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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第四部 十二歳児に学ぶ皇帝の首の落とし方

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第308話 少女、待たせる

「確か、この丘の先だったね」

「はい。交易都市ゼクパル。モーリアン南方の玄関口とも言われている街ですね」


 進軍するヘイロー軍の中心を走る魔導輸送車マナキャリアの中でベラとパラがそう言葉を交わし合う。

 ケフィンたち獣人部隊が発見した巨獣の群れを討ちながら進軍し続けたヘイロー軍は予定していた目的地に近付きつつあった。彼女たちの目的は傭兵国家の名の通りにモーリアン王国に対しての武力の提供であり、エルシャ王国のダイズ王を通してモーリアン王国のベリス王より雇われた形となっている。そしてモーリアン王国軍が合流の指定をしたのが交易都市ゼクパルであった。


「それで……待っているのはゼックとかいうヤツだったっけ?」

「はい。銀光将軍ゼック・ヴァモロ様です。大戦帰りであり、クィーン・ベラドンナの側近のひとりだったと聞いておりますね」


 金剛将軍ニオー・ウルバルと銀光将軍ゼック・ヴァモロ。ベリス王に仕える両雄と彼らの率いるモーリアン王国軍は、ジェネラル・ベラドンナ率いるローウェン帝国軍と正面より衝突しても一歩も引かず、今なお均衡を保ち続けている。

 クィーンと同一人物かはどうあれ、数多の戦場でクィーンと同等と言わしめる実力を発揮したジェネラル・ベラドンナと渡り合えているという時点で彼らの能力の高さは分かろうというものだった。


「まあ……ローウェンとタメを張ってるんだ。相応に使えるんだろうけどねえ」


 ベラがあまり面白くはなさそうな顔でそう口にする。そんな主戦力である相手が彼女らを迎えるために来ている……という点についてはモーリアンに向かう以前から懸念点としてはあがっていたのだ。何分、ベラの立ち位置は非常に難しいところにある。上手く動かねば、使われて終わるだけという可能性もあった。


『総団長。正面、ゼクパルを確認した』


 そしてベラたちヘイロー軍がさらに進軍し、昼を越えた頃に通信から鉄機獣ガルムハチコーに乗って先行していたケフィンの報告が届いた。地図を確認し、全ては予定通りと頷きながらベラがケフィンに尋ねる。


「そうかい。それで様子はどうなんだい?」

『門前に鉄機兵マキーニと兵たちが並んでいる。旗印はモーリアンで間違いないが』


 その言葉にベラが目を細め、パラも眉をひそめながらベラを見た。


「どういうことでしょうか?」

「さてね。歓待の準備でもしてくれてるんじゃあないかい?」


 そう言いながらベラは立ち上がると魔導輸送車マナキャリア後部の簡易ガレージへと歩き出した。よもや攻撃してくるとは思えぬが、戦いに絶対はない。立ち向かってくるのであれば討つのがベラの流儀だ。

 一体相手は何を考えているのか……それを考えて少しだけ愉快になったベラはわずかに微笑みながら『アイアンディーナ』の元へと急ぐのであった。




  **********




『ゼック将軍閣下。ヘイロー軍の姿、確認取れたようです』

『思ったよりも早かったか』


 通信からの報告が鉄機兵マキーニ『ミステリア』の中にいるゼックがそう呟く。ゼック率いる銀光戦士団は現在交易都市ゼクパルの南門前にてヘイロー軍を待ち構えていた。無論それは友軍を歓待するためのものではあったが、一見して戦うべき相手を待ち受けているようでもあった


『兵の損耗はどうだ?』

『見る限りは問題ないかと』

『へぇ。巨獣に散らされて泣きべそかいているかとも思ったが、さすがにそりゃあないってわけかい』

『何しろ相手はラーサ族の戦士ですからね』


 配下の兵の言葉にゼックが『まあなぁ』と返しながらハハハと笑う。

 ラーサ族の戦士の勇猛さはこのモーリアンでも知れ渡っている。ヘイローに属さず傭兵をしながら国を渡り歩くラーサ族も少なくはないし、何よりも現在の八機将のひとりとなったラーサ族の男には彼らも煮え湯を飲まされていた。


『しかしよろしいので? これは挑発行為に取られるかもしれませんが』


 配下の声には若干の緊張が見えた。これより共に戦う相手……ということもあるが相手が相手だ。最悪、交渉が決裂すればローウェンと挟み撃ちになる可能性もあるのだからその認識は正しい。もっともゼックはその懸念を理解しているものの肩をすくめて笑う。


『はっ、ここは我らが土地、我らが世界だ。踏み入れたのであれば道理には従ってもらう。そのための手続きみたいなもんさ』


 ゼックがわずかに眉間に皺を寄せながらそう口にした。

 現在街に向かっているのは赤い魔女という異名を筆頭にラーサの英雄、竜飼い、クィーンの隠し子、解放者、八機将殺しなどとも言われているベラ・ヘイローが率いているヘイロー軍なのだ。用向きはモーリアンの友軍。戦闘民族として名高いラーサ族と獣機兵ビースト軍、また獣人部隊に、全滅したと言われていたドラゴンをも使役しているという。ここ数年に渡る戦歴はイシュタリア大陸南方の戦士ならば知らぬ者はおらぬほど。

 ローウェン帝国からエルシャ王国を解放したことでその名は不動のものとなり、また半年ほど前よりモーリアン王国軍の戦列に加わったルーイン王国軍の騎士団を指揮するガルド・モーディアスも戦友としてベラを讃えているという。

 とはいえ、それはいい。ゼックも勇猛な戦士が増えることに関してはありがたいという言葉以外のものはない。けれども一点、どうしても見逃せぬ話があった。


 クィーン・ベラドンナの生まれ変わり。


 現在のベラ・ヘイローはそう呼ばれてもいる。それも新たにエルシャ王国の王となったダイズ王直々の宣言により噂に過ぎぬとは言えぬようにもなった。また周辺国もそれには賛同している。理由は明確であり、つまりはジェネラル・ベラドンナに対してのカウンターだ。すでにクィーンと同一人物かと思われるほどの戦功を挙げているジェネラルが本物と思われ始めて久しく、それを打ち消すべき材料としてベラ・ヘイローはうってつけであったのだ。クィーンは我らにあり……と。

 所詮すでに生み出された英雄は旗印でしかない。本物か否かは問題ではないのだ。けれども懸念はある。


(アレらの野心……如何程のものか)


 ゼックが目を細めて、未だ姿の見えぬヘイロー軍へと視線を向けた。

 ムハルド王国を滅ぼし、新たな国を興した者。けれどもその身は未だ十を越えたばかりの歳だという。誰もが冗談と思える話だが、実際に会った人間は口を揃えて事実と返した。鉄機兵マキーニに乗り、八機将をも倒す者が子供だと。であれば、クィーンの生まれ変わりでなければ不可能だろうと言われるのも致し方なきこと。


(問題はどれほど話が盛られていて、その出自がどういったものか……ということだ)


 ベラ・ヘイローが戦功をあげているのは事実なのだ。

 ただベラ・ヘイローには疑惑がある。死亡したと思われて数年で復活し、傭兵国家を造り出した。武器はウォーハンマー。豪快さと老獪さを併せ持ち、戦場では常に前に出て敵の将を己が手で討ち取る。なるほどクィーンと似ている。似過ぎている……と。

 ベラ・ヘイローが頭角を現したのはムハルド王国での戦い。ローウェン帝国の力を自らのものとし、ドラゴンを使役し、ムハルドを滅ぼした。そのムハルド王国はローウェン帝国とつながりの強かった国だ。で、あればベラ・ヘイローとは実は帝国の技術で造られた存在なのではないか、という推測も生まれてくる。

 無論ゼックとてベラが現在ローウェンの側にいるとは思っていないが、何かしらの傀儡であるのか、大掛かりな神輿ではあろうと疑ってはいた。そして、ローウェンに組せぬともそこまでのことを為す存在が裏にいるのであれば、モーリアンは再び『王政ではなくなる』かもしれないとも。


 どこまでが偶然で、どこまでが必然なのか。ゼックの疑問に対する答えはもう目前に迫っていた。

次回予告:『第309話 少女、老婆の知己に出会う』


 ゼックおじさんは考え過ぎですね。ベラちゃんは裏表のない優しい心の持ち主の女の子ですよ。


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