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ロリババアロボ ー 6歳からの楽しい傭兵生活 ー  作者: 紫炎
第三部 十歳児の気ままな国造り

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第304話 少女、話題になる

「ただいま帰還いたしましたロイ博士」

「ご苦労様、ナスタシアくん。長きに渡る任務、ご苦労様でしたね」


 ローウェン帝国皇都トラギオン。その一角にある鉄機兵マキーニ研究所の所長室では、研究所の主人であるロイ博士と異形の顔をした女が対峙していた。

 獣機兵ビースト軍団に所属していた者であれば、その異形の顔の女が混機兵キメラで編成されたデュナン隊と呼ばれた隊の一員であったことを覚えている者もいたかもしれない。もっとも、様々な異形の姿をした集団であったデュナン隊の面々を覚えているような奇特な者はそうはおらぬだろうが。


「アルガンナ攻略戦のレポートについては読ませていただきました。まさかの逆転劇でしたねえ」


 ははは……とロイが笑う。その表情には全く悔しさの色はなく、予想を覆されたことへの興味が向けられていた。


「デュナン隊は機能しなかったのかい?」

「獣魔ドルガの許可がおりませんでした。最終決戦の際に敵の中核であるベラ・ヘイローへ二機での暗殺を試みましたが失敗したようです」

「その後、ベラ・ヘイローの生存を確認した隊員たちは隊の中心であるアルキスたちの死亡を確信したことでヘイロー軍に無謀な突撃をかけて全滅だったっけか。やはり頭をいじっちゃうと行動が極端になるんだねえ」


 その言葉にはナスタシアも頷いた。

 デュナン隊はデュナン・オルトソードというかつての傭兵隊長を精神的支柱に仕込むことで混機兵キメラ実験の成功率を48パーセントにまで上げていた。精神の強さは獣機兵ビーストへの変異にも竜機兵ドラグーンへの変異にも影響を及ぼす。

 もとより鉄機兵マキーニは竜心石という媒介を通じて、乗り手と一体化して操作する乗り物だ。それはつまり擬似的な一個の生き物となったということであり、それを進化させた獣機兵ビースト竜機兵ドラグーンに変わるということは、より結びつきが強まるということでもある。互いの因子を繋ぎ、より意志の強い存在が支配権を握る。変異へのプロセスにおいて意志の強さは天秤を揺らす重石だ。

 デュナン隊は複数の魔獣の因子を埋め込む混機兵キメラの実験体であると共に、変異安定実験のモルモットでもあったのだ。そしてロイの前にいるナスタシアは彼らを洗脳した際に仲間であると刷り込んで隊に潜伏し、混機兵キメラ化と洗脳の経過観察を行なっていたのである。


「彼らは仲間意識が強く、元が騎士団だったことから野盗、傭兵の集まりであった獣機兵ビースト軍団とは馴染まなかったように感じました」

「なるほどね。レポートを見る限りはローウェンへの敵意を消したことが精神の不安定化を招いたようにも見えたけど……まあいいや」


 そう言ってからロイがニコリと笑ってナスタシアを見る。


「ところでさ、ナスタシアくん。君、ザッハナインが生き残ってるって話聞いてる?」


 その問いにナスタシアが息を呑み、眉をひそめる。そんな話をナスタシアは聞いていないし、であれば暗殺に送り込んだアルキスが裏切った可能性も……と、そこまで考えたところでナスタシアはロイが愉快そうな顔で首を横に振っていることに気付いた。


「多分君の想像していることとは違うと思うよ。どうもリミッターが切れて、混機兵キメラから混合魔獣キマイラ化したらしいんだ。で、それをベラちゃんが飼いならしたんだってさ」


 その情報をどうやって手に入れたのかを聞く意味はない。ロイの手と目は各地に存在しているし、またそれがロイに繋がっていることすらもほとんどの者は気付いてもいない。問題なのはまたしてもその名が出たことだ。


「また、ベラ・ヘイローですか」

「『また』だね。ムハルドを奪い、エルシャを取り戻し、そして次はモーリアンに行くつもりらしい」

「いかがなさるおつもりですか?」

「放っておいていいよ」


 その言葉にナスタシアがわずかに眉とわかる部位をひそめた。


「そう怖い顔をしないでナスタシアくん。可愛いお顔が台無しだよ」

「その言葉はハラスメント行為かと」

「はは、確かに」


 そう言ってからロイがトントンとナスタシアの前に詳細に描かれたいくつもの図面を置いた。


「それは?」

「彼らが巨獣兵装ビグスウェポンと言っているものだね。巨獣機兵ビグスビーストから兵装だけを外して獣機兵ビーストに接続する。出力こそ巨獣機兵ビグスビーストには及ばないが、それでも強力なのは君も戦場で実感したはずさ」

「はい。兵の数だけで押せなくなりました」

「うん。そういうこと。巨獣機兵ビグスビーストになった乗り手は自ら心臓化して人間ではなくなってしまうし、変異後は程なくして死んでしまう。けれども、こいつは違う。獣機兵ビーストで運用ができるし、乗り手の負担も大きくはない。やられたよね、完全に」


 ロイが興奮してバンと机を叩いた。


「けど、こちらでもようやく作れるようになってね。巨獣機兵ビグスビーストの製造コストを考えれば、そう多くは量産できないが……けれども、彼らがいたからこれができた。言ってみれば僕らは協力関係にあるようなものだ。それにね」


 ロイが肩をすくめて話を続ける。


「エルシャの最低限の戦略目標はクリアできた。むしろ本国としては獣機兵ビースト軍団を抑えられたことに安堵しているらしいよ。ま、良い実験場だったんだけど」


 現時点でのローウェン帝国の目標は、ドーバー同盟に与せず、力を温存していた北部のザラ王国とマザルガ聖王国への侵略であった。そのため南部においては獣血剤という餌を撒き、積極的に国々の力を削ぐことに注力していた。エルシャ王国もそのひとつだ。獣機兵ビースト軍団という野盗や傭兵上がりの者たちを起用し、支配するではなく荒らすことを重点に進めていた。

 同時にその過程においてロイは無数の獣機兵サンプルを使い、兵器開発を行ってきた。結果としてべへモスタイプが生まれ、ムハルドから技術を得た巨獣機兵ビグスビーストを投入し、混機兵キメラたちの運用実験も行った。


「ただ、ようやく目処もついたわけだし、そろそろ引き時だったのかもしれないね」

「目処がついた。では?」


 目を見開いたナスタシアにロイが頷いた。


「うん。僕用の魂力プラーナを抽出する機構を取り入れた新型の完成は近いよ」


 万能の力『魂力プラーナ』。それは敵を倒して奪うことが可能な、鉄機兵マキーニが進化する際に使用する一種のエネルギーの塊だ。用途はそれ以外には使用できないが、装甲でも武器でも、パーツの一部でも造り出すことができる。

 それをロイは抽出すると口にしたのだ。

 もとより彼にとってはローウェン帝国などどうでも良かった。

 ロイの目的は魂力プラーナ。賢者の石、アイテールなどとも呼ばれる高純度、高密度の始原の力。

 それは六百年前に鉄機兵マキーニを生み出したロイの同胞たちの目的と同じであった。鉄機兵マキーニは成長し、繁殖し、命を奪い、進化する。その過程において魂力プラーナを使用もするが、常に消費し続けるわけではないし蓄積され続けている。

 鉄機兵マキーニを生み出した者たちの目的は広まった鉄機兵マキーニから魂力プラーナを回収することだった。言ってみれば種を蒔いて作物を育てるのに近い。彼らにとっては魂力プラーナを必要な時に必要なだけ回収できれば良かったし、きっかけを与えれば人間は勝手に鉄機兵マキーニを増やしてくれる。お膳立てをするまでもなく、人間は元から殺しあう生き物なのだから。

 けれどもロイの同胞は根絶やしにされた。他の大陸より飛来した蒼竜王と、大神との契約により古代文明の技術の流出を嫌うイシュタリアの末裔たちの集団『賢人会』によって。

 そして、結果として鉄機兵マキーニだけが広まっていったのが今なのだ。


「ふん。蒼竜王はともかく、大神との契約はすでに千年前に終えているというのに……これだから臆病者たちは手に負えないんですよね」


 ロイがそうこぼす。それはあらゆることにポジティブに対応するロイにとっては珍しい反応であり、ナスタリアもわずかに目を細めた。


「とはいえ、だからこそ僕の計画は問題なく遂行できるわけですがね」


 そう言ってロイは窓の外に置かれている機体を見た。それこそが彼の望む新たなる鉄の巨人。

 鉄機兵マキーニより高性能で、獣機兵ビースト竜機兵ドラグーンとは違い数を増やすことが可能で、何よりもロイの意志によって機体から自由に魂力プラーナを得ることができるのだ。これがあと数百年ののちに大陸中で鉄機兵マキーニに代わって戦場の主役となれば、ロイの望みは叶う。すでに六百年に渡り鉄機兵マキーニが戦場を闊歩している以上、契約に違反して居ないことは歴然で賢人会は動くことができないし、またより強力な機体が生まれることはローウェン帝国の望みとも合致した。

 だからこそロイはその地位に居られるのだ。


「さて、楽しみですねえ。帝国はここから先も戦火を広げていくでしょうし、帝国が滅びようと人は戦いを止めることなどない。我が子『鋼機兵ハイマキーニ』は数を増やし、いずれ金色の蜂蜜プラーナの海を僕にプレゼントしてくれる。楽しみですねえ」


 そう言って笑うロイの視界に映った鋼機兵ハイマキーニ、それは黄金の装甲を持つウォーハンマーを持つ機体だった。


次回予告:『第305話 少女、始まる』


 今回はロイお爺さんの説明がずっと続いていて分かり辛かったかもしれません。なので今回出たお話の補足をここで行います。なんと……



ナスタシアちゃんは巨乳のナイスバディさんです。

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ナスタシアちゃんは巨乳、了解。
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