表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/320

45 ケントとライゼンシュタインの行方




 ――森での課外授業、ケントくん改めケントちゃんの誘拐。そしてライゼンさんとの戦闘があった日から、1週間の時が経ちました。


 私はあの後、1時間ほど眠りました。目覚めると意識もスッキリしていて、身体や知覚に違和感はありませんでした。

 リグや他のみんなにも心配されましたが……その日のうちに、ケントちゃんとライゼンさんと交わした約束を果たすために行動したのです。


 約束とは、とても単純なものです。

 ケントちゃんとライゼンさんを、ダズエル家のコネでダズエル領に逃し、新しい名前と身分を与えて生活してもらう。

 これだけの話です。


 ただ、2人に私がダズエル家の者だと説明するのは避けました。

 コネがあるから、ダズエル領であれば新しい名前と身分を貰って生活できるようになる、という提案です。


 とまあ、シンプルな提案でしたが、懸念はありました。

 まず、ライゼンさんはともかく、ケントちゃんは行方不明となってしまいます。

 女体化し、名前も身分も変えて、別の土地に市井の人間として住まうのですから、当然のことです。

 で、そうなるとケントちゃんの貴族として関わりのある人々や、ご家族、そしてハンター学園やリリーナ先生に迷惑がかかることになります。


 ただ、これは大した問題になりませんでした。そもそもケントちゃんは自己中心的でしたので、迷惑をかけることは対して気にしていなかったようです。

 それに、ご家族とは仲が良くなかったそうです。

 そう考えると、あんなにひねくれ者に育ってしまったのは、愛情に飢えていたが為だったのかもしれません。


 次に、ケントちゃんの行方不明でリリーナ先生がどれだけ迷惑するか、という問題がありました。

 が、これもリリーナ先生があっさり問題は無いと教えてくれました。

 授業中に事故で生徒が亡くなるのは昔からあることで、ハンターになる以上、それは当然のことです。

 そして、自分の命の責任は自分で持つというのがハンターです。

 まだ学生とはいえ、ハンターとしてギルドに登録されているにも関わらず、教員の忠告も聞かず、監視の目をすり抜けて森の奥に入り込んだケントちゃんの命の責任は、ケントちゃん自身にあります。

 なので、リリーナ先生が重い罰を受けることは無いらしいのです。

 いちおう、教員側にも管理不行き届きによる多少の罰則はあるそうですが、せいぜい減給程度で済むとのことです。


 そして最後の問題。名を変え、平民落ちして生活することに耐えられるか、という問題です。

 ライゼンさんはケントちゃんさえいれば問題無いのでしょう。

 けれど、ケントちゃんが貴族の身分を捨てられるのか、という問題がありました。

 贅沢に慣れた人間は、そう簡単に質素で平凡な暮らしには適応できません。


 ただ、この問題も、ケントちゃんはライゼンさんの為に頑張るという意思を見せてくれました。

 というわけで、すべての懸念は解消されたわけです。


 なので、私は約束を――二人を平民としてダズエル領に逃がすことを実行することとなりました。


 まずは、パパに手紙を書いてお願いを通しました。

 ダズエル家は、実力さえあれば多少後ろ暗い人間でも受け入れます。

 なので、ライゼンさんを身分不詳の死霊術を使う実力者として紹介し、その上でダズエル領で保護してもらえるように頼みました。

 その対価として、ライゼンさんには死霊術の技術供与をしてもらいます。

 ケントちゃんは、ライゼンさんの同行者であり大切な家族のようなもの、と説明して、おまけで保護してもらいます。


 パパからの返事のお手紙は、色良いものでした。

 ライゼンさんを、ダズエル家の研究部門で雇用するとまで約束して頂けました。

 そしてもちろん、二人の身分はダズエル家の方でうまく偽装し、昔から領地に居た人として処理してくれるそうです。



 そうして話が纏まって、ライゼンさんとケントちゃんはようやく森から離れることとなりました。

 それがちょうど、昨日のことです。


 ライゼンさんは『リーア』、ケントちゃんは『カティ』と名前を変え、ダズエル領へと向かいました。

 二人は、それはもう晴れ晴れとした表情で去っていきました。


 そして私は――そんな二人のことを見ていて、あることに気付いてしまったのです。

500ブックマーク達成していたみたいです! ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ