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母がいない間だけ、幼馴染が俺の料理を食べに来る  作者: bonta
第二章 努力の程度は人それぞれ

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嫌いじゃない、で立ち止まる

「前田さんは何か食べたい物あるか?」

 時刻としては午前10時頃、夏希を連れて一旦食事を取ることにする。昼食としては早いが、並ぶのも面倒なので、このくらいの時間が妥当だろう。


「別に特にはないかな。脇阪くんが食べたい物で良いよ?」

 そう言われても悩むもので、献立に悩む主婦の気分だ。まぁ夏希なら、俺が何を選んでも文句は言わないだろうが。


「じゃあまずは、適当に見て回るか」

 とりあえず歩いて、学生が出している屋台や教室を確認していく事にする。あるのは焼きそば、フランクフルト、中でも焼きもろこしの香りは食欲を誘う。

 

「ほら、焼きもろこしで良かったか?」

 香りの力とはやはり強い物で、選ばれたのは焼きもろこし。二本買った内の一本を夏希に渡す。


「ありがと、後でお金渡すね?」

「そうか?じゃあありがたく貰っとく」

 デートってわけでもないのだ、食事代は割り勘の方が後腐れがないだろう。


「久しぶりに食ったけど、美味いな」

 焼きもろこしに豪快に被りつくと、とうもろこしの甘さと醤油の塩辛さ、それに焦げた醤油の匂いが良いアクセントになっている。これは良い物だな。今度自分でも作るか。


「他の場所で、甘い物もやってるみたいだね」

 食べ歩きながら、他の店のラインナップも見ていく。スイーツとしてはチョコバナナやクレープなんかがあるらしい。まさに文化祭というラインナップだ。


「まぁでも、こうやって見ると、なんでうちのクラスが人気なのか分かるな」

 だからこそ、無駄に凝った料理を出している一年生というのが、多少の話題になったのだろう。

 個人的な意見としては、こういう場で食べる屋台の食べ物というのもまた乙な物だと思うが。


「そうだよ、脇阪くんって凄いんだから」

 そう言い放つ夏希の顔は随分と誇らしげに見える。


「なんでお前がドヤ顔なんだよ」

「こうでもしないと、凄さが伝わらないと思って」

「俺だけの成果じゃない。みんな頑張ってた。そうだろ?」

 今だって、俺がいない間を補ってくれている。それがありがたかった。


「その考え方、良いと思うけどちょっと損してる」

 少し不服そうな夏希。もっと自分を労れって事か?


「そりゃ悲しいね。俺はこの性格、嫌いじゃないんだけどな」

 俺は俺の考え方が好きだし、長年培ってきたスタンスを崩す事はないだろう。


「脇阪くんは自分が好きなんだね」

「人をナルシストみたいに言うな。嫌いじゃないだけだ」

「それで充分だと思うよ。良いなぁ⋯⋯私は自分の性格、あんまり好きじゃないから」

 そう俯きがちに話す夏希。俺から見ても、夏希はどちらかというと内向的な人間だ。そんな自分に嫌気が指す事もあるんだろう。


「別にそれでも良いだろ。自分の性格が嫌いでも、周りから好かれれば、生きていけるしな」

 だが、それも個性の一つだと思う。第一、全員が自分大好きだったら、多分世の中が回らないだろう。


「俺も前田さんの事、嫌いじゃないし」

 俺が軽くそう言うと、夏希の足が少し止まる。


「それって、好きって事?」

 ⋯⋯深く捉えてほしくはなかったんだが、案外夏希にとっては重要な事なのかもしれない。


「⋯⋯どうだろうな」

「はぐらかすんだ?」

 はぐらかしたわけじゃない。嫌いじゃない、という言葉が一番当てはまるだけだ。


(本当に好きなんだったら、もっと分かりやすい関係になってる筈だろ)

 長い間、本当に何も無かったのだ、なのに、急に好きだ惚れたのなんぞ言い出すのはどうなんだ?


 だが⋯⋯

(もし今、前田さんに告白でもされたら、俺はどう答えるんだろうな)

 頭の中で、ありもしない事を考えている自分に笑ってしまう。


「どうしたの?」

「なんでもない。余計な話せずに、二年の教室も見に行こう。時間ないぞ?」

 我ながら馬鹿な事をしていると思い、自分の感情に蓋をしておく。


「⋯⋯結局答えてない」

「じゃあ好き」

「!?!?」

 急な告白に焦る夏希を見て苦笑する。答えて欲しかったんじゃなかったのか?


「性格の話だろ?俺、前田さんの性格好きだなぁ」

 こうやってからかえるくらいで、今はちょうど良い。


「また、からかった⋯⋯」

「お化け屋敷のお返しだ」

 だけど、いつかこの関係が変わっていくという事は、二人とも気づいていたと思う。


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