43 いよいよ決着
カミさまと脳内で会話しながらも、ライゼンさんの攻撃は続いていました。
当然、私はそれを捌き、回避し、防御して無効化しながら逃げ続けていました。
ステータス上ではライゼンさんを上回っていますし、スーパーサーチで攻撃の予兆などを見抜けば回避や防御も簡単です。
結果、考え事をしながらでもダメージをほぼ受けること無く逃げ続けることができました。
ですが、このままいけば私が負けます。
いずれ防御に使う為のパワーが切れますし、肉体的な体力ももちません。
疲れて動きが鈍れば、ライゼンさんの攻撃に巻き込まれ、瞬時にライフを0まで削られることでしょう。
なので――ここらでそろそろ、反撃に出ようと思います。
「――ライゼンさん!」
私は、ライゼンさんに向けて声を上げます。
「この勝負、次の一撃で決めてやるのです!!」
その言葉に、ライゼンさんはニヤリと笑いました。
「ふん、上等だ。吾輩を打ち破ってみせよッ!」
その言葉と同時に、今までよりも熾烈な勢いでシャドウブリッツ、そしてレリックゴーストが襲いかかってきます。
私は瞬時に、手を天に掲げます。
「――秘技『エレメンタルレイファング』!」
私が天に掲げた手から、光が迸ります。
そして、光は天へと登っていきます。
天に登った光は上空で止まって、破裂したみたいに強く輝きます。
その光から、無数の光の断片が、まるで牙みたいな形になって降り注ぎます。
光の牙は雨のように降り注ぎ、私の周囲だけでなく、ライゼンさんまで飲み込むほど広い範囲に攻撃します。
――この光の雨も、もちろん『エレメンタルブリザード』と同様に、見た目だけの魔法です。
この光の中で、私は肝心な部分のコードを順に実行していきます。
まずは、カウンターです。適当に近場のレリックゴーストの攻撃にカウンターを合わせます。
そして、次に遠隔魔法です。レリックゴーストにコード強制し、威力が無く、見えもせず、移動もしない魔法を撃たせました。
この魔法を、私はレリックで受け止めます。姿が見えず、何の動作もしない、ただ遠隔魔法が当たるだけの障壁をレリック魔法で生み出します。
そして、相手の遠隔魔法が私のレリック魔法に辺りました。
これで――遠隔魔法に込めた、自分自身へのコード強制が働きます。
コード強制は、バグによりライゼンさんに対して働きます。
そしてライゼンさんは、わけもわからないまま攻撃の判定を自分の体に発生させ、勝手に体が動きます。
これに合わせて、私は即死カウンターの判定を発生させます。
ライゼンさんの攻撃判定に重ねて、ピッタリと。
余計なものに反応して、失敗しないための保険ですね。
こうして、私はようやくライゼンさんに即死カウンターを決めることが出来ました。
次の瞬間、ライゼンさんはコード強制されて現在のライフを0に変更されてしまいます。
それを確認したら、私は光の牙の雨を降らせるのを終了させます。
「……ぐッ! まさか、吾輩の無敵を破るとは……見事なり」
ライゼンさんは最後にそう言って、崩れ落ちます。
ライフがゼロになった為、意識を失ったのでしょう。
しばらく、その場を静寂が包み込んでいました。
ライゼンさんが倒れ、ブリッツやレリックゴーストも消滅しました。
私もじっと立ったまま、身動きも取らず何も言いません。
そして、観戦をしていたみんなも、じっと動かずこちらを見ています。
「――勝者、ファーリ!」
そして、ようやくリリーナ先生の声が上がりました。
審判のリリーナ先生の宣言。それはつまり、確かに私がライゼンさんに勝ったと認められたことを意味します。
そして――その声を聞いて、安堵した私は。
とうとう、身体の力が抜けて、その場に倒れ込んでしまいました。




