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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第一章 東京

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第六話 改めて話をするとしよう

 さて、何はともあれ、彼女と仲良くなりたい。


 すでに家に連れ込むことには成功しているからハードルは限りなく低いとは思う。

 でもこれは何か事情があるからである可能性が非常に高い。

 ここから心を開かせるまでの難易度たるや。想像するだけできつい。


 とりあえず、ジュースでも持っていくか。

 紙コップを手に、恐る恐る彼女に近づく。


 ソファですっかり眠りこけていて、可愛らしい。

 この見た目通りの子なら、悩むこともなかったのにな。

 今更言っても意味がないことだ。


 俺は一瞬、目を瞬いた。

  気を抜いたと言い換えてもいい。


 いきなり俺の目の前に、鈍く光る槍の穂先が出現した。


 それは見るからに鋭くて、一突きで容易く俺の命を奪ってしまうだろう。


 刃を見ないように、その向こうに視線を移す。


 容易な仕事じゃなかったが、なんとか、やり遂げた。


 槍を構える彼女は、こちらを、無表情で見つめていた。

  いつの間にか姿勢は戦闘態勢だ。

 あの一瞬で飛び起きて槍を突きつけたのかよ。やばすぎる。


「俺は敵じゃない。」


 両手を上げて敵意がないことをアピールする。


「槍を下げてくれ。」


 いまだに心臓がばくばくと音を立てて鳴っている。


 命の危険なんてもの、今まで感じたことはなかった。


 彼女と槍先。視線が往復してしまう。

 彼女はこちらを訝しげに見てきたが、ほどなく納得したのか、槍を下ろした。



 ⋯⋯この槍、どこから持ってきたんだ?


 技能に収納って書いてあったから多分そこだな。考えに入れとくべきだったか。


 過ぎたことは仕方ない。




 今からでも遅くない。どうにかしてコミュニケーションを取るんだ。

  いけるだろ。

 さっきは大丈夫だったじゃないか。

 死の恐怖に震えた心を鼓舞する。



「君が家に行っていいと言ったんだろ?」


『なんのこと? ここはどこ?』


「ここは俺の家だ。」


 あの時の受け答えをまるっきり忘れてるみたいだぞ。そんなの俺が怪しまれるに決まってるだろうが。


『ちょっと待って。⋯⋯思い出した。』


 彼女が言って俺はホッとする。


「じゃあ。」


『ちょっと待って。これだけ聞かせて。』


 彼女の雰囲気が変わる。

  闇が彼女の青い海色の瞳を染めていくような感覚だ。


『あなたは⋯⋯。私に、何をさせたいの?』


 その言葉は予想外で、そして、深い絶望が刻まれているように思えた。


 最初にする質問がそれかよ。


 これまで彼女は利用されるということしかなかったのかよ。


 これは俺の想像でしかない。


 でも、彼女の態度は、それがそこまで外れていないことを示していた。


 遣る瀬無さと無力感が俺を締め上げる。



 小首をかしげて、彼女はそんな俺を見ていた。全てを諦めた目だった。



「俺は、お前に何かさせたりしない。お前のやりたいことをしろ。」


『へ?』



 意味がわからないのか、彼女は目を細める。



「何かないのか。あそこに行きたいとか、これを食べたいとか。」


『なんでそんなこと言うの。私は化け物なんだよ。』


 その葛藤はさっきやった。


「お前が化け物でも構わない。」


『そう。』


 だから、彼女になってくれ。そう言うのは流石に早すぎる。俺は堪えた。



 ぐうぅ⋯。


 腹の音がした。 俺じゃない。なら、彼女だ。

 お腹の音だな。

 恥ずかしがってくれると可愛いんだけど。


 彼女はやっぱり無表情だった。

 ただ、こちらを見つめる視線の圧力が増した気がした。


「飯作るからちょっと待っててな。」


『っ!』


 どう見ても喜んでるよな。それがわかるだけで嬉しい。

 何にするかな。お腹が減っている人に食べさせるなら、肉じゃがかな⋯⋯。

 作るの簡単だし。お腹にも優しいはず。

 一人暮らしで上がった料理スキルを使うべき時だ。


 手際よく済ませていく。

 ご飯も炊いとくか。非日常で忘れていたが、もう夕食の時間だ。

 俺もお腹がすいてきた。


 彼女はソファにちょこんと座っていた。膝立ちして、いつでも動き出せる姿勢だ。


「そんなに構えなくてもいいんだけど⋯⋯。」


『いつ襲われるかわからないから。』


 彼女のこれまでが気になって仕方がない。

 でも、それはおいおい知っていけばいいだろう。


「今は大丈夫。ほら、飯できたよ。」


 配膳していく。ご飯、肉じゃが、和え物。

 豪華とはいえないけど、俺もそこまで上手ってわけじゃないから仕方ない。


「召し上がれ。」


 向かいに座って、促した。


「いただきます。」


『⋯⋯? 食べるよ。ありがとう。』


 彼女は俺が手を合わせるのを見て首を傾げていた。

 いただきますをする習慣がないのか。やはり外国人なのかな。


 彼女は箸を迷わせていた。フォークを持ってくるべきだったか。


 ちょいちょいと肉じゃがをつついている。

 恐る恐るという感じだ。肉じゃが食べたことないのかな。


 俺が食べて見本を見せよう。


 箸を操って、じゃがいもを頬張る。自画自賛になるけど、美味しい。

 自分好みの味付けだし。いい感じの火加減だ。


 俺の様子を見て、納得したのだろう。彼女も食べ始めた。

 思っていたより箸づかいが上手い。日本人とは思えないんだけどな⋯⋯。

 レベルの高さに任せて技量でなんとかしてるのかもしれない。


 一口食べて、しばらく静止して、もぐもぐと味わう。

 表情が変わったと思ったら猛然と食べ始めた。


 美味しいってことか? 嬉しいな。


『ん。』


 茶碗を差し出された。おかわりが欲しいらしい。


「了解。」


 ちょっと笑いそうになって、怪訝な顔をされた。



 お腹がいっぱいになったらしい彼女は、ソファで丸まって眠り始めた。

 気まぐれで、猫みたいだ。


 片付けをしながら、横目で観察する。すやすやと、疲れを癒している。

 眠ってくれるのは、俺を少しは信頼してくれた証なんだろう。


 ちょっと嬉しかった。


「調べてみるか。」


 彼女から事情を聞くのは明日でいいだろう。

 俺はパソコンを立ち上げて、検索を始めた。

 やっぱり、彗星は話題になっているようだ。


 彼女の名前で検索してみる。

 トライヘキサ


 一件だけ、ヒットした。

 7年前、アメリカの宇宙船の乗組員として、その名前を持つ13歳の少女が選ばれたらしい。


 その子の写真もあった。褐色白髪。彼女と同じ特徴だ。面影もあるような気がする。

 だが、世界の全てに絶望したような焦点があっていない瞳が、彼女を別人のように見せている。


 ⋯⋯どういうことだ?


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 連投になりますが、ご容赦ください。 第四話にて、 “ひょっとして、また意識を失ったとか。”で終わり、 第五話で “ソファに彼女の体を横たえる。”とありますが、 “君が家に行っていいと言…
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