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09 初めての魔法実技




 生徒も訓練場に揃い、魔法実技の授業が始まります。


「言っておくが、実戦で多種多様な魔法など必要ない。基本は2つだ。1つは全てを吹き飛ばせる最大火力の強力な上位魔法。そしてもう1つは臨機応変に自由自在に扱えるブリッツだ。この2つ以外の魔法を諸君は覚える必要は無い」


 魔法実技の担当、リリーナ先生が声を張り上げて言います。


「実際は補助魔法を色々覚えておいたほうが便利ではあるのだが、諸君が思う魔法とは多くが攻撃魔法だ。攻撃魔法については、さっきも言ったように2つあればいい。それ以外は趣味であり、実戦の観点で言えば時間の無駄だ」


 なかなか極端な話ですが、私は理解できます。

 授業が始まるまでにハンター活動をしていて、思いました。

 ブリッツという魔法はあまりにも汎用性が高すぎます。


 込める魔力の量で威力も変わり、数もたくさん撃てて、軌道も変幻自在です。

 大抵の状況に対応できるので、魔法使いにとっては手足とも言えるような魔法なのです。

 実際、私たち『紅き清純』はハンター活動中、獲物を狩る時はほとんどブリッツ以外の魔法を使いませんでした。


「というわけで、魔法実技の授業ではブリッツの訓練を中心に行っていく。操作精度、威力、数、性質付与など、様々な観点から諸君のブリッツを鍛えてやろう」


 リリーナ先生は、なんだか楽しそうです。やはり魔法を使う先生なのですから、魔法の授業は楽しいのでしょうか。


「ではそうだな……ケント君。君は魔法が得意だったね。ブリッツの属性ごとの種類を9つ、答えてくれるかな?」


 リリーナ先生は、ちょうど話題の人であるケントくんを指名しました。

 なんというか、妙に空気を読むといいますか、タイミングの良い人なのです。


「はい先生! 火はファイアブリッツ、水はバブルブリッツ、土はアースブリッツ、雷はプラズマブリッツ。風がエアブリッツで、光はフォトンブリッツ、闇はシャドウブリッツ、命がソウルブリッツで、無属性はバスターブリッツです」

「よく覚えているね。その通りだ」


 リリーナ先生に褒められて、ケントくんは自慢げな顔をして、こちらを見てきます。


 いや、さすがにブリッツの種類ぐらいは私も分かるのです。

 ……カミさまについこの間教わったばかりなのですが。


 しかし、これでケントくんが調子に乗っている理由が何となく分かりました。

 ハンター教養の授業でリリーナ先生の質問に答えられなかった私を見て、ナメているのでしょう。


 私に手下になれ、と言った理由までは分かりませんが。

 でもまあ、どうせ私のことを『後期試験成績1位という肩書の美味しい手下』ぐらいにしか思っていないのでしょう。


「では、誰かにさっそく実演をしてもらおうか。諸君の中に、ブリッツの扱いに自信がある者はいないか?」

「はい先生! 提案があります!」


 そこで、ケントくんが手を上げて言いました。


「僕とリグレットでその実演、やらせてください!」

「ほう、ケント君とリグレット君か」


 リリーナ先生が面白そうなものを見つけたように笑います。

 というかこのデブめ……リグのことを呼び捨てにしたのです。

 お腹がほっそりするまでフルパワーブリッツで撃ち抜いて肉を削ぎ落としてやりたい気分です。


「リグレット君。君はそれでもいいかな?」

「ええ、リリーナ先生。こちらこそ望むところですわ」

「ふふ、何か楽しい約束でもしているようだね。では2人とも、前に来なさい」


 リリーナ先生に呼ばれ、リグとケントくんが前に立ちます。


 さて、これからケントくんの公開処刑……もとい、恥ずかしいほどボロ負けする姿が晒されるのです。

 リグには、遠慮せずおもいっきりやってきてほしいのです。

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