10 リグレット無双
「では、最初の課題だ。まずは威力を見よう。思い切りブリッツを放って、私の召喚するゴーレムを破壊するんだ」
言うと、リリーナ先生は指先を振り、地面に向けて光を放ちます。
光は地面に滲むと2つに別れ、2体のロックゴーレムが召喚されました。
サイズはかなり大きく、3メートルほどの身長があります。
これだけの大きさのゴーレムなら、どれぐらい破壊できるかでブリッツの威力を見ることもできるでしょう。
「では、まずはケント君」
「はい!」
意気揚々とケントくんは返事をします。
「大地の力よ、礫となりて敵を討てッ! 『アースブリッツ』!」
ケントくんは律儀に詠唱し、ブリッツを放ちます。
まあまあの大きさの土属性魔法の光が、ゴーレムの一体に向かって飛んでいきます。
バシィン! と大きな音を立ててブリッツはゴーレムの核に衝突。核にはヒビが入ります。
「ほう、なかなかの威力だな。悪くないぞ、ケント君」
「当然です、俺ならこれぐらい出来て当たり前ですから」
自信満々に笑うケントくん。
でも、そんないい気でいられるのも今だけなのです。
やっちゃってください、リグ!
「では、次はリグレット君だ」
「ええ、わかりましたわ」
リグは指を天に向けます。
すると、無詠唱で巨大な『アースブリッツ』が発動します。
ケントくんの3倍以上の大きさはあるでしょう。
ケントくん、そしてクラスのみんなが驚く間も無く、リグはそのブリッツをゴーレムに放ちます。
リグのブリッツは、ゴリッという音を立てて――ゴーレムの核を貫通します。そして、衝撃で核は全体が割れ、バラバラに砕けます。
そこまでやって、ようやく誰もがリグの凄さに気付きました。
クラス中の注目と、ケントくんからの驚愕の視線を集めます。
けれど、リグはなんでもないような顔をして言います。
「先生。これでは訓練になりませんわ」
「そうだね、これはブリッツの威力を高める訓練だ。あんな『壊れやすい』ゴーレムでは練習にもならないだろう」
言って、リリーナ先生はまたゴーレムを召喚します。
こんどは1体。リグのために召喚されたそれは――なんと、アイアンゴーレムです。
「さて、リグレット嬢。これならどうかな?」
「貫通はとてもできそうにありませんわね」
リグは肩をすくめます。
その言葉に、ケントくんは言葉を失ってリグを見ているだけのことしかできませんでした。
「では――炎の力よ、礫となりて敵を討てッ! 『ファイアブリッツ』!」
リグは、先程とは違う属性のブリッツを放ってみせます。
巨大な、直径が1メートルほどあるブリッツが、さらにその力を凝縮し、縮んでいきます。
それでもまだ、リグはパワーを消費し、ブリッツに高い魔力を込めていきます。
「――ハッ!」
そして、リグは手を前に振りかざします。
それと同時に、凝縮されたブリッツがアイアンゴーレムに向かって飛んでいきます。
ブリッツが着弾すると、アイアンゴーレムの核は熱を持ち、赤く光出します。
そんな核をブリッツは轟々と音を立てつつえぐり、そして力を失って弾けます。
終わってみれば、アイアンゴーレムの核は大きくへこんだような形になっていました。
「なかなかの威力だね、リグレット嬢。威力だけで言えば、Aランクの魔法使いにも比肩しうるだろう」
「ありがとうございますわ」
リグは、少し疲れた顔でリリーナ先生に礼をします。




