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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第二章 西へ

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第六十二話 二つのダンジョン攻略記(後)

 阿弥那のダンジョンは、寝そべった人形が慌てて襲ってくる人形ダンジョンだった。

 なんなら、起きるのをあきらめて横たわった体勢で襲撃してくる。

 せめて起き上がるとこくらい頑張ってほしい。


 ただ、その体勢の人形を相手にするのは、普通の戦闘とは一味違った難しさがあった。

 本来曲がるはずのない方向に関節を曲げ、縦横無尽に空間を飛ぶ人形だ。

 先入観からくる思い込みが俺の行動を縛る。


 さっきまでの戦闘で満足したらしく、レンさんは後ろからゆっくりついてくる。


 サトラにも頼んで、俺一人で戦う。

 つまるところ、今回は俺のレベリングをやることにしたのだ。


「くっ。」


 起き上がるという予備動作も必要のない涅槃人形が俺の肉を断つべく、地面から飛んでくる。


 千鳥は長すぎて取り回しが悪い。紅葉刃に装備を変えて、向かってくる人形を叩き落としていった。


 最初は技能「加速」を用いなければ太刀打ちできなかったが、徐々に目が慣れてきた。


 俺もレベルアップしてきているんだろう。レベリングってすごいな。


 ●


 適当な罠が散発的にある程度で、社歌と千樹の時と比べても緩いというのがこのダンジョンの印象だった。

 多分ダンジョンマスターの性格が出てるのだと思う。絶対にぐうたらな子だ。



「千樹。阿弥那って、どんな子なんだ?」


「やるきなかよ。」


「やっぱりな。」


「わたしとどっちがうえ?」


「しゃかとばっかやっとったけん、あみだのことはあんまりおぼえとらんとよ。」


「わたしがうえってことね!」


 社歌はマウントをとるのが好きなのかな⋯⋯ ?


 小さい子が背伸びしている感じで可愛い。



 ⋯⋯ 情にほだされてしまっているな。

 サトラの時に似ている。俺は多分、甘いんだろう。それでも後悔はしていない。


 これからやるべきことが見えた気がした。


「とりあえず、行こう。まっすぐでいいよな?」


 千樹のゆっくりとした頷きを確認して、俺たちは、さらに奥へと進んだ。


 ●


 ドール・コンル

 Lv170

 職業「ダンジョンボス」

 技能「人形生成」「滑る身体」

 称号「北岳の守護」



 いつものだ。大きな人形。これまでの人形と同じようにやっぱり涅槃の形である。

 涅槃なのは釈迦菩薩で阿弥陀如来じゃないぞいい加減にしろ。


 彼女たちの元ネタにツッコミをいれたくなる。

 益体もないか。


 流石に、ボス相手にはサトラも一緒に戦ってほしい。


 初手、火力ブッパで。


 サトラが、炎を手に灯した。


 さっきのドール・アグレは物理攻撃が効かなかった。

 なら、やるべきは最初から魔法攻撃で戦うことだろう。



「任せた。サトラ!」


『撃つよ!』


 彼女の手の中で、火球が爆発的に光度を増す。


 投擲。間。そして、爆発。


 洞窟が大きく揺れた。

 レンさんのとは比べ物にならない威力だ。

 レンさんの存在意義が問われる。⋯⋯気づかなかったふりをしよう。


 爆発跡から、寝そべった人形が無傷のまま現れた。表面がツルツルと光を反射している。

 ⋯⋯ これは、あれだな。魔法無効なんだろう。ドール・アグレとついになる技能を持っていると考えればわかりやすい。じゃあ、やるべきは接近戦だ。


「サトラ、行くぞ!」


『了解!』


『そろそろ私も参戦するね。』


 俺、サトラ、レンさんが殺到する。


 紅葉刃で切り上げる。サトラは槍でまっすぐ穿つ。

 レンさんは、いつも通りマーシャルアーツと火魔法の複合系だ。


 三つの衝撃が横たわったままの人形を襲った。


 人形は吹っ飛ぶ。

 それでも涅槃の姿勢を崩さないのは、逆にすごいと言えるかもしれない。

 その体勢に並並ならぬこだわりがあるのか。


 とはいえ、こちらの攻撃は確実に通じている。俺の紅葉刃には確かな手応えがあった。

 何より、サトラの一穿が突き刺さった場所には大穴が開いていた。


 ドール・コンルはほとんど機能停止したと言っても良いだろう。


 トドメを刺そうと動き出したところで、力が流れ込んでくる感覚があった。

 これは経験値を得た時特有の感覚だ。

 ⋯⋯ 。ちょっとラグがあったな?

 吹っ飛ばされた時に終わっていたらもう少し早めに経験値が流れ込んできたと思うんだが。


 数レベ上がったことを確認して、阿弥那を探すことにした。


 今までの通りなら、この裏にダンジョンマスターがいる部屋があるはずなんだけど。


「ないな⋯⋯ 。」


 どうしてだ?

 千樹と社歌の時は確かにあったのに。


「阿弥那はどこにいる?」


「あの子はかくれるのがとくいだったから、どっかにかくれてるのよ!」


「わたしもそげんおもう。」


「そのどこかって?」


「へっ?⋯⋯さっ、さあ?」


「このかべのむこうがあやしかよ。」


「わたしもそうおもう!」


 社歌は胸を張るなよ。他人の褌で相撲をとるのが上手いという評価を与えるぞ。


「サトラ、ここに槍を突き立ててくれ。」


『わかった。思いっきり行くよ。』


 Lv666の槍使いの全力が放たれる。


 ダンジョンの硬そうに見えた壁にヒビが入る。


 それはピシピシと波及して、そこ全体へ広がった。


 槍が引き抜かれる。


 壁は砂となって崩れ去った。





 部屋が現れる。


 布団、仕舞われていない炬燵。

 テレビと、ゲーム機。


 有り体に言おう。そこは典型的な引きこもりの部屋だった。




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