44 力の代償
「ファーリっ!?」
ぼんやりと、まるで洞窟の奥深くから聞こえてくるみたいな感じで、声が響きます。
私の名前を読んだのは、リグでした。
そして、リグがこちらへと駆け寄ってきます。
なんだか、頭がうまく働きません。
ぼんやりしているというか、逆に感覚が尖すぎて、よけいなことまで全部分かってしまうというか。
リグの声、駆け寄ってくるリグの姿以外、別に大した情報じゃないはずなのに、私の頭には濃い情報が流れ込んできます。
まるで、景色のすべてを明細に見ているような。風に揺れる草木の音を一つ一つ聞き分けているような。
そんな、重たい印象が頭をぐわんぐわんと揺らします。
「どうしたのです、ファーリ!? しっかりなさいな!」
リグが私の身体を抱き上げて、頬をぺしぺしと叩きます。
ああ、でも、そんなことをされても意識は元通りにはなりません。
むしろ、優しく触るような衝撃でも、今の私の頭には強く響きすぎます。
「――リグレットお嬢さん、今はそっとしておいてあげてくれないかな?」
その時、不意にカミさまの声が聞こえました。
また脳内に? と思いましたが、違いました。
見ると、姿を表したカミさまがリグの後ろからこっちへと近寄ってきます。
「カミーユ様? どういうことですの?」
「今のユッキーは、慣れない力を使いすぎた負荷でかなり辛い状態にあるんだよ。ゆっくり寝かせてあげれば、そのうち回復するはずだよ」
「そう、でしたの……ごめんなさい、ファーリ。わたくし、気が動転して……」
リグに謝られたので、私は微笑みを返しました。気にしていないのです、と伝えようと思って。
ただ、声は出せません。全身がだるくて、うめき声のようにしかなりません。
それにしても……力の反動、ですか。
確かに、今までに経験の無いレベルで技能を使いましたし、何よりスーパーサーチで膨大な情報を頭に入れ、処理していました。
身体がこんなに変な調子になっても、仕方ないのかもしれません。
『実は、それだけが原因じゃないんだけどね』
急に、カミさまが脳内に語りかけてきます。
眼の前にいるのに、言葉には出していないようです。
心配そうに私の顔を覗き込んでくるカミさまは、なんだか申し訳なさそうにしているようにも見えます。
『今のユッキーは、少しずつ人とは異なる存在に肉体や魂が……もっと有り体に言えば、ユッキーを定義するコードが書き換わっている最中なんだ』
私を、定義するコード?
『うん。試しに、スーパーサーチで自分を見てごらん?』
言われたとおり、私は自分のステータスをサーチしてみます。
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ファーリ・フォン・ダズエル(Fali Fon Dazzuel)
種族:準亜神
ライフ:103285
パワー:156291
攻撃力:3897
防御力:3255
魔法力:27928
敏捷性:5971
技能:剣術(S) 弓術(S) 槍術(S) ストレージ(S)
精密ダメージフロー(S) カウンターコード(S)
コード強制(S) 即死強制(S) 即死カウンター(S)
ゴーストピアス(S)マーキング(S) ストールダメージ(S)
スーパーアライブ(S) スーパーフリーズ(S)
レリック(S) スーパーフロー(S) スーパーサーチ(S)
喰らい偽装(S) デリート耐性(S) アーマー(S)
魔法適性:火(S)、水(S)、土(S)、雷(S)
風(S)、光(S)、闇(S)、命(S)、無(S)
魔法耐性:火(S)、水(S)、土(S)、雷(S)
風(S)、光(S)、闇(S)、命(S)、無(S)
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よく見ると、技能がいくらか増えています。
が、それよりも気になる部分が一つ。
種族:準亜神というのは何でしょうか?
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準亜神:神ならざる者でありながら、神性を得つつある存在のこと。
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ほうほう、神性ですか。
……えっ?
『つまりユッキーの力は、少しずつ神に近づきつつあるってことだね』
えぇ……。
私、どれだけとんでもない才能を持ってこの世界に転生してきたんですか。
神って、もう前世からかけ離れすぎじゃないですか?
私、そのままでいいって言いましたよね?
今さらこの話を蒸し返すのもどうかとはおもうのですが……さすがに神になっちゃうのはちょっと。
『大丈夫だよ。ちゃんと封印状態であれば、今までどおり普通の人と変わりないから。私の掛けた第一の封印をもう一度掛け直したら、何の問題も無いよ』
ううん……生活に支障が無い程度でしたら、まあいいんですけれど。
ただ――もしかして、私ってこれから強くなればなるほどに人間を辞めていくことになったりするんじゃないのですか?
『あー。まあ、正直に言っちゃうとそうです。ごめんね♪』
カミさまはウインクしながらごまかそうとしてきますが、無駄です。
元気になれば、お仕置き決定なのです。
『いやいや。今はお仕置きのこととか考えてないで、しっかり休まなきゃダメだよ、ユッキー?』
カミさまはさらにごまかそうとしますが、無駄なのです。
エクスコルドでうべべべと鳴かせてやるのは確定事項なのです。
――と、そんなことを考えているうちに、疲労と準亜神に変化しつつある肉体の負担が限界まで高まってきます。
私の意識は闇に沈んでいきました。
ファーリちゃんの今後やいかに!?
神さまとかになっちゃうんでしょうかね?
僕もよくわかんないです。
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