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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第二章 西へ

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第八十五話 打ち明ける

 俺たちは阿弥那と社歌の待つ本拠地へ急いだ。


 あそこは、阿弥那の用心深さが結実した隠し部屋だ。

 基本的に安全なはず。



『仁、あれ。』


 一緒に走るサトラの指差す先には、赤い領域が川のように広がっていた。

 とてつもない高音に肌がチリチリと焦げる。

 あれは、マグマか?


 赤い領域は徐々にその範囲を増やし始めている。


 ステージギミックか?

 おそらくそうだ。


 未だ速度はゆっくりだが、最終的にこの辺り一帯を埋め尽くすだろうことは想像に難くない。


 あの神様が焦れてきたのだろう。

 そんなに気が長い方とも思えなかったしな。


 このままいくと、マグマがどんどん上がってきて、隠れているマスターがいたとしても、外に出ざるおえなくなる。そして、さらなる選別を行われるだろう。そういう魂胆が透けて見える。


 逃げるにせよ戦うにせよ、素早い判断が求められるだろう。


 なんにせよ、一旦戻ってからだ。


 俺たちはさらに足を早めた。


 ●


『面白かったー!』


 水門に出るなりサトラが笑顔で言う。


 サトラは水の中がかなり性に合っているみたいで、レンさんを上回る速度で泳いでいた。


 俺は正直、そこまで得意な方じゃなかったのでレンさんに掴まった。


 千樹はサトラが背負っていた。


 二人でいる間に懐いたのか、サトラから離れようとしなかったためだ。


 間近で彼女の闘いぶりを見たのなら無理もないことだろう。


 サトラの戦闘は圧倒的だからな。




「ようやくもどってきた。しんぱいしたんだからね!」


 社歌があっという間に俺の側に寄ってきた。


 懐かれているのはサトラだけじゃないと言うことだ。


「ああ。大丈夫だったぞ。」


「とりあえず皆無事で何よりだ。ともかく情報共有から行こう。」


 阿弥那の言葉に頷く。


 帰り道は戻る速度ことを優先し、最小限しか連絡していない。


 ここなら水脈に守られてしばらくは安全だろう。社歌たちの情報も気になるしな。


 俺たちの話と、サトラの話と、阿弥那の報告。その三つを共有した。

 阿弥那と社歌はこのフロアのほとんどの場所を確認したようだ。なかなか有能だと言えるだろう。


「とりあえず礼を言おう。妹を助けてくれてありがとう。」


 サトラに対して阿弥那は頭を下げた。


『いいよー。その子がひっついてくれたから守ってただけだし。』


 サトラの言い分は、ある面で、残酷だった。


 もし、千樹に全力で守られようという意思がなければ、見捨てていたのかもしれない。


 流石に、そんなことはないか?

 眷属扱いのことを考えないわけがないから、おそらく照れ隠し的な側面が強いのだろう。


「こわかったんやからね! ⋯⋯ でも、あみだはどうしてそんなこというん? あのことをうらんでいるんじゃないん?」


 千樹は恐る恐る尋ねた。


 そうだ。彼女たちは、お互いがお互いの誰かを裏切りものだと思っている。

 強盗に襲われて、殺されたという経験。その中の決定的な裏切りが、彼女たちの運命を死へと誘ったと、そう考えている。そのことを考えれば、相手も同じように自分を恨んでいるという思考に陥ってもおかしくない。


 だからこそ、千樹は、阿弥那を怪訝けげんな目で見つめている。


 恨む相手を気遣う。その意味がわかっていないようだ。


 そういえばと俺は英彦山ダンジョンの配置を思い出す。


 南岳直下に社歌のダンジョン。中岳直下に千樹のダンジョン。そして北岳の直下に阿弥那のダンジョン。


 千樹は、社歌と阿弥那その双方に自分のモンスターを仕掛けて戦っていた。


 どちらにも憎悪を向けていないと行わない。


 その彼女だからこそ、阿弥那の心配は驚きに繋がったということだろう。


 社歌の方は、二人でいる間に何か教えられたのか、そこまで驚いている様子はない。

 平和に解決してくれると良いんだけど。



「⋯⋯ 。私は君たちを恨めない。逆に恨まれても仕方ないと思っているよ。」


「それってつまりどういうことなん?」


 猜疑心にさいなまれたように、千樹は目を細める。


「まあ、あれだ。君たちの言う裏切り者は私だ。」


 覚悟を決めたように、阿弥那はそう切り出した。


 良いのか?

 この前彼女が話してくれた時には、俺に助言を求めていた。

 少なくともそのまま真っ直ぐに話すような雰囲気ではなかった。


 どんな心境の変化があったんだろうか。



 俺は緊張してその結果を見守る。


 千樹は、呆気にとられたように口を開けて固まっていた。



「ほんとなん⋯⋯ ?」


 信じられないように彼女は言葉を発する。


 社歌は⋯⋯ ?


 罪悪感に塗れた表情で、彼女は二人を見守っている。

 やはり先ほどの二人だけの時間になんらかのやりとりがあったのだろう。


 だからこそ、今の社歌には二人の様子を観察する余裕がある。


 千樹は信じたくなくて、それでも信じるしかない。そう言う表情をしていた。



「そんな⋯⋯ 。」



 誰か一人に責を負わせて、ただ自分の憎悪だけ募らせればよかった。

 そんな状態から、ただ一人を恨む。その状態に移行する。


 それは、おそらく彼女が思っていた以上に乖離かいりがあった。


「私が、電話を掛けた。私はそれでよかったと思っている。あのままにしていても、どうせろくな結末を迎えなかっただろうから。私はそう結論付けている。」


 強盗の目を盗んで、外に電話を掛けて、それが強盗にバレて三人とも殺された。


「あんたがそうしなければ、わたしたちはころされてなかったんやけん!」


「ああ。それはその通りだ。さあ、わたしを恨んでくれ。存分にな。」


 阿弥那は千樹を真っ直ぐに見つめた。









なぜだか伸びてるので、面白かったら、広告の下の星ボタンを押してみてくださいと言ってみます。

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