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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第二章 西へ

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第四十八話 改めて現状確認しよう

 ダンジョンに潜りたかったけれど職業に恵まれず燻っていた俺は、空から降ってきた褐色で白髪の美少女を助けて同棲することになった。


 彼女の名前はサトラ。次のステータスを見ればわかるようにめちゃくちゃ強い。


 名前 トライヘキサ

 Lv 666

 職業「槍使い」

 技能「縮地」「槍捌き」「水魔法」「火魔法」「収納」「人柱力」

 称号「血槍姫」「魔物の敵」「ダンジョン踏破者」「滅ぼせしもの」「逃亡者」


 ただ、強いと言うのは、いろんなトラブルに巻き込まれやすいわけで。


 ダンジョンマスターの逆恨みにアメリカ軍の襲撃。

 まだ一週間も経っていないのになんでこんなに事件が起こるんだってくらい事件が起こっている。


 色々な相手が出てきて、正直余裕も何もあったもんじゃなかったから、結局あんまりちゃんとダンジョンには潜れていない。

 これからは準備を固めてダンジョン攻略もしていきたいところだ。


 まあ、それ以前に厄介ごとはまだまだ残っているんだけど。


 厄介ごとその1。

 アメリカ軍は本当に引いたのかどうか。

 愛さんは折衝をしてみると言う言い方だったが、一国を止めると言うのはどう考えても難しい。

 そう簡単に行くとは思えない。


 厄介ごとその2。

 愛さんから頼まれた、ギリシャの異変の解除。

 向こうに行ってダンジョンを攻略すればいいらしいけど、そう簡単に言ってもいられないのがダンジョンだ。

 このところのダンジョン探索でそれははっきりとわかっている。

 それでもアメリカ軍との仲介をしてくれた以上、断ることはできない。

 しかし、なんで愛さんはあんなに遠いギリシャのことを気にしていたんだろうか。


 ちょっと気になる。後で聞いてみよう。



 基本的にこの二つか。

 あと、サトラのトラウマとなったらしい、彼女の過去のことも気になる。


 でも今更如何しようも無いから過去と呼ばれていることを忘れてはいけない。


 俺にできるのは、今この時を楽しいものにして、彼女の苦しみを忘れさせることだけだろう。


 改めて決意しなくても、俺はそれをやるだろうから、あんまり気にしなくてもいいか。

 自分に対する謎の信頼がある。


 昔、変に意地を張ったせいで女を悲しませたような気がする。

 サトラ以外の女の子との関わりはほとんどなかったので気のせいだろう。

 それでも、俺は女の子に悲しい思いをさせるのは嫌だった。

 多分、常人よりその感覚は強いだろう。

 直感でそう感じた。


 だから俺は俺を信頼に足る人物だと思っている。

 ついでに、明日の自分は今の自分が投げ捨てた仕事を文句を言いながらもやり遂げる人だと信じている。



 それはそれとして、俺は里帰りを目論んでいる。

 両親とサトラを引き合わせてみたい。

 俺が好きな人を両親にも認めてもらいたい。

 そう思う。


 サトラの方も乗り気だし、とりあえず里帰りで問題ないだろう。

 レンさんに関しては、先送りしていいんじゃないかな⋯⋯ 。多分。


 めちゃくちゃ嫌な予感はするけど、致命的なものにはならないと思いたい。


 ちゃっちゃと飛行機を取りたいところだが、問題がある。

 西日本と東日本。

 確かにパスポートはいらない、

 だが、身分確認は二つに別れる前とは比べ物にならないほど厳しい。

 俺が二つ座席をとっても、二人分の身元証明が必要になってしまう。


 愛さんがどうにかするって言ってたけど、流石にそんなに早くは用意できないだろう。


 飛行機は無理か。


 となると、陸路となる。


 東海道。中山道。この二つが東と西をつなぐ伝統的な道路だ。

 ただ、フォッサマグナダンジョン地帯が貫通している。


 現在、浜名湖を中心にアビスと呼ばれる大穴が空いていて、東海道は通行不可能。

 中山道も、諏訪湖に同じように穴が空いている。

 そこを避けてもモンスターが跋扈する危険地帯だ。


 モンスター自体はサトラがいればなんとかなる。俺のレベル上げもできるし、一石二鳥だろう。

 ただ、あの辺りは日本の脊梁と呼ばれるほどに山がたくさんある場所だ。

 決して簡単な道のりとは言えない。

 とは言え利点もある。アメリカ軍が諦めていなかった場合、煙に巻くことができるのだ。

 いい感じにレベル上げして、適当な期間をおいて向こう側に出れば俺たちの足取りを掴むのは難しいはずだ。


 悪くないな。

 大学に行く必要も無くなったし、実家には適当に連絡しておくことにしよう。

 レベル上げするぞ。


 ●


「あの二人をギリシャに向かわせることになりました。」


 大和杉の樹上にて、愛は現状報告を行なっていた。


 634mまで伸びるという目的が達成された以上、彼らが積極的に動くことはほとんどない。

 だが、この件に関しては話が別だった。

 カヤノヒメの失敗とそれに続く日本とギリシャの神々の戦争。

 そしてダンジョンの出現。

 全ての遠因は彼らの主神たるカヤノヒメにあった。

 とは言え、それがなければ彼らはここにいない。


 仕方なく尻拭いに奔走しているのだ。

 そしてもう一つ、彼らが解決しなくてはいけない理由はある。

 ギリシャ静止空間には彼らの仲間の一番下の世代の二人が囚われている。

 死んではいないが、動けない。その状態になってから何年経ったことだろうか。


 彼女たちのために絶対に呪縛を解かなくてはならない。


 だが、相手も一筋縄では行かない。

 この数年で嫌という程思い知った。

 先ほど見出したあの二人は、その閉塞した状況を打破する起爆剤になりうる。


 だからこそ最大限の支援をしようと決めた。

 極力波風を立てない方向性で運営していた敷島をアメリカとの交渉に用いたことはその一環だ。


 感触は悪くなかった。大企業敷島の力は侮れるものでは無い。向こうもそれをわかっているのだろう。


 もう一波乱くらいはあるのかもしれないが、ひとまず安心して良い。


 あとは、もう少し実力をつけてくれれば言うことはない。


 愛は、初対面にも関わらず自分を警戒している風だった男のことを思い浮かべる。


 彼女は、人に警戒されないと言う特性で今まで情報収拾を行なってきた。

 外面は完璧に取り繕っていたはずだ。危険視されるなどありえない。


 だが、あの男は、こちらの実力に気づいていた。


 本当に先が楽しみだ。彼女の顔には意識しないうちに笑みが浮かんでいた。




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