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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第二章 西へ

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第七十三話  出撃

 社歌の見せた表情が気にかかるけど、ゆっくり追求していられるような状況でもない。

 阿弥那の出した地図は刻一刻と変わっていく。敵を示す赤い光点が移動していく。まるでゲームの地図のようだ。おそらく阿弥那の趣味だろう。



 ダンジョンマスターの持ちポイントは時間により増加するシステムらしいので、光点は徐々に増えていく。

 こちらの哨戒部隊も増やすことは可能だけど、確実に他のダンジョンマスターの方が多い。


 このまま放っておけば徐々に追い詰められていくことは確かだ。

 確実な対処手段は、他のダンジョンマスターの息の根を止めることだ。

 増殖の起点を一箇所止めるだけでもずいぶん違うだろう。


 今まで戦った相手は、ゴリラ、蜂、蠍、バッタ、幽霊。

 基本的に自らの得意な種族を生成しているのだろう。各ダンジョンマスターにはコストが相対的に安い種族がいるらしい。このダンジョンバトルには他マスターとのリソース勝負の側面もある。割高な種族をわざわざ作るメリットはどこにもないはずだ。


 つまり社歌と阿弥那も仏人形シリーズを生み出すのが最適解だ。

 阿弥那は、この拠点を防衛するための地形操作。社歌は偵察人形の生成が一番必要な仕事だろう。

 現状維持だ。


 この二人はこれでオッケーだ。後は俺とレンさんが何をするかが問題か。


 一番いいのは出撃することだろう。

 ほとんどの相手を二人揃えば正面から撃破できるはず。

 レベルが上がった相手でなければ大丈夫だ。

 それに、こちらのレベル上げという観点から見てもモンスターを撃破していくのは理に適っている。


「阿弥那、俺たちが離れていても連絡は取れるか?」


「どうやってレンがお兄さんたちを見つけたと思う? 眷属扱いの相手には念話が飛ばせるんだ。」


「なるほど。社歌、やってみてくれ。」


「どうすれば⋯⋯ ?」


「⋯⋯ 。スクロールして一番下にある。」


「っ⋯⋯ 。ぁりがとぅ。」


 まだ気後れがあるのか、社歌の返事は小さかった。

 心は痛むが、時間が解決してくれるように祈るしかない。

 彼女たちがいつか正面から向き合える日が来ると良い。


 ーいまあんたのこころにちょくせつはなしかけてるよー


「どこで仕入れたんだその語彙。」


 ーへん?ー


「間違ってはないんだけどな⋯⋯ 。」


 まあいいか。


「俺とレンが外に出て、敵の数を減らしてくる。社歌はサトラが見つかったら教えてくれ。後、任意のダンジョンマスターの居場所がわかっても同様だ。」


「むずかしいよ。」


「ひらがなで喋ったほうが良かったか?」


「そういうことじゃないもん! こどもあつかいしないでよ!」


 腰に手を当てて怒りを再現している。ただ可愛いだけだ。

 どうみても子供なんだけど、指摘しないほうがいいか。


 何はともあれ頭を撫でた。くっ。機会があるごとに彼女の頭を撫でてしまう。

 なんだこの感情は。これが父性というやつか?



『私と一緒に戦ってくれるの? 直方仁。』


「力を貸してくれ。」


『もちろん。私はあなたのヒロインだからね。』


「それはちょっと言い過ぎだ。」


『じゃあ言い直そうか。私はあなたのヒーローだ。』


「もっとおかしくなってる気がする。」


『ヒロインと言ってくれるのは嬉しいけど、私は守られるだけの存在じゃないからね。ヒロインというよりヒーローの方が適切だろう?』


 彼女は完璧なウィンクを送ってくる。


「そんなことはない。日本では戦うヒロインが主流だからな。レンさんがヒロインでも何も不思議なことじゃないさ。」


『どう抵抗しても女の子扱いしてくれるね君は。』


 そう不満そうな口ぶりをする彼女の唇は微笑みの形を作っていた。



 ⋯⋯ 可愛いんだよな。普段は凛々しいのに所々で女の子らしさが滲み出ているの、魅力的すぎる。



「イチャイチャするのはやめてほしいな。ともかく水門を開いておくから、そこから脱出してほしい。」


 ダンジョンの方に通路を開くのはリスキーということだろう。


 納得できる。

 こんなことなら耐水性の服を持ってくるんだったか。


『私の服の予備を着なよ。撥水性だし動きやすいよ。』


 レンさんは軍服の下にラバースーツ的なものを着ている。

 ⋯⋯ 言葉に甘えるべきかもしれない。


「そうします。」



『ちょっと恥ずかしいね。』


 彼女は照れたように笑った。



 緊急事態なのでセーフと心に言い聞かせながら彼女が差し出したラバースーツを身に纏った。


「胸があれですけど、悪くないです。」


 そこだけ不恰好なのがネックだが、俺の身長でも容易に入るほど伸縮しやすい素材でできていて、着心地が良い。ラバースーツだけだと変態チックな格好なのには目をつぶろう。今更だ。


 それじゃあ、迷宮へ戻るとしよう。


「じん、もどってきてね。」


 社歌は不安そうに俺の腕を握った。


「約束しよう。必ず帰るさ。」


 今できる最善をここで行う。

 それが俺にできる精一杯だ。


 撫でる力が強すぎて社歌の髪をくしゃくしゃにした。ちょっと自分でも不安なのかもしれない。


「まあ、気を張りすぎないようにね。撤退してきてもいいからさ。」


 阿弥那が緊張をほぐすように言う。ほんと彼女は老成しているな。



『よし、じゃあ、行こうか直方仁。私たちの冒険へ。』


 レンさんは笑顔で手を差し伸べる。


 ワクワクを隠しきれないその様子に、俺も同じような気持ちになって、しっかりとその手を握りしめた。



「ああ。出発だ。」





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