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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第一部 六歳児の初めての傭兵団

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第55話 幼女、釣りをする

 ドラゴンが崩れ落ちた。

 誰もが驚きの目で以てその光景を見ていた。呆気にとられ、今起きたことを頭の中で反芻していた。

 もっともそんな中に、ギャラリーでいることを満足できない愚かな者たちも、僅かにではあるが存在していた。


「ははは、なんという他愛もなさ。ならばトドメはこのバストールが引き受けよう」


 ドラゴンを崩した赤い鉄機兵マキーニが一歩退いたのだ。であればと、騎士型鉄機兵マキーニが一機前に出たのだ。それに何機かの鉄機兵マキーニが同調して歩を進めると、各々が弱ったドラゴンを殺して自らの手柄にしようと走り出した。


『あーあ、馬鹿だね』


 そんなベラの声が漏れるが、功名を焦る彼らには当然聞こえるわけもない。そして、


『ぐあああああああ』


 彼らは揃ってその身を炎に灼かれて身の程を知ることとなった。さらには周囲にも炎がまき散らされ、巻き添えを喰らった鉄機兵マキーニや兵たちから悲鳴があがる。


(やっぱり喉にため込んでから出すわけかい。出掛かりと終わるタイミングは簡単に分かるね)


 ベラはその様子を観察している。手柄に目が眩んだ馬鹿どものことなどベラは気にしない。わざわざドラゴンの炎を代わりに引き受けてくれたのだから、むしろありがたい話ですらあった。ドラゴンの炎の範囲が思ったよりも広かったのだ。ベラが相対しても無傷で逃れるのは難しいところだったのである。

 そしてドラゴンの喉袋が縮み、炎が尽きかけたタイミングでベラが突撃する。そのことに気付いたドラゴンがさらに炎を出そうと力を込めるが、すでに弾切れである。


『ヒャッハアアアアッ!』


 未だ炎を吐くことに慣れていないドラゴンは吐き終えるタイミングを上手く把握できていない。炎が出ぬことに若干の戸惑いを見せたドラゴンに対してベラはウォーハンマーを振り下ろして右肩を粉砕した。


「ギャァアアアアッ!!」


 そして、ドラゴンの苦痛の叫び声が戦場に響き渡る。

 ここまでの戦いの中でベラはドラゴンに対しての攻略方法をある程度把握していた。

 全身を覆うドラゴンの鱗は普通の刃では通すことは難しいが、打撃であれば効果はある。吐き出す炎は喉袋で溜められてから発射されるが吐き出される量には限りがある。また、成り立てだからか、ドラゴン自身が自分のそうした特性を把握しきれていないようだった。


(後は、こいつが効くかってところだが)


 ベラは回転歯剣チェーンソーを腰から取り出してドラゴンのわき腹を切り裂いた。鱗が飛び散り、皮膚が裂けて、血が噴出する。その痛みにさらなる叫び声をあげてかいなを振り回すドラゴンをバックステップで避けたベラがニタリと笑いながら口を開いた。


『やっぱりいけるね』


 回転歯剣チェーンソーの切れ味はドラゴンにすら通じるようである。さすが『モーディアス家の宝剣』の名は伊達ではなかった。


『ナリはデカいし、パワーもあってスピードもある。炎も吐けるし、その上に空まで飛べる。ま、一番驚くのは再生力なんだろうけどね』


 再び、炎をため込もうとするドラゴンに対し、ベラはその場に落ちていた主なきレイピアを蹴り上げて拾ってその刃を喉袋に突き刺した。


「グギャアアッ」


 炎が傷口から吹き出し、レイピアが溶けていく。しかし、空いた穴からは噴き出した炎も止まらない。


『ただね。まあ『それだけ』だ。正直言って、個々の能力は巨獣と変わらないんだよね。その上に野生の本能っていうのかい。そうしたものも薄いしさぁ』


 そう言いながら、ベラはとっさに振り下ろされたドラゴンの左腕を回転歯剣チェーンソーで斬り飛ばした。


り方が分かりゃあ巨獣以下だわ。ドラゴン様よぉ!』

「ギャアアアアアアアアアアアアアア」


 ドラゴンのような女のような悲鳴が木霊する。

 その様子を周囲の兵たちが固唾を飲んで見守っている。

 一方的にドラゴンの悲鳴だけが響き渡っているのだ。先ほどまで我が物顔で戦場を横切り、鉄機兵マキーニたちを破壊し、乗り手を食い散らかしてきた存在が、今では赤い鉄機兵マキーニに一方的に解体されていくだけの哀れな生き物に貶められていた。

 逃げようにも翼は折られ、砕かれ、切り裂かれ、手足も回転歯剣チェーンソーで斬り落とされた。再生した次の瞬間にはまた斬られるのだ。再生時における隙の大きさは、ドラゴンにとっては致命的な弱点でもあったのである。

 もっともドラゴンも決して無抵抗になぶられていただけではない。ドラゴンの振るう腕も足も、尾の攻撃も何度かは『アイアンディーナ』を掠めはしたのだ。しかし、そのたびに回転歯剣チェーンソーに切り裂かれて、のたうち回ることとなった。再生をする。斬られる。砕かれる。再生をする。潰される。悲鳴をあげるを繰り返すだけ。強固な生命力の恩恵ももはやただの拷問にしかならない。無限に続く苦痛を感じているためだけのものでしかなかった。


 しかし、ドラゴンは力を振り絞って最後の手段に出た。炎ではなく、凶暴な叫び声による衝撃波ソニックブームを放って『アイアンディーナ』を襲ったのだ。


『鬱陶しい風だね』


 それ自体は大した威力ではなかったが、『アイアンディーナ』の動きを止めるのには有効だった。さらに次の瞬間にドラゴンの身体から無数に飛び出してきたモノがあった。


『なんだいッ?』


 ベラがとっさに右腕でそれを受ける。飛び出してきたのはドラゴンの鱗であった。周囲の兵たちからも悲鳴があがった。巻き添えで喰らったのだろう。

 そしてドラゴンは距離をとった『アイアンディーナ』の前で最後の力を振り絞って、背中の翼を急速に再生させていったのだ。


『ちっ』


 ベラもそれにはさすがに舌打ちをする。鉄機兵マキーニは空を飛べない。このまま宙に飛ばれてしまえば確実に逃がしてしまう。しかし、ベラの胸に下げられている竜心石が主の意志を感じ取り輝いて反応した。


『ああん? なんだいディーナ。いきなり本番で使いたいって?』


 その反応にベラが笑いながら竜心石を見る。ボルドに言われていたことだ。脚部のクロノボックスに変異反応があると。ギミックが生まれる前兆だと。それを鉄機兵マキーニ『アイアンディーナ』はこの場で羽化させようというのだ。それは普通に考えて無謀なこと。だが『アイアンディーナ』はソレを望んだ。血にまみれた機械の身体が震えたのだ。


『いいね、やりなよディーナ』


 ベラは笑って『アイアンディーナ』に頷いた。

 その言葉に反応し『アイアンディーナ』の脚部から腰にかけて魔力光が発生する。そして、その形を変えていく。全身に浴びた竜の血が反応し赤い霧へと変わり、生まれ変わる脚部へと吸い込まれる。

 その場で『アイアンディーナ』は足を固定する鉤爪と打ち付けるアンカーを足首に生み出し、足全体にはフレームの強化とロック機能を追加した。さらに腰には鎖とアンカーを打ち出す装置が新たに生み出される。

 それらすべてが赤く染まっている。それは目の前で飛び立つドラゴンの再生と同じように不安定さがない状態だった。その様子を訝しげに見るベラだが、


『ああ……こりゃあ、回転歯剣チェーンソーを使うのかい』


 そう言ってベラは腰の裏に回転歯剣チェーンソーを戻すと、そのまま錨投擲機アンカーショットが稼働し接続ジョイントして、回転歯剣チェーンソーはアンカーを射出するための動力装置と化した。


(なるほどねえ)


 ベラは『アイアンディーナ』の変化を把握しながら、錨投擲機アンカーショットをドラゴンに向けた。


『そんじゃあ、ぶっ放そうやディーナ!』


 そしてベラはグリップのトリガーを引いた。錨投擲機アンカーショットからアンカーが射出され高速で宙を突き抜け、


「ギュェァアアア!!」


 飛び出したアンカーはドラゴンの腹に突き刺さり、そのままクローを飛び出させて、その身体に固定させる。


『そんじゃあ』


 ベラは『アイアンディーナ』に鎖を握らせて笑う。


『一本釣りとシャレ込もうかねッ!』


 ベラがグリップを力強く握って振り降ろし、その動きに合わせて『アイアンディーナ』も鎖を振り下ろした。ドラゴンも抵抗するが無駄である。何故ならば『アイアンディーナ』の足はアンカーと鉤爪によって地面に固定され、腰に至るパーツまでの可動部位も完全にロックされていたのである。

 そして放物線を描きながらドラゴンは地上へと落下し、叫び声をあげながらそのまま地面に叩きつけられた。


 その激突音が鉱山街モルドの正門前広場に木霊し、その場の全員が固唾を飲んで見守る中で回転歯剣チェーンソーを再度抜いたベラがゆっくりと近付いていく。


「グルゥ」


 ドラゴンがうめく。先ほどのように抜け駆けをしようという者もいない。

 そして、その場の空気が静寂に包まれている中で、もはや虫の息のドラゴンに対してベラは笑いながら回転歯剣チェーンソーを振り上げて、


『そんじゃあ、その首いただくよっ』


 一気に首を跳ね飛ばした。


次回更新は7月10日(木)0:00予定。


次回予告:『第56話 幼女、ペットを飼う(仮)』


「尾頭付き、です※」


猫耳は正義です。猫耳娘が可愛いのだから、猫耳おっさんも可愛いのだと思います。猫耳大正義です。


※ドラゴンです。

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