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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第二章 西へ

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第六十八話 こたつは必要経費(澄んだ目)

 俺たちの期待を一心に受けただけあって、ドール・ストーンは強かった。

 鈍重な動きだが、確実に相手の急所に拳を入れている。モンク型の人形なのかな。寡黙で素敵だ。


 最初は指など全く握っていなかったのに、気がついたら重い拳がヒットしている様はある種の芸術かもしれない。揺れる地面に少し手間取っていたみたいだったが、間も無くコツを掴んだのか、滑らかに戦い始めた。

 素直に強い。



 鈍い動きをしていたマリスゴーストが倒れ、ストーンさんのレベルが1上がった。レベルアップ早いな。

 ひょっとして、ここでの戦闘で得られる経験値ってボーナス入ってたりするのか?


 そうだとすると、あのゴリラが一瞬でレベル200になっていたのにも納得がいく。

 あの女神が何かしたんだろう。ダンジョンの大元となったのは彼女だろうし。

 推測をあたかも真実のように語ってしまった。説明に最適だったから仕方ない。


 つまりはレベリングに最適じゃないか。

 問題は俺のレベルが適正レベルに達していないことだけだ。サトラがいればなあ⋯⋯ 。

 何度目かわからないことを考えてしまう。


 建設的じゃないことは考えるべきではない。

 まだサトラとは合流できていないんだ。


 今一番考えなくてはいけないのはあのゴリラの地震をどうやって止めるかだ。

 そろそろ慣れてきたとはいえ、移動すると確実に転ぶ。そんな状態ではなにもできない。


 幸い、地震を使っている間はあちらも動くことはできないようだ。どんだけ地震を使いたいんだよ。

 そろそろ飽きてくれ。


 坂の上にグリッドドラムゴリラ。

 坂の下に俺と社歌とドール・ストーンがいる。


 向こうはむやみやたらにドラムを叩きながら地面を揺らしている。

 バンドでドラムソロをやり続ける厄介男みたいな。


 技術が向上したのか、地震にさっきまで使っていたドラムからの衝撃波も混ざり始めた。

 二つの技を同時に使うなんて反則なんだよなあ⋯⋯。


「どうにかしてよ。」


「そううまくいったら苦労はしないんだよ。てか社歌こそなんとかできないのか?」


「むり!」


 胸を張るな胸を。


 しかしこのままじゃまずいぞ。また何時さっきの幽霊が現れるかわかったもんじゃない。

 それに、衝撃波の命中が安定してきた。

 じっとしているだけでは躱せない。かなり脅威だ。


 Lv200にしてはまだマシかな⋯⋯ ?


 とはいえジリ貧には変わりない。


 壁から水滴がポツリと落ちた。



『ここだね!見つけたよ直方!』


「レンさん?!」


 さっきは幽霊がやってきた通路の方から金髪を輝かせてレンさんが駆けてきた。合流できたなら僥倖だ。



『なんでもいいから地面に穴を開けて!』


 レンさんは必死な様子で叫ぶ。よく見れば、レンさんも後ろからモンスターに追いかけられている。


「社歌!」



「わかった!」


 進化した言語伝達はきちんと通じているようで、俺の翻訳を待つまでもなく社歌はストーンに指示を出した。

 人形は鈍重な動作で地面に拳を振り下ろす。


 ぴしりぴしぴしぴし。



 グリッドドラムゴリラの地震ですでに痛めつけられていたのだろう。


 地面に亀裂が走っていく。


 揺れる地面がなければ地震などは起こせない。いやでも、これ下に落ちないか?


『二人とも私に捕まっていて。』


 レンさんが助けてくれるみたいだ。でも、何か言い方がおかしかったような⋯⋯ ?


「これは⋯⋯ ?!」


「みずがながれてる!」


「地下水脈か?!」


 水流中なら、地震の影響はないはず。なるほどな。なんでレンさんは知ってるんだろ。



 そう思う間もなく、レンさんが俺と社歌の首根っこを捕まえる。


『直方、弱くなった?』


「ほっといてくれ。」


「ストーンは?」


 ドール・ストーンは水流に浮かばずに沈んでいってしまっていた。材質が悪いよ。石は流石に浮かべない。

 来迎らいごう印を結んだままで着底した。


 ストーンさん⋯⋯ 。一回しか登場しないゲストキャラかな?


『諦めて!』


「がんばってつくったのに⋯⋯ 。」


 社歌は悲しそうだ。


『潜るよ!』


 レンさんは話を聞いてない。


 とりあえず息を止めた方が良さそうだ。



 冷やっこい感覚が全身を包み、そして水流が体を押し流す。


 俺と社歌を掴んだレンさんが体をくねらせて泳ぐ。

 人魚のような流麗な動きだ。潜水で泳ぐの得意なんだな⋯⋯ 。さすがはレンさん。


 じきに、水門のようなものが見えてきた。地下水脈が本流と支流に別れている。

 人工物のように見える。レンさんは支流の方に入っていった。後ろで水門が閉じていく。動くんだな。やはり人工物か。



 支流はどんどん浅くなっていって地下洞窟に繋がった。


 洞窟の中の入り江だ。先ほどのダンジョンの中よりはだいぶ暗いが、照明は最低限ある。

 ちょうど英彦山ダンジョンと同じくらいの明るさだ。となるとここは。


 俺と社歌とレンさんは身震いして水滴を跳ね飛ばした。



 とりあえず危険は回避できたようだ。



 最後まであのゴリラはドラムを叩きながら地面を揺らしてるだけだったな。何がしたかったんだろ。


 何はともあれ、ここは安全っぽい。


 今は早急に温まりたい。


 レンさんの案内で中に進んでいく。


「おー。どうもー。いらっしゃい。」


 なんとなくデジャブを感じる光景だ。


 阿弥那がそこにいた。


 こたつに潜り込んでいる。

 ここでもこたつを召喚したのか。


 ブレないなこいつは。


「服は中で乾かしてもいいよ。」


「ヒーターとかは?」


「勿体無いからない。」


「こたつは?」


「必要経費だよ。当然だよね?」



 こいつ、なんて澄んだ目を⋯⋯ ?!


 俺は何も言えなくなった。








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― 新着の感想 ―
[良い点] おかしい…合流してるはずなのに事態が悪化している気がする!!
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