20 捜査協力
「――リリーナ先生!」
私たち『紅き清純』は、リリーナ先生を追って森へと入りました。
他の生徒たちから十分に離れたところで、私がリリーナ先生に声をかけました。
疾走していたリリーナ先生は立ち止まり、こちらを振り返ります。
そして、ため息をつきました。
「はぁ……なぜ、付いてきた?」
「それは、リリーナ先生の手伝いがしたかったのです!」
それは、一つの本心でした。
しかし、本当の理由は他にもあります。
「私を手伝いたいだけにしては、どこか必死な雰囲気を感じるな。何か、わけがあるな?」
リリーナ先生に言われ、私はドキリとします。
そうです。今回、リリーナ先生についてきたのは、一つ私のわがままな理由があるのです。
それは――先日のサイクロプスについてのことです。
あのサイクロプスは、異常でした。
オークを従え、群れを作っていました。
そんな異常行動があったサイクロプスの存在を、私たちは誰にも報告しませんでした。
規則を破ってサイクロプスと交戦した、という事実を隠そうとした為です。
でも、今にして思えば愚かなことです。
あれは、明らかな異変でした。
この森で、なにかおかしなことが起こっているという証拠の一つでした。
それを、もしも私たちがちゃんと報告していたら。
今回の課外授業で、森に来ることはなかったかもしれません。
異常の発生していない、他の安全な狩場に向かっていたでしょう。
そう考えれば、今回の事件の責任は私にもあるのです。
私が報告を怠ってしまったから、ケントくんはさらわれてしまった。
悪いのは、私なのです。
リリーナ先生に問い詰められるまま、私はつい本心を話してしまいました。
目配せだけで私についてきてくれた3人も、私の考えをようやく理解できたからなのか、驚いたような、気の抜けたような顔をしています。
「……ひとまず、報告を怠ったこと、そしてサイクロプスと交戦したことについては置いておこう。今は君らが事件解決の戦力になるか否か、それが重要だ」
リリーナ先生は、頭を抱えて語ります。
「その、サイクロプスを一撃で葬ったというのが本当であれば、ファーリ君はAランク相当の攻撃力がある。他3人も、授業の成績を鑑みるとBランクの下位ハンター程度の戦力として数えることはできる」
言いながら、リリーナ先生は私たちの顔を順番に眺めます。
「生徒を危険に晒すのは忍びないが、正直言って君たちが居れば私一人で捜索をするより遥かに良い結果が期待できる。こちらとしては、協力を拒むつもりはない」
「それじゃあ――」
「ただし!」
喜び、声を上げそうになった私を遮り、リリーナ先生が言います。
「危険だと思ったら、すぐに逃げること。私の指示は絶対に守ること。逃げろと言われたら必ず逃げること。いいね?」
「……はい! 分かったのです!」
私は、リリーナ先生の言葉にしっかり頷きます。
当然のことです。私は、大切なお友達の命まで捧げるつもりはありません。
ちゃんと、生きて学園に帰るのですから。危ないと思えば、ちゃんと逃げます。




