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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第一章 東京

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第四十一話 襲撃

 目の前に広がる青い空と圧倒的な浮遊感。

 

 いきなりだったので、頭が追いついていない。

 何が起こったんだ。


 何者かの襲撃を受けたらしいことはわかる。

 

 それをサトラが躱した。

 俺を守るように動いた。


 そして現在、絶賛落下中だ。三階の高さとはいえ、落ちたら死ぬ。

 いや、サトラならいけるのか。衝撃を殺して飛び降りることが。


『だめ。』


 見下ろすと下には、揃いの黒い隊服を来た不審集団がいて、こちらに銃口を向けていた。



『ちょっと我慢してて。』


「わかった。」


 放たれる銃火を精妙な姿勢制御で躱す。

 一旦強く地面を踏みしめて、サトラは飛び上がる。


 俺は横抱きにされた格好である。俗に言うお姫様抱っこというやつだ。

 

 される側なんだけど⋯⋯ 。

 文句は言えない。こちらは救われているし。


 現実世界では俺の職業『異世界主人公(召喚予定なし)』の効果は発揮されない。


 今の俺はただの一般人レベルだ。だからサトラに守られるのもしょうがない。


 しかし、こいつらはなぜ俺を襲ってきたんだ。

 心当たりは全然ないぞ。

 しかも全員がかなり高い技量を持っていて、統率のとれた動きをしている。


 一番最初に暗器を投げてきた女は特にやばかった。


 鑑定できたステータスはこれだ。


 リン=ワールド

 Lv 170

 職業「反英雄」

 技能「限界突破」「潜伏」「近接戦闘」「風魔法」「異界化」「血族召喚」

 称号「女神(異)の加護を受けしもの」「暗殺者」


 ⋯⋯ この人、レンさんに関係ありそうだけど。

 気にしないことにしよう。偶然ということもあり得るんだし。


『しっかりつかまってて。』


 彼女の言葉に頷いて、腕に力を込める。気恥ずかしがっている余裕はない。


 俺と彼女を銃撃が襲う。

 徐々に加速しながら、彼女は躱していく。

 かすりもしない。俺という大荷物を抱えてこれか。さすがサトラだ。


 建物の壁面をまるで地面のように蹴って、進んでいく。

 俗にいう壁走りだ。

 何かの魔法を使っている気配はしないから、純粋に身体能力のみで行なっているのだろう。

 サトラの高い実力のなせる技だ。

 だが、敵もさる者だった。


『待ちなさい!』


 声が追いかけてくる。


 首をそちらに向けた。

 視認する。


 さっきの女の人、リン=ワールドが同じように壁を走って追ってきていた。

 こちらは、風が不自然に舞い上がっているのを見たところ、風魔法を用いて体重を軽減して、壁走りを行なっているらしい。


『ごめん直方。持ち方を変える。』


「どんとこい。」


 彼女は丁寧に両手で支える体勢から、片手に持ち替えた。


 俺の体を支えるのが一つの手で可能になった。


 すぐに、彼女の手の中に槍が現れる。


 そのまま振り回すと、リンの方から飛んできた暗器が二つ、弾かれて落ちた。


 全く油断も隙もない相手だ。


 でも、俺は微塵も怖いとは感じなかった。

 今俺を守っているのは、『血槍姫』サトラだ。槍を持った彼女が勝てないものなど存在しない。


 そう確信できる。


 ●


 ビルの外壁の間を縫って、二人の戦いは激しさを増す。

 俺という足手まといを抱えながら、サトラの戦闘は的確で、相手を寄せ付けない。


 幾度となく空中で火花が散る。

 負けるわけがないとは言え、相手を振り切ることはできない。

 スピードだけで言ったらサトラに匹敵している。

 やはり強い。


 一進一退の攻防は徐々にその位置を上に移して行った。

 そして、屋上に降り立つ。

 ここは、確か。工学部の、一号館だ。


 工学部一号館の屋上はひらけている。

 誰かが家庭菜園でもやろうとしていたのか、煉瓦造りの花壇と室外機があるくらいだ。



『ここなら思いっきりやれる。』


 サトラはそう言って、リンを睨んだ。

 多分言葉は通じていないけど、ニュアンスは伝わったらしい。


 レンさんと瓜二つの顔をして、腰まで続く金髪はストレート。

 なかなかに美人だが、纏っている雰囲気は冷たい。


『いい度胸ですね。一応聞きますけど、投降する気はありますか?』


「投降するって聞いてるけど?」


 通訳しよう。


『直方を殺そうとしたやつの言うことなんて聞かない。』


「俺を殺そうとしたのでダメだそうです。」


『随分とたらしこんだものですね。さすがは日本政府のエージェントと言ったところでしょうか。』


「へ?」


『とぼけても無駄です。トライヘキサの有用性に気づき、我々から隠しましたよね。』


「⋯⋯ 絶対に何か誤解があると思う。」



『あなたは殺して、トライヘキサは眠らせます。それで任務は完了です。』


 ダメだこの人聞く耳持たねえ。


『行きますよ。覚悟しなさい。技能『異界化』!』


 リンの言葉とともに、あたりの雰囲気が変化する。

 風が強く吹いて、木々を揺らした。ついで空がかき曇る。青空だったはずなのに、見える空は紫に染まっていた。


『ここは私のフィールドです。ここから出ることも入ることも不可能。さらに、私よりレベルの高い生物は全て、私と同じレベルになります。』


「なんだと?!」


『トライヘキサ。あなたが高レベルなのは理解しています。しかし、それだけで私は諦めません。この場所では私とあなたの実力は五分。それに足手まといを抱えて、どれだけ戦えると言うのですか。』


 足手まとい=俺と言うことを考えなくてもすごくまずい。


『私のナイフには睡眠薬が塗ってあります。少し掠っただけでアウトですよ。』


 リンは獲物を追い詰めたことを確信して、唇の端を釣り上げた。







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― 新着の感想 ―
[一言] リンちゃんの失敗 敷島大学で襲う>敷島フラグ 異界化>主人公フラグ お姉ちゃんにTEL
[気になる点] 主人公Lv2倍になるから、敵よりLv高くなるのかな?
[一言] ・絶対的なレベル差のある捕獲対象、ただし足手まといつき ・自分と五分の敵二人 果たしてどっちがましなのか。 まあレベルを上げて物理で殴れないのが悪いんだけど話の都合で意味不明な反則性能かつ今…
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