罪深い主
先ほどから俺にまったく関心を示さなかった特待生たちが、殺気立っていることに気が付いたのだ。
皆、それぞれの視線で俺を睨み付けていた
どうやら彼らは俺を学院の秩序を乱す異分子と判断したようだ。
それは大いなる誤解なのだが、下等生ごときが同じ席に座るというのが耐えられないと見える。自尊心が高そうだった。
しかし、一般生のヴォルクと違うところはすぐに難癖を付けてこないことだろう。各自、すぐに視線を戻す。それぞれの作業に戻る。
季節はずれの入学生など、歯牙にも掛ける必要がないと思い直したのだろう。
その判断は正しい、と心の中で彼らを賞賛するが。そんな中、ひとりだけ敵愾心を外さない人物に気が付く。
そのものは真っ赤な髪が印象的な生徒だった。
その髪と同様の瞳で俺を睨み付ける。
その瞳にはたしかな殺意が宿っていた。
またその唇からもその殺意は確かめられる。
「……僕のアリアローゼ姫とあんなに親しくするなんて……絶対に許さない……」
「…………」
どうやら彼は我が主、アリアローゼ姫のファンのようだ。まったく、我が主は罪深い。その魅力で学院中にファンを作っているようだ。
隣の席でにこにこと微笑むお姫様。
俺の心を知ってか知らずか、いや、確実に知らないだろうが、彼女は俺と席をくっつけると、教科書を開く。まだ教科書が届いていない俺のための配慮だが、それも赤髪の特待生の怒りに火を注ぐ。
「リヒト・アイスヒルク、絶対に殺す」
授業の間中、呪詛の念は届く。
右に心優しい姫様、左に殺意に満ちた特待生。両者暑苦しいことに変わりなかったが、今、この瞬間から俺の学院生活が始まる。
実は今まで同じ世代と机を並べて勉強したことがなかったから、軽い高揚感があった。
入学までに色々ありすぎたが、せっかく、このような機会に恵まれたのだ。
周囲のことなど気にせず勉学に勤しむことにした。
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