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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第二章 西へ

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第九十話 油断

 

『女神様の言葉通りなら私たちのうちの一人が中華のダンジョンを統べることになるらしいよ。』


 どこか崩れた笑顔で行火は言う。

 彼女もおそらく、英彦山三姉妹と同じように人に絶望しながら死んで、そして女神によってダンジョンマスターに転生させられたのだろう。女神のことを話す彼女には狂信の気配があった。


『そうだな。ここが頂上決戦だ。お前たちのダンジョンマスターが誰なんだ?あれか?その小娘たちで一人のダンジョンマスター扱いなのか?』


 筋肉質の男は少し首を傾げた。

 それはそうか。敬愛する女神に最後の一人になるまで戦えと言われているのに、誰かと協力するマスターはありえない。そんな先入観のせいで、真実を見抜けていないようだ。


「ああ、その通りだよ。」


 阿弥那が胸を張って答える。

 堂々とする。そして疑念を抱かれないようにする。


 この場を見ているであろう女神に余計なことを口出しされるのが嫌なのだろう。

 もし三人で戦えってことになったら困る。


 特に阿弥那にはその意識が強いはずだ。妹たちを守りたいと言う思いが溢れ出ている。


『少々めんどくさいな。まあいい。まずは眷属を破壊してからにすれば問題ない。興盛きょうせい、参る!』


 筋肉質のダンジョンマスターは、中国拳法らしき構えを取ると、自分の呼吸を練り上げ始めた。

 見かけ倒しじゃなければ非常に強そうだ。


 しばらく三つ巴で睨み合う。

 龍鳳が「操心」を使ってこないのは、隙になるからだろう。

 おそらく、俺たちがここに来る前に互いに軽くぶつかって力を図ったと思われる。

 そして、なんらかの理由で「操心」を無効化された。

 そうでなければあの興盛と言うダンジョンマスターがここに敵として立ってはいないだろう。


 心理系技能無効程度の能力なら良いんだが。ステを見てみるか。


 グレイトグリッドドラムゴリラ

 Lv351

 職業「大ボス」

 技能「ドラミング」「ドラムアタック」「ドラムアッパー」「地震」「強心臓」「タフネス」


 ゴリラの技能に「強心臓」ってあるな。もしかしてこれか?

 いやいやいや。それだけで防げたら苦労はしないって。

 ⋯⋯でも、技能って強いやつはとことん強いよな。グレイトになったゴリラに増えた技能は「強心臓」「タフネス」。

 どちらも、身体能力を向上させるくらいにしか役には立たなそうだけど、頭の片隅には置いておこう。

 他のは、近接戦闘用技能と前に苦しめられた地震だ。


 ドラミングはまあ、ご自由にお願いします。




『どうした?来ないのか。ならこちらからいくぞ。』


 興盛が足を踏み出した。捻りながら足を強く踏み込んで俺たちの方に近づいてくる。

 漫画で覚えた知識によると、震脚と呼ばれる歩法だ。

 踏み込みの分だけ威力が高まると言われている。


『ウホウホー!』


 その後ろで、ゴリラがドラムを叩きつけ始める。


 これはドラミング+地震の最強コンボだ。地面は揺れ、衝撃波が空気中を伝わってくる。以前の俺では近づくこともできなかった。


 興盛は地震の揺れを震脚による踏み込みで相殺している。こちらは地震で態勢が崩れて迎撃体制が維持できていない。


 ダンジョンマスターとモンスターの近接と遠距離を入れ替えた形のバトルスタイル。

 その異色のスタイルは、だが、それだけにかなり手強い。


「援護は頼む。」


 そう、それでも俺が挑む。挑まなければならない。

 近接を請け負った前衛として、俺の成長をサトラに見せる。


 ここで彼女に任せるなんて、口が裂けても言えない。


 任せるのはもう終わりだ。


 ここからは。


「こいつは任せろ。」


 俺の番だ。


 興盛は、ダンジョンマスターなだけあってレベルがない。こちらの気配察知でも実力は不明瞭だ。

 だが、随分と近接戦闘に自信があることはわかる。


 ならこちらもそれ相応の力で迎え撃つのみだ。

 技能「加速」を使用。時間の流れがゆっくりになっていく。



 独特の歩法は、こちらに予備動作を悟られないため。

 そして、その一撃の威力を高めるため。


 一発でも食らえば吹き飛ぶ。

 なら食らわなければ良い。


 右手に千鳥、左手に紅葉刃を構える。


 帯電した雷属性の刀と、毒を付与する短剣。対人戦で考えればオーバーキル。

 だが、それほどの備えは必要だと俺の勘が告げていた。


 地面の揺れに気を取られなければ、余裕でかわして、こちらの一撃を叩き込める。

 技能「加速」はそれほどまでに反則気味だ。


 だが、狙いが定まらない。地面が波打って平衡感覚を無くそうとしてくる。

 ゴリラの援護はしっかりと効いている。


 背後から火球が二発飛んで行った。

 レンさんとサトラだろう。オーバーキルか?


 いや。


「嘘だろ⋯⋯ ?」


 俺は衝撃のあまり、呆然とした。


 火球を踏み込みの衝撃だけで払いやがった。


 どれだけの踏み込みならそんなことが可能だって言うんだ。


 おそらく彼は、ダンジョンポイントを自分の身体能力強化に注ぎ込んでいるタイプと見た。


「くっ。」


 地震が強すぎる。

 両足ではとても立っていられない。

 千鳥を地面に突き刺す。


 紅葉刃で仕留めてやる。


 興盛のアッパーをしっかりとかわして、その腕に傷をつける。


 紅葉刃の毒は強力だ。俺の勝ちだな。


 わずかな油断があった。興盛の体に隠れていたもう一方の足から放たれた膝蹴りが、俺の腹を直撃する。



「ごぉぅっ!?」


 腹にやばい音が響いた。


 体が浮く。


 この威力はやばい。意識が、飛ぶ。


 閉じかかった俺の目に、崩れ落ちた興盛の姿が見えた。


 相打ち、か。サトラ、レンさんあとは、頼む。


 俺は、意識を失った。

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