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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第二章 西へ

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第五十七話 料理は勝負

 

 二人の様子を見にうろちょろしていたら、気が散るから戻ってなさいと母に言われた。


 仕方ないので、出来上がりを待つことにする。ちらりと見た感じでは全然大丈夫そうだった。

 母監修なので当然だろう。


 よく考えたら、母さん、俺に料理を教えてくれると言ってたはずなのに、二人の料理ばかり見てたな⋯⋯ 。

 約束を反故にされた気がしてきた。

 教えることなど何もなかったみたいな免許皆伝扱いだと信じたい。


 ●


『できたよ。』


『私も!』


 サトラとレンさんも料理を並べた。


 サトラはご飯に盛り付けている。

 レンさんの方は、お菓子のような見た目だ。


 鰻だけなのにたくさんのバリエーションができるものだな。

 これが料理の奥の深さというやつか。


 おそらく聞くひとが聞けばわかっていないと言いたくなるであろう感想が頭に浮かんだ。


 言ってないからセーフだ。



「じゃあ、審査員である私が判定を下すわね。」


 母さんはノリノリである。絶対、料理バトル漫画だと勘違いしている。


 とはいえ止めても無駄なのは長年の付き合いで知っている。

 味わってもらおう。



 とりあえず、俺が一番手を務めることにした。 


 最後に蒸しておいたことで熱気と水分がよく籠っている。

 図らずも、先に完成してしばらく待つことを予期していたような料理になった。


 全くそんなつもりはなかったんだけどな⋯⋯ 。


 何はともあれ自信作だ。

 母はどんな判定を下すのだろうか。



 緊張しながら、母の喉が動くのを見る。


 彼女は丁寧に咀嚼してから、目を開いた。


「上手くなったわね。肉とたれが調和した見事な蒲焼きだわ。舌の上でとろけるような柔らかさ。火入れと蒸すタイミングも完璧。⋯⋯やっぱり気持ち悪いけど。」


「そこは気にしないことにしてくれ。」


 経験を積んだ母さんは技能「料理」の力について薄々感づいているようだ。


 確かに、本来の技量に上乗せされているから、そうなっちゃうのも仕方ないかもしれない。


 美味しければいいよ。うん。俺は悔し紛れにそう考えた。


 とりあえず絶賛は貰ったし、気にしないことにしよう。



『次は私。』


 サトラの料理は、テレビで名古屋名物と言われていたあれらしい。


 ひつまぶしだ。


 ⋯⋯ それに類する別物である可能性も十分に考えられるけど。


 ご飯に焼き鰻が載せられている。蒲焼きかな。

 丸かぶりしている気がしてきた。それにしてはタレが白いから、大丈夫か。


 さらに出汁だしだったり、薬味だったり色々な皿に分けられた料理まである。

 あれ一品一品作るのは骨だったと思う。単純に作業量が増えて大変そう。


 母は、まずは一口、何もつけずに食べ、そして、わさびに入り、ついで海苔、ネギなどをつけて食べた。


 ⋯⋯ 味の宝石箱かな。一品料理で勝負したのが間違いだった気がしてきた。


 最後に出汁と一緒に飲んで母は手を合わせた。


「ご馳走様でした。独特の甘い味付けだったけど、美味しかったわ。多分入れていたココナツの効果ね。色々な味を味わえるのも、本家のひつまぶしと同じでとても良かった。ちょっと教えればなんでも理解する飲みこみの良さもあって、合格ね。」


『ありがとうございます。』


 そういえば、二人を試すということだったっけ。


 母さんの雰囲気的に食戟か何かが始まったように思ったけど、元々はそうだったな。


『最後は私!』


 レンさんが食事を運んできた。

 彼女の料理は、どう見ても鰻の影も形もない。

 形状はパイだ。

 洋菓子である。

 ⋯⋯? どうやったら鰻がお菓子になるんだ。


 母もちょっと恐る恐る口にした。

 わかる。鰻ってお菓子にして美味しいのかな。

 確かうなぎパイってのが静岡土産であるらしいけど、あれも鰻はエキスが混じっている程度。

 味は全然鰻じゃない。

 でも、そんな時間はなかったはずだ。


「⋯⋯ これは。」


 一口食べた母が顔をしかめる。⋯⋯あれっ?

 母さんがレンさんのも監修していたはずじゃなかったっけ。そんなひどい料理になるとは思えないんだが。


「鰻はお菓子にするにしても、もう少し、油を落とさせれば良かったわ⋯⋯ 」


『??? 全然美味しいでしょ?』



 自分で手に取って食べながらレンさんは言う。絶対に間違ってるぞ。

 母さんの顔色が尋常じゃなくひどい。


 怖いもの見たさで俺も一口食べることにした。


 ⋯⋯ 。うん。無理。

 塩茹でにされた鰻からは微妙な味しかしない上に、それをパイ生地で包んでいるため、素材本来の味がむき出しになっている。少なくとも、お菓子を期待してこれを食べたらダメだ。



『美味しいと思うんだけどな⋯⋯ 。 トライヘキサもどう?』


『⋯⋯ 。食べられる。』


 サトラは割と美味しそうに口に入れていた。絶対それは長年のダンジョン生活で舌が鈍ってるだけだ。

 だから仲間を見つけたような顔をするのはやめるんだ、レンさん⋯⋯ 。


 この料理で一気にレンさんの株が下がった感がある。


 まさか味音痴だったとは。





 何はともあれ、たくさんあった鰻は使い切った。


 調理した分はみんなで分け合って食べる。

 レンさんのもなんとか食べた。俺は偉いと思う。


 本当に酷かったぞあれ⋯⋯ 。


 思いっきりまずいって言ってしまった。


 レンさんが悲しそうな顔をしたので、罪悪感でもう少し食べる羽目になった。



 そういえばあの料理バトル漫画的な雰囲気はどこに行っちゃったんだろうか。

 てっきり、母さんが優勝を決定するものだとばかり思ってたんだけど。


 勘違いか⋯⋯ ?


 確かに世界線が違う気がする。

 世が世ならもっと料理人が幅を利かせても良さそうなものだ。

 でも、随分前に料理の鉄人も終わっている。


 じゃあ、あの無駄な緊張感は、まるっきり意味がなかったと言うことか。




 ⋯⋯ まあ、いいや。サトラの作ったひつまぶしがすごく美味しいから。



そろそろ卒論追い込みなのでしばらく更新はできないです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 危ない危ない…… もしも料理漫画なら食べれば服が弾けとんだり、口から光線を出して街が壊滅したりするところでしたね(´・ω・`)
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