47 それは、何よりも大切なもの
リグと手を繋いだまま歩いて、寮の自室まで戻ってきました。
私は、胸のドキドキが収まらずに困っています。
私が、リグのことを女性として、恋愛対象として好きなのだと自覚してしまってからずっと、心が嬉しい悲鳴を上げています。
リグと同じ部屋にいる。
手を伸ばせば、触れる場所にリグがいる。
だから、私の心は一日中休まることがなくて。
そのせいで、私の欲望はどんどん膨れ上がり、治まるところを知りません。
「――リグぅ」
私はぽふっ、とリグの後ろから抱きつきました。
「もう、なんですの?」
リグは、部屋着に着替えている途中でした。
下着姿で――すらりと長い手足、綺麗な肌、美しい腰回りの曲線美を、惜しむことなくさらけ出しています。
「私、眠くなってきちゃったのです」
「あら、そうでしたの。今日の授業が難しかったのかしら?」
「はい……だから、お夕食の時間まで眠っていたいのです」
「そう。時間になったら、起こしてさしあげますわ」
リグは言いながら、私の手をすりすりと撫でてくれます。
少し前なら、これだけで十分でした。
下着姿の綺麗なリグに抱きつけるだけで、天にも昇る心地になっていました。
でも、今の私は暴走ファーリです。自重ができません。
「……ねえ、リグ。添い寝をしてほしいのです」
「添い寝?」
「はい。きっと、その方がぐっすり眠れるのです」
「いいですわよ。ほら、少し離れてくださいな。すぐに部屋着を着てしまいますから」
言われて、私は反対にぎゅっと腕の力を強めました。離さない、という意思表示です。
「……ファーリ?」
「このままがいいのです」
私は、欲望のままに言葉を口にします。
「リグには、下着姿のまま添い寝してほしいのです」
「えっ? ちょっとファーリ、さすがにそれは……」
「その方が、リグを近く感じて安心できるのです。ダメ、ですか?」
私が訊くと、リグは呆れたようなため息を吐いてから言いました。
「もう、ファーリったら。仕方のない子ね」
まるで幼いわがままな子供をあやすような口調で、リグは言いました。
いえ、まるでというより、そのものなのでしょう。
私自身、わがままな子供という立場を利用して、卑しい欲望を満たそうとしています。
むしろ、狙い通り子供扱いしてもらえるのは、良いことと言えます。
「じゃあ、早速寝ましょう!」
私はリグの身体を引き寄せて、そのままベッドの中に倒して寝転がせます。
そして――私もまた、リグと同じように下着姿になります。
「ふぁ、ファーリまで下着姿になる必要は無いんではありませんの?」
少し赤面して、視線を逸らしながらリグは言います。
「いいえ。制服のまま寝てはシワになってしまいます」
「今まで、そんなこと気にしてなかったではありませんか」
「でも、今日は気になったのです。それに……」
私は、リグの横たわるベッドに潜り込み、リグに密着します。
「……この方が、ずっとリグを近くに感じられるのです」
「もう、ファーリったら。本当にどうしようもない甘えん坊さんですのね」
リグはまた、呆れたようにため息を吐いてから、私の頭をゆっくりと撫でてくれます。
「ほら、おやすみなさい、ファーリ」
私の耳のすぐ近くで、リグの声が甘く響きました。
私はリグと自分の肌を密着させて、頬を擦り付けて、リグの匂いと体温に全身包まれ、満たされた気持ちで――お夕食の時間まで、眠りにつきます。
まどろむ意識の中で、私は考えます。
絶対に、この幸せを手放したくない。
リグのすべてを、私だけが独占したい。
リグが欲しい。
リグが愛しい。
リグこそが、私にとって、何よりも大切なもの。
ただリグのことだけを想いながら、私の意識は眠りの中へと落ちてゆくのでした。
さて! ここまでで三章は終了です!
ついにファーリちゃんがリグレットさんへの恋心に気付いてしまいました。
次の章では、恋に奮闘するファーリちゃんとリグレットさんのイチャイチャラブラブをたっぷり描く予定です!
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これからも『異世界転生してもステータスはそのままでって言ったのですが!?』をよろしくおねがいします!




