自己紹介
同じ寮のクリードであった。
彼はにこやかに手を振っている。ぶんぶんと。
これはこれで恥ずかしいので無視し、教室の様子を観察する。
男女で反応がくっきり分かれているが、教室の後方と前方でも分かれているような気がする。特に一番後ろの列の生徒は、俺のことを完璧に無視し、教科書や本を読んでいる。
彼ら彼女たちだけ、制服に見慣れぬ紋章があることに気が付く。
(……あれが特待生か)
この学院はクラス制で、下等生も一般生も特待生も同じクラスに所属する。――といっても午前中の授業だけ同じで、午後の授業はそれぞれ違う教室で受けるのだが。
どうやらこの教室では、下等生が前列、一般生が中列、特待生が後列と決まっているようだ。
この国の縮図、身分制度を感じる光景だった。
まあ、俺は下等生だから、近寄らずに済むという点ではありがたい配慮だが。
そのように前向きに考えるが、そう考えないものもいるようで――。
一緒に教室に入ったお姫様は思わぬ提案をする。
「先生!」
突然、元気よく手を挙げるアリアローゼに驚く女性教師。
「なんですか? ミス・アリアローゼ」
「突然の入学生で前列と中列の席がすべて埋まっています。リヒト様の席がありません」
「そうですね。たしかに……」
見ればたしかに席はどこも埋まっている。
アリアはにこりと微笑むと、提案する。
「そこでなのですが、幸いとわたくしの隣が空いております。よかったらリヒト様の席をここにされては?」
その提案に激震が走る。
女教師は顔を蒼くする。
「し、しかし、席次は成績順と決まっているので」
「当座のことだけ。もうじき、席替えの季節がやってきます。それまでですから」
ほんわかしている割には意外と押しが強い。
そんな感想を抱いていると、彼女は俺の手を引き、自分の席に連れて行く。
その光景をぽかんと見るクラスメイト。アリアローゼの行動に女子は反感を持ち、男子は虚を突かれている。
どうやら彼女は男子から人気があったようで、悔し涙を流すものもいた。
「クラス中を敵に回す主従だな……」
我ながら呆れてしまうが、苦笑いも永遠には続かない。
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