38 無敵の突破方法?
「なるほど、ライゼンシュタイン伯爵は無敵の技能の使い手か」
審判でもあるリリーナ先生が、感心したように呟きます。
「先生、無敵というのはどのような技能なんですの?」
疑問に思ったらしく、リグがリリーナ先生に訊きます。
「ああ、本来はゴースト等のモンスターが持つスキルだな。実態はそこに存在しているというのに、触れることも、魔法で干渉することもできない。恐ろしい技能だ」
「そんな……強力すぎますわ。対抗策はありますの?」
「ゴーストであれば無敵は限定的であるため、命属性の魔法でダメージを与えられるが……おそらく、ライゼンシュタイン伯爵は死霊術で操ったゴーストを独自に研究し、その技能を得たのだろう。弱点なども改良済みと考えた方が良さそうだ」
リリーナ先生の解説が聞こえてくるほど、私は相手がどれだけ強力な存在なのかを理解します。
『ちなみに、リリーナさんが言っていることは本当だよ』
ここで、カミさまの声が補足の解説を加えてきます。
『ライゼンの無敵はSランク。Aランクまでなら厳しい条件下で無敵の発動しない状況を作り出せるけど、Sランクともなれば常時無敵。攻撃を直接通す手段は存在しないね』
直接、という言い方が気になりますね。
『いいところに気づいたね、ユッキー。実は無敵にも突破方法はいろいろあるんだ。その中でも特に簡単な方法が、カウンターコード、それとコード強制っていう技能だね。ユッキーもその技能は持っているはずだよ』
カミさまに言われて、私は自分のステータスを確認します。
―☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆―
カウンターコード:相手の攻撃を受けた時、相手に任意のコードを発動させる。
コード強制:自分のコードを相手に実行させる。
―☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆―
カミさま、質問です!
コードって、何なんですか?
『ありゃりゃ、それもそうか。ユッキーにはほとんど説明してないもんね。わかんないか。ごめんね?』
いえ、それよりも説明がほしいのです。
今のままだと、私は自分の持っている技能さえまともに使えないアホの子になってしまうのです。
『ユッキーならアホの子でも可愛いよ! ……って、そういう話をしている場合じゃないんだよね』
分かっているなら、そうやってふざけるのを止めるべきなのです。
『はいは~い。で、コードっていうのはね、簡単に言えば世界を構成する根源的な要素のことだよ』
世界を構成する要素、ですか。
『ユッキーは、この世界や地球のある世界を作ったのが私たち神の世界の存在だってことは知ってるよね? で、神は様々な世界をコードと呼ばれる要素で作るんだ。例えばユッキーの体とか、ステータスとか、攻撃魔法や武器、アイテム、さらには大地や空間、物理法則まで、何もかもがコードによって定義されているんだよ』
ふむふむ……つまり、プログラミング言語のようなものでしょうか。
『そのイメージで大体あってるよ。で、ユッキーの攻撃も、ライゼンの無敵やライフ、生存状況なんかもすべてコードで定義されてるわけ。だから、カウンターコードと強制コードを組み合わせれば、相手に強制コードで自分のライフをゼロにするコードを実行させることもできるって仕組みさ!』
うむむ、少し話が難しくなったのです。少し考えをまとめるのです。
つまり、まずは私が自分のライフをゼロにするようなコードを作っておきます。
そして次に、カウンターコードで攻撃を受け止めて、相手に私の選んだコードを実行させることができるようにします。
最後に、実行させるコードには強制コードで私が用意したコードを選びます。
すると、相手はライフをゼロにするようなコードを実行して倒れる、というわけですね?
『そのとおり! まあ、この2つの技能があれば、攻撃を受け止めたら相手のことを好き勝手できるって思ってくれていいよ。ちなみに、カウンターコードと強制コードで相手を即死させる技術を即死カウンターって呼んだりするよ。カウンターせずに、直接相手に強制コードの攻撃をぶつける場合は即死強制って呼ぶね。今回は全く無意味な攻撃だけど』
なるほど。ありがとうございます、カミさま。理解できたのです。
つまり、その即死カウンターをライゼンさんの攻撃に合わせて発動させたら、ライゼンさんの無敵を無視して倒せるというわけですね?
『そのとおり! 無敵は攻撃を食らわないだけの技能だから、即死カウンターで自らライフをゼロにすることに対しては無力ってわけさ』
では、その即死カウンターというヤツのやり方を教えてほしいのです。
『んー……どうしよっか』
……カミさま?
『いや、教えてあげてもいいんだけど、全部教えてあげるのは面白くないなぁって思っちゃってさ?』
ほうほう。
つまりどういうことなのです?
『自力で頑張ってみてちょーだい♪』
……ふざけんな! なのです!
設定が複雑になってまいりました。
実はこの辺の設定……というかファンタズムの世界の設定には元ネタになるゲームが存在します。
その元ネタの専門用語を回避して、うまいことファンタジーな世界に落とし込んでいる……つもりです。
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