圧倒的実力差
そう思った俺は、ヴォルグを倒すことにした。
それも容赦なく、一切の手を抜かず。
どれだけ実力が離れているか、ヴォルグと彼に類する生徒に分からせるため、二度とこのように絡んでくる生徒が現れないようにするためである。
快刀乱麻を断つかのように呪文を詠唱する。
その速度はヴォルグの一〇倍、術式はさらに高度で複雑、この食堂で聞き取れるもの、理解できるものは皆無だ。傍目からは俺が意味不明な言語をつぶやいているように見えるかも知れない。しかし、俺の水球はただの水球ではない。幼き頃から研鑽を重ね、威力を高めた水球だ。ヴォルグのとは比べることもできないほど高性能だ。
〝大きさ〟がではない。〝質〟が相手を圧倒しているのである。
俺目掛けて飛んでくる水球の大きさは人体の胴体部分くらいだろうか。一方、俺のそれは頭部くらいの大きさだ。
しかし、威力がまったく違う。
ヴォルグのそれが小川のせせらぎだとしたら、俺のそれは急激な滝のようなものか。それくらいに差があった。
そのように心の中で解析すると、腰の神剣は(ちょっと吹かしすぎじゃない?)とツッコミを入れてくる。彼女は人の心まで読めるようだ。
「大言壮語は俺らしくないか」
自嘲気味に言うと、目前の決闘に集中する。ヴォルグの水球のど真ん中に己の水球をめり込ませる。
「馬鹿め! そのような小さな球で挑むなんて。物理法則もしらんのか?」
噛ませ犬らしい言葉を漏らすヴォルグ、その表情は醜く歪んでいる。
「物理法則を語るのも結構だが、魔術の勉強をもっとしろ。水球の強さは大きさじゃないんだよ」
諭すように言うと、俺の水球がヴォルグの水球を穿つ。やつご自慢の大きな水球の中央に穴が開く。その光景を見たヴォルグは表情を失う。
「な、なんだと!?」
馬鹿な、と続く。勉強だけでなく、現状認識能力も劣っているようだ。
現実を言語化して説明する。
「おまえの水球は破壊されたんだよ。俺の水球に」
事実、やつの水球は四散し、俺の水球が宙に漂っている。
「ば、馬鹿な。俺は一般生の上位クラスだぞ……」
「相手が悪かったな」
「あ、有り得ない。こんなこと有り得ない!」
ヴォルグはそう叫ぶと、再び、水球の魔法を唱え出す。そのことを批難する周囲の生徒。通常、決闘で水球を破壊されたものはその場で負けを認めなければいけないのだ。
「う、五月蠅い! 俺は一般生だ! 貴族だ! 平民の下等生などに負けるものか!」
その言葉、汚辱に満ちた言葉に、周囲の生徒の中からも反感の声が上がる。この食堂には下等生も平民も無数にいるのだ。
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