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外伝 スピード違反

 ラトクルス王国第三王女、アリアローゼ・フォン・ラトクルスの護衛役、リヒト・アイスヒルク。


 リヒトは武芸百般に通じ、教養豊かで、底知れぬ魔力の持ち主であったが、器用な人物としても知られていた。


 貴族出身でもあるにも関わらず、機械や道具類の整備も出来る。馬車まで動かせるので、王女の護衛役としてぴったりであった。例えば王女専属の馭者が風邪で休んでいる日などはリヒトが代わりに馬車を操縦することも出来るのだ。


 その日も所用で王都郊外に出向いていたアリアローゼを向かいに行くため、馬車の整備をしていた。その姿を見て同僚のマリーは感心する。


「てゆうか、すごいわね、リヒト」


「なんのことだ?」


「剣や魔法だけでなく、そんな細々としたことも出来るなんて」


「エスターク家では半分使用人みたいな扱いだったしな。彼らと仲良くしているうちに色々なことを教わったんだ」


「なるほどねえ」


 納得するマリーだが、懐から懐中時計を取り出すと青ざめる。


「げ、この懐中時計、壊れてる……」


「つまり時間が間違っているってことか」


「そうよ。今すぐ迎えに行かないと、今宵の晩餐会に間に合わない」


「ならば超特急で馬車を出すか」


 調整用のスパナを投げると、そのまま馬車に乗り込む。マリーも慌てて乗り込んだ。


 揺れる車中――。


「て、てゆうか、早すぎるんですけどー」


「この速度じゃないと到底間に合わない」


「あんた、法定速度って知ってる?」


「生憎と北部の田舎者育ちなものでね」


 そのように返すと、後方から猛スピードで馬が見える、敵襲かと思ったが、白と黒を基調にした旗から察するに、王都の治安維持部隊だろう。


「騎馬護民官か……」


「ほうら、見なさい。逮捕されるわよ。もう間に合わない」


「安心しろ。俺に作戦がある」


 そのように言い放つと、リヒトは彼らを欺くことにした。


「免許証を見せろ。四〇キロオーバーだ」


「無免許運転だ」


「なんだって!? 無免許なのか。これはあんたの馬車なのか?」


「いいや、盗んだものだ」


「な、貴様、泥棒か!?」


「違う。盗賊の類いだ。持ち主の〝死体〟は馬車に仕舞ってある」


 護民官は顔を青ざめさせ、魔法によって護民官の応援を呼んだ。


 マリーも同様に顔を青ざめさせているが、余計なことを言わないように言い聞かせる。



 二〇分後、駆けつけた応援護民官は高圧的に対応する。


「貴様、無免許運転だそうだな!」


「免許証ならばここにありますよ」


 隠しておいた免許証を見せる。


「……この馬車は盗品だろう? 持ち主を殺して隠しているそうだな」


「とんでもない。馬車を隅々までお探しください。メイドしかおりません」


 ちーっす! と挙手し、怪しいものではないことを伝えるマリー。護民官は馬車中を捜索するが、当然、なにも見つからない。


「……おかしいなあ。同僚のやつはおまえが無免許で、馬車の窃盗、殺人まで犯していると言っていたのに……」


 同僚を見つめる護民官。彼は狐につままれたような顔をしている。


 リヒトは軽く口元を歪ませるとこのように言い放った。


「とんでもない嘘つきですね。もしかして彼は俺がスピード違反をしていた、とも言っていませんでしたか?」

 

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[気になる点]  職務に忠実な騎馬護民官に、スピード違反した側が冤罪を掛けられたと訴える胸糞話
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