、頭を撫でたりしながら授業を聞きます。
私はリグに身体を預けて、リグの体温を全身で味わいながら授業を聞きます。
時おり私とリグは手を重ねて、指を絡めて、お互いの指を弄びます。
「まーたやってるにゃ……」
隣の席で、アンネちゃんが呆れたように小さく呟きます。
そんなこんなをしている私たちを綺麗にスルーして、リリーナ先生は授業を進めます。
「特殊な耐性、というものについて話をしたのは覚えているな? 高ランクのモンスターやハンター、そうでなくとも特別な血筋の人間などが持っている場合が多い。その中でも、君たちが実際のハンター活動で遭遇しやすい耐性について、いくつか挙げたはずだ。そうだな……カルネット君、答えてくれ」
リリーナ先生は、教室の中ほどの席に座っている子の名前を呼び、指名しました。
「はい! アーマー、無敵、自動回復です!」
「正解だ」
答えに満足したように、リリーナ先生は微笑みながら頷きます。
「アーマーは怯むことがなくなる能力。無敵は攻撃が当たらなくなる能力。自動回復はライフが常に少しずつ回復する能力だ。どれも非常に強力だが、完璧な耐性とは言えない。君たち生徒諸君のレベルでも、数人がかりでリンチにすれば問題無いレベルの耐性と言える」
リンチ、とは物騒な表現なのです。
が、それは実際、正しい考え方です。
アーマーは怯まなくなるだけなので、手数が増えたらすぐにライフを削りきることができます。
無敵はSランクでもない限り、途切れ目があります。人数が多ければ、その途切れ目に攻撃を合わせやすくなります。
そして自動回復もまた、手数が増えたらダメージを与える速度が回復速度を上回ります。
基本的には、どの耐性も人数を増やす――極端に言えば、ステータスが高くなるだけでも問題なく対応できます。
「しかし、この世界には様々な耐性を持つ存在が居る。Sランクのモンスターやハンターなどは、人数合わせではどうにもならないほどの能力を持っている。今日はそうした、高ランクの耐性について少し話をしよう」
高ランクの話、と聞いて、私は俄然やる気が湧いてきました。
何しろ、今の私は最大でSランク相当の力があり、それを持て余しています。
高ランクの技術や知識については、いくらでも吸収していきたいのです。
「――ファーリ。興味がありますのね?」
私の耳元で、リグが囁きます。そして、優しく頭を、何度も撫でてくれます。
「はい。私が強くなるために、必要だとおもうのです」
頷いてから、私はリグの手に自分の頭の重みを預けます。
全身をすっかりリグに預け、膝の上でとろっとろに甘えます。
――私がリグのことが好きだと、恋人にしたいと自覚してからすぐの頃、私はもう既にこうしてリグの膝の上で授業を受けるようになっていました。
リグとくっつきたい。
リグに甘やかしてもらいたい。
欲望が溢れて止まりません。
しかも、私は自分がまだ子供だという立場を利用して、リグがきっと断らないと分かっていて、何度も甘えてきました。
朝の食べさせ合いっこだって、膝の上で授業を受けるのだってそうです。
最初はリグも少し眉をしかめて拒否しようとしていましたが、何度か粘ってお願いすれば、言うことを聞いてくれました。
今となっては、どちらも習慣のうちです。
朝ごはんをあーんして、授業はお膝の上。
すっかり、当たり前になってしまいました。
でも、それでさえ嬉しくて、私は後頭部をぐりぐり、とリグの胸に押し付けます。
そのままの姿勢で、リリーナ先生の授業に耳を傾けました。




