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41 カウンターの弱点




「……ふふふ、驚きで声も出ぬようだな?」


 ずっと黙り込んでいた私に向かって、ライゼンさんが言ってきました。

 実際はカミさまと脳内で話し込んでいたからなのですが、まあ声も出さずにじっと睨み合っていたのは本当です。


 というか、ライゼンさんをたくさんのレリックゴーストなる存在が囲んで守っているので、私から攻める手段がありません。

 そもそも私が狙っているのは即死カウンターなので、自分から手出しするべきではありません。


「動かぬのであれば、吾輩からゆくぞ! レリックゴーストよ、ゆけッ!」


 ライゼンさんの呼びかけに応じて、レリックゴーストたちが動き出します。

 レリックゴーストたちは好き勝手に展開し、腕を振り上げ、私に向かって突撃してきます。

 全員がゴーストなので、お互いの体をすり抜けられるので密集しても邪魔にならないようです。便利な奴らなのです。


 しかし、これでようやく攻撃をしてもらえました。

 即死カウンターの発動です。


「――コレが私の奥の手なのです! 秘技、『エレメンタルブリザード』ッ!」


 私は、襲いかかってくるレリックゴーストに向けて手を翳し、作り上げたばかりの即死カウンター魔法を発動しました。


 魔法の名前を宣言すると同時に、私の手を翳した方向に虹色の光の粒が無数に発生し、嵐のように舞い飛びます。

 光の嵐に巻き込まれたゴースト達は、次々と消滅していきます。


 ちなみに、この光の嵐ですが、実は何の攻撃力もありません。

 見た目だけの、視覚効果に過ぎません。


 というのも、即死カウンターはコードの話になってくるので、別に何か目に見えるものを発生させる必要がありません。

 何しろ、カウンターに必要な領域をコードで設定するだけですからね。

 なので、必要最低限のコードだけで即死カウンターを発生させると、攻撃してきた相手が突然なにも無いのに倒れるという意味不明な光景が繰り広げられることになってしまいます。

 そこで私は、こうして光の嵐を見た目だけ発生させて、相手が倒れても不自然ではないように演出しているのです。


 さて、そろそろいいでしょう。攻撃してきたレリックゴーストは、みな消滅しました。

 私は、即死カウンター魔法『エレメンタルブリザード』を終了させます。

 すると、虹色の光の嵐はスッと一瞬で消え去ります。



「――ほう、吾輩のレリックゴーストを始末するとは、なかなかの魔法のようだな」


 あれ?

 ライゼンさん、ピンピンしてますね。

 即死カウンター魔法を食らったはずなのに、なぜ?


『そりゃそうだよユッキー』


 カミさまが、呆れたような声で脳内に語りかけてきます。


『攻撃してきたのはレリックだからね。その攻撃に即死カウンターを合わせても、即死するのはレリックで作られた存在の方であって、ライゼンには何の影響も無いんだよ?』


 え、何なんですかそれ!

 初耳なのです!


『あー、うん、ごめんねユッキー。普通に考えたらそれぐらい分かるかなって思って、説明しなかったよ。まあ、ライゼン自身が攻撃を放ってきたらそれに即死カウンターを合わせて発動すればいいのは変わりないから』


 いやいや、手の内を晒してしまった以上、難易度が一気に上がってしまっているのです。

 やすやすとライゼンさんが攻撃してきてくれるとは思えないのですが。


 などと脳内でカミさまと会話していると、ライゼンさんが顎を触りながら、何かを考えるような仕草を見せつつ話し始めました。


「吾輩のレリックゴーストは、みなSランクの無敵を持っていた。それを容易く葬ったとなれば……少女よ、お主が放った魔法はカウンター魔法なのではないか?」


 うぐっ!

 バレているのです!


 私はつい、隠しきれずに額から冷や汗を流します。

 それをしっかり見抜いたようで、ライゼンさんはニヤリと笑いました。


「ふふふ、どうやら図星のようだな」

「だ、だから何だというのです! そちらが攻撃すれば、その時点で私が勝つことには変わりないのです!」

「ふむ、その様子だと、カウンター魔法の弱点を知らぬようだな?」

「じゃ、じゃくてん!?」

「図星であったか。ならば教えてやろう。カウンター魔法は、遠隔操作系の魔法には反応しない。直接攻撃でなければカウンターは取れないのだよ。ブリッツ等が典型的な遠隔操作魔法だが、当然アレもカウンターに反応しない。つまり、吾輩がこれからブリッツとレリックのみで攻撃を続ける限り、カウンター魔法は通用せんのだよ!」

「えぇ~っ!?」


 初耳なのです。


『そりゃまあ、教えてないからねぇ』


 カミさま!

 そういう大事なことは先に教えておいてほしいのです!!


『え、だってそんなに全部教えちゃったら面白くないよね? 私は右往左往して慌てるユッキーを見るのも大好きなんだからね? そりゃこういう大事なことは黙っておくよね?』


 ぐぬぬ……こうして脳内に語りかけてくる限り、私はカミさまにお仕置きもできないのです。

 悔しいのです。


「ふふふ、そう悔しがるな少女よ」


 ライゼンさんが私を見て言います。どうやら私がライゼンさんを相手に悔しがっていると勘違いしたようです。


「勝負はここからが本番であろう? さあ、さらなる足掻きを吾輩に見せてみよ! そして存分に吾輩を楽しませたまえ!」


 言いながらライゼンさんは杖を構え、再びレリックゴーストを召喚します。最初の召喚の数倍は確実にいるでしょう。

 そして、闇属性のブリッツ、シャドウブリッツも無数に生み出します。

 ブリッツとレリック、合わせて百を超える攻撃魔法がここに用意されました。


「では――ゆくぞッ!!」


 そして、その全ての攻撃魔法が、一斉に私へ向かって放たれたのです。

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