一般生との決闘
時期外れの入学生、それに朝から食欲旺盛だから目立つのだろう。
食堂が軽くざわめく。
やれやれと思いつつ食堂の席を確保しようとするが、俺が席を引くと、その先をさらに引くものがいる。要は俺を着席させる気がないようだ。嫌がらせというか、明らかに喧嘩を売られているようで。
「席を返してくれないか?」
控えめの苦情を入れると、席を奪った生徒はにやにやと言い放つ。
「席を返せだと? この薄汚い下等生がなにか言ってるぞ。しかも人間の言葉を放ってやがる」
取り巻きの連中は腹を抱えて笑う。
どうやらこの男は俺が下等生なのが気にくわないらしい。
「この寮は一般生と下等生が住んでいると聞いた。ミス・オクモニックはこのふたつに身分差はない。受ける授業に多少の違いはあるが、三日月寮では平等と言っていたが?」
「は! 相変わらず口清いことしか言わないな、あの行き遅れ寮長は。たしかに学則でも寮則でも一般生と下等生は平等に扱うべし、とある。だから同じ寮に押し込められているんだ。しかし、それは建前だ!」
「ほう」
興味なさげに言う。
「おまえは一般生と下等生、卒業後の就職がどうなっているか、知っているか」
「寡聞にして知らないね」
「ならば教えてやろう。一般生の就職率は六三%だ。残りの三六%はあえて就職しない。貴族として領地を継ぐ、嫁ぐものもいるからな。実質就職率は九九%だ。一方、下等生の実質就職率はそれを遙かに下回る八〇%だ。これが世間の評価なんだよ」
「なるほど、それが世間様の評価というやつか。覚えておくよ」
暖簾に腕押しと感じたのだろう。一般生は語気を強める。
「おまえたち下等生は劣等種なんだよ」
一般生はさらに声を荒げる。
「まだ、分からないのか! おまえたち下等生は立って飯を喰えっていってるんだよ」
「それはできないな。意外と育ちがいいのでな。粗野な真似はできない」
「なんだと!? 貴様、一般生の俺に逆らうのか?」
「やっと気が付いてくれたか」
酸味と皮肉に満ちた回答をすると、一般生の男は怒り狂う。
椅子を投げ飛ばしてくる。
さっと紙一重で避けると、朝食をテーブルの上に置く。
一般生の生徒に名を尋ねる。
「おまえ、名前は?」
「まずは自分から名乗れ、下等生」
「それは失礼した。俺の名はリヒト。リヒト・アイスヒルク」
「下等生にしては上等な名前だ。喧嘩を売られたからにはこれから決闘を行うが、おまえが負ければそのご大層な名前の間に、糞と付けろよ」
「ああ、ついでにおまえの母親の名前も付けるさ」
その挑発に男は顔を真っ赤にする。
「いい度胸だ。俺の名はヴォルク! ヴォルク・フォン・ガーランドだ。男爵家の跡継ぎ」
「お貴族様でしたか、それでは決闘をするが、さすがにここで騒ぎを起こすのは不味いと分かるくらいの知能は持っているんだろう?」
「まだ言うか!?」
「おっと、怒らないでくれ。育ちはいいが、口は悪くてね。そうだ。こうしないか? 今、この場で《水球》勝負をするというのはどうだ?」
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