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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第一章 東京

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第三十三話 恋愛の秘訣。それは最後まで諦めないこと。

 ダンジョンができる前と後で変わったことといえば第一に挙げられる現象について輝夜は尋ねてきた。


 ギリシャの静止空間。

ダンジョンが生まれる少し前に問題になったそれは、ギリシャの首都アテネを中心に円状に広がった領域のことを指す。

ギリシャ一国を飲み込むほどの大きさだ。


 いきなりそこと連絡が取れなくなった。

 メール、映像。全てが止まった。


 電話していた人物はいきなり相手の声が消えたと証言している。


 写真ではほとんど変わっているようには見えない。

 だが、その空間上の人物が誰一人として動いていないとなると話は別だ。


 その時はまだ作動していた衛星カメラからは、ギリシャ中の生物、植物、風、機械、その全てが静止している様子が見えた。

 直に衛星が機能を停止したので、それ以降は勇気ある航空機の写真でしかわからない。

 しかし、今もなお、静止したままであることは確からしい。

 時折、近づきすぎた飛行機が動きを止めたと言う話が出回る。


 その領域に面白半分で入ろうとした人間もまた、動きを止めた。


 境界線は、入ろうとした人々や自動車が止まったまま放置されているらしい。


 流石にEUが境界線を封鎖したが、詳しい原因の究明が始まる前に、世界中にダンジョンが現れた。


 そちらの対応に大わらわになった各国はギリシャを放置。


 未だ、ギリシャは静止したままそこに存在していると言う。



 それは知っている。ダンジョンができる前触れだったと言う人も多い。

 もう一つ、南太平洋諸国全員惨殺事件と合わせて、ダンジョン二大インパクトと呼ばれている。ダサい。どうせなら三大くらいにしてもいいのでは。中国の城塞戦線とか。⋯⋯事件というには少し弱いか。


 で、それに対して何か知っていることがあるかどうかを聞かれた。

 ⋯⋯なんで日本の輝夜姫がギリシャのことを気にするんだろうか。

 解せない。


 そして俺は純粋な日本人なので人ごとのようにそのニュースを見ていた。

 いや、俺に聞いたんじゃなくてサトラに聞いてくれってことか。

 まあ、それくらいなら聞いておこう。俺も気になるし。


『なにそれ?』


 だが、サトラにも心当たりは全然ないようだった。

 よく考えたらサトラの年表は13歳で宇宙行きでそこから七年くらいそこにいたみたいだから、地上のことに詳しくなくても当然だろう。


「そう。残念ね。」


 口ではそう言いながらも彼女は切り替えたようだった。


「よかったら私たちに協力してくれない? あなたたちほどの実力があれば歓迎するわ。」


「ちょっと待てよ輝夜。一般人を巻き込むのはダメだろ。」


「大和は優しいわね。」


 輝夜は愛しげな表情をした。

 大和はそんな輝夜の頭を自然に撫でた。

 二人で恋愛空間を作っている。


 正直に言うと羨ましい。


 くそう。俺だってサトラとあんな関係になりたいぞ。


 大和だって顔立ちは平凡なのに輝夜という超絶美少女といい関係になっている。その技法を学びたい。聞いてみるか。聞いてみよう。

 俺は即断即決した。


「えっ。俺が輝夜と仲良くなった方法?⋯⋯時間だな。」


「時間か⋯⋯。」


「500年くらい一緒にいたらいい感じになったぞ。」


「今なんて?」


「気にしなくてもいい。」


「どう参考にすればいいんですかね⋯⋯。」


「ひとつだけ言えることがある。決して諦めるな。俺はずっと輝夜と一緒の目線で景色を見れなかった。だが、なんとかこの自分の体を手に入れることができた。」


「⋯⋯。」


「彼女が好きなんだろ。でもまだ同じ領域には立てていない。それが嫌なんだろ。」


「⋯⋯ああ。」


「なら、足掻け。目標に向かって、突き進め。いつか彼女と並び立てる。」


「わかった。ありがとう。」


 技法ではなかった。でも、それ以上に彼の信念が伝わってきた。

 つまりは心持ちの問題だった。


 諦めなければ夢は叶う。口で言うのは簡単だ。

 だが、彼には本当にやり遂げた者だけが持つ凄みがあった。

 想像もできないような困難な目標を彼は達成したのだろう。



 そう、俺は、彼女の隣に立つ。

 レベルを上げて、実力をつけて。

 守られるだけじゃなくて、俺が彼女を守れるようになる。


 いつか、必ず。


 ●


 何はともあれ、ダンジョンマスターは大和たちの言うことを聞くことにしたらしい。天狸とうだうだ漫才しながらも、操作を開始した。


「お前らに会えてよかった。機会があればまた会おうな。」


「あなたとはまた戦ってみたいわ。」


「早く帰ってくれ。二度と来るな。」


「マスターの言うことは気にせずに遊びに来てくださいね!」


 一方のコンビの息の合わなさが気になる。いや、あれはあれで逆に息が合ってるのかもな。そんな気がしてきた。


 俺とサトラは金色の光に包まれた。転送されるらしい。


「さよなら。」


『またね。』


 俺たちも挨拶を返しておく。

 言葉が通じないなりに彼女もあの四人が気に入ったらしい。



 光が消えたら、そこは、大和杉を囲む柵の外だった。

 そろそろ夕方らしい。


 ようやく戻ってきた。一日くらいダンジョンにいたみたいだ。


 俺の服装はボロボロで、紅葉刃も隠さなくちゃいけない。


 これは面倒臭いぞ。


 サトラは鎧姿のままだけど、槍を格納できるから大丈夫だ。

 戦いの後もほとんどないしな。あの鎧、自動修復でもついてるんだろうか。

 羨ましい。


 ⋯⋯頑張って、他の人の視線を気にしない図太さを身につけて、帰宅することにしよう。






大和の恋愛の秘訣を参考にしてはいけない(戒め)

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