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料理の腕前

 結論から言えばアリアローゼの弁当は美味かった。


「なんだこれは……」


 驚愕の表情を浮かべる俺。


 ハムとレタスのサンドウィッチはちゃんとバターが塗られ、レタスの水分がパンにしみこまないように配慮されている。さらに切り方も絶妙で食べやすい。素材が吟味されており、それを一〇〇パーセント生かしてあるのだ。


 また精がつくようにと用意されたローストビーフ。火加減が最高だった。中まで綺麗に火が通っているのに生肉感も残っている。最良の火の通し方をしている証拠であった。

 

この料理のレベルは、今朝方食べた朝食に匹敵する。いや、それ以上だ。


「…………」


 ちらりとアリアローゼの姿を見る。


(……さすがにこれは屋敷の料理人に作らせたんだよな)


 そのような疑惑の視線を送っていたのだが、それに反論するのはメイドのマリー。


「ふふふ、先ほどは胃薬と整腸剤を用意しなさいなんて言ったけど、その料理を食べたあとでも同じ台詞が言える?」


「……まさか。でも、これ、料理人、もしくは君が作ったんだろう?」


「マリーは家事特化型メイド。料理は不得手なの。もちろん、お手伝いはしたけど、道具の用意をしたり、卵を割るくらいよ」


「……卵サンドに殻が入っていたのは君の仕業か」


「てへぺろ♪」


 舌を出すマリー。

可愛くないので話を続ける。

「本当にこのレベルの弁当を王女様が作ったのか」


「うん。アリアローゼ様は料理の天才だからね。最近はご自身でする時間も機会もないので控えているようだけど、王女はもともと、王都の下町で暮らしていたから」


「下町で?」


「うん。アリアローゼ様は妾の子。正妻に疎まれて、暗殺を逃れるために家臣の家で育てられたんだ」


「…………」


 沈黙してしまったのは俺と境遇が似ているからだ。


「そこで家事や料理を一通り覚えたんだって」


「なるほどな。道理で美味いわけだ」


 最後のサンドウィッチを、コンソメスープで飲み干すと、王女に礼を言った。


「姫様、こんなに美味しいサンドウィッチ食べたことがない。ありがとう。最高の昼食だった」


「うふふ、お粗末様でした」


 アリアローゼはそう言うと、試験までまだ時間があるので中庭を散策しないか、と提案してきた。

 悪くないのでその提案に従おうとするが、メイドのマリーがついてこない。


 なにごとかと尋ねると、彼女は小声で、

「馬に蹴られて死にたくないの」

 と言った。


 人の恋路を邪魔すると馬に蹴られることを指しているのだろうが、まったく、余計な気遣いである。


 面倒なのでそのまま置いていくと、アリアローゼと中庭にある噴水に向かった。

「面白かった」

「続きが気になる」

「更新がんばれ!」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 弁当テンプレ回避 下町幼馴染のテンプレは残ってるかな?
[一言] 一体いつから───── ・・・・・・・・・・・・・・・・ 料理が家事ではないと錯覚していた?
[一言] 家事特化型メイドで料理が不得手ってそれ特化出来てないですよね? 料理も家事ですし…
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