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第71話 エスコルヌ女子爵はサー・ポーロ士爵をざまぁする(2)

「ええ。わたくしが居を構えるノースランドはご存じの通り田舎町ですわ。そんな小規模なノースランドにとって此度の一件は、今後の領地経営すら左右する一大事業です」


「ふん、それがどうしたと言うのじゃ? ノースランドがワシのポロムドーサと比べてはるかに小さい町であることなど、もちろん知っておるわ」


「はい。ですのでサー・ポーロ士爵に限らず他の貴族の皆様の前で、予定の段階で大きなことを言ってしまい、その後に事業が上手く行かなくては合わせる顔がないと思いまして。それでこの計画がある程度の形になるまでは、できるだけ秘密にすることにしたのです」


「なっ! よくもいけしゃあしゃあと! つらつらと虚言を並べ立ておってからに!」


 サー・ポーロ士爵は怒り心頭でギリリ、と奥歯を噛みしめたのだが。

 エスコルヌ女子爵の言ったことは、理由としては筋は通っていたため、上手く反論することができなかった。


 つい感情的に(わめ)くだけになってしまう。


 サー・ポーロ士爵から論理的反論がないのを見て、十分に理論武装していないことを見て取ったエスコルヌ女子爵は、ここぞとばかりにさらに言葉を重ねていく。


 ただし、とても丁寧な口調だけは崩さずに。


 今回のいきさつを詳しくは知らない周辺領主貴族たちが、二人のやり取りを注視していることを、エスコルヌ女子爵はしっかりと理解し、意識していたからだ。


 現状でもエスコルヌ女子爵に味方する貴族が大半で、残りの少数は様子見の中立といった態度であり、サー・ポーロ士爵を擁護する者はほとんどいないのだが。


 それでも中立の貴族を、1人でも味方に変えておくに越したことはない。


「虚言とはとても心外ですわ。わたくし、そのようなつもりは決してございません」


「心外じゃと!」


 対してサー・ポーロ士爵は周囲の値踏みするような視線にも気づかず、感情のままに声を荒げてしまっていた。


「ええ。ですがお気持ちは十分に理解できますわ。サー・ポーロ士爵をはじめ領地経営に精通しておられる皆様から見れば、わたくしのやり方はきっと臆病風に吹かれた小さな子供のように映ったのでしょうね。本当にお恥ずかしい限りです。今後の領地経営の糧とするべく、必ずや良い経験としていく所存ですわ」


「む――、ぐ――」


 ああ言えばこう言う。

 こう言えばああ言う。

 敢えて己を下げる発言もいとわない。


 しっかりと理論武装してきたエスコルヌ女子爵に、最初から最後まで理路整然と理由を述べられてしまい、サー・ポーロ士爵は完全に言葉に詰まってしまった。


 するとその沈黙の隙間を縫うように、二人のやり取りを遠巻きに見守っていた貴族たちから、次々と声が上がった。


「なるほど。そういう理由で移転について黙っておられたわけですか」

「エスコルヌ女子爵はまだまだ若輩の身。失敗を過度に恐れる気持ちは理解できますな」

「なにせ全てが初めての経験でしょうからな。失敗も成功も、その全てがこれからの領地経営への良い教訓となることでしょう」

「同感です」

「むしろ少々の失敗は、若いうちにしておいた方がよろしいかと」

「失敗は若者の特権ですからな」

「今の話を聞いて、私も自分の若い頃を思い出して懐かしくなりましたよ」

「私もです」

「いやはや、若さというのは実に良いものですな」

「はははは――っ」


 といった具合に、エスコルヌ女子爵に味方するような声が――これみよがしに――次々と上がった。

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