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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第一章 東京

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第三十話 樹高637m

 

 サトラと輝夜の戦いが始まる。

 先手を取ったのは輝夜だ。


「呪術「炎熱」!」


 破壊力抜群の炎魔法がサトラに向かって放たれる。

 いや、あれは魔法じゃないのか。呪術⋯⋯?

 別体系の魔法だろうか。



 サトラは水を放って相殺した。水蒸気となって爆発する。

 彼女も火魔法と水魔法は扱える。飛び道具で戦えないわけじゃない。


 でも最終的にはサトラが近接戦に持ち込めるかどうかだろう。

 彼女が一番強いのは確実に槍を扱う時だ。


「呪術「氷雪」!」


 吹雪が吹き荒れる。部屋中の気温が下がって凍えるほどだ。

 呪術というのは汎用性が高いらしい。


 遠距離で対峙すれば押し切られる。

 サトラもそう思ったのだろう。


 一発炎を放って道を作り出す。

 さらに突貫。凄まじいスピードで距離を詰める。


「技能「黄金生成」。」


 ズシンと音がした。

 サトラと輝夜の間に金の塊が現れた。

 サトラの突進が止まる。

 でかすぎる。何億円相当だ?

 あれがあれば俺を悩ませていた金銭問題が一瞬で解決する。


 だが、それを生み出した張本人は単なる障害物程度としか考えていないようだった。


「呪術「落雷」!」


 ピカリと光が走った。

 室内に雷が落ちる。

 サトラは転がって避けたが、追撃の雷は落ち続ける。

 かわし切るのは不可能だ。


 それを悟ったのだろう。サトラはかわすのをやめた。

 雷が落ちるのにも構わずに力を溜めて槍を横薙ぎする。


 そこにあった金塊が真っ二つに別れた。


 輝夜への道が今度こそ開ける。


 だが、その代償は重かった。

 落雷が落ち、サトラは電撃に身を震わせる。


 輝夜はそのまま雷を操ってサトラを攻撃した。

 ここで決めるつもりだろう。


 くっ。嫌な予感が当たってしまった。

 今からでもサトラに加勢をしたい。

 でも、もう、手遅れだ。




『技能「収納」。解放⋯⋯。』


 途切れ途切れの声が響いた。サトラの声だ。


 彼女の方を見る。


 落雷のなかに、謎の赤の塊が出現していた。


 あれは、血、か?


 血が逆巻くようにサトラを囲む。


 そして、彼女の体に吸い込まれていった。


 ダウン寸前だった彼女の目に光が戻る。



「なんで?」


 輝夜は自分の目で見ているものが信じられないようだった。

 ほとんど勝利を収める寸前だったのだから当然だろう。


『あああああぅぅー!』


 サトラは獣のような咆哮をあげて、踏み込む。


 槍が輝夜の体を刺し貫く。


 その寸前で、彼女の動きは止まった。




「そこまでだ。」


 いつの間にか二人の間には一人の男が立っていた。


 いや、立っているだけじゃない。あれは、二人の動きを拘束しているようだ。

 壁や床から、木が伸びて二人を捕らえている。


 顔立ちは平凡だが、無視できない存在感がそこにあった。

 年齢は俺と同じくらいだろうか。


 鑑定が発動する。


 名前 敷島大和

 樹高 637

 職業 なし

 技能「木接続」

 称号「世界最大」「世界一」


 Lv637。サトラの次に高いレベル。それだけで相当な実力者であることがわかる。


 ⋯⋯何かレベルじゃないものが見えた気がする。

 気のせいだな。何かの間違いだ。


「輝夜。一旦落ち着け。」


「あなたがそう言うなら。」


 輝夜は素直に頷いて、敵意を引っ込めた。

 あの男に全幅の信頼を置いているようだ。

 本当に何者だ。


『誰?』


 サトラはまだ警戒している。言葉が通じてないからな。仕方ないだろう。


「サトラ。多分、敵じゃない。」


 そのために俺がいるんだ。俺は彼女の側に立って言った。


『わかった。』


 彼女は俺の言うことを聞いてくれた。

 さっきまでバチバチにやりあっていた相手に何もしないのは難しい。

 それでも矛を収めた彼女の姿が嬉しかった。


「輝夜、どうしてこんなことをしたんだ。」


「だって、そこの女が空からあなたのところに落ちてきたから。あなたに敵意があるものだとばかり。」


「だけどお前が守ってくれただろ。それに敵意があるなら外にいた時に襲ってきたはずだ。偶然だったんだろう。」


「でも⋯⋯。」


「そうだな。彼女に聞いてくれ。大和杉を倒すつもりはあるのかと。」


 彼は俺に頼んだ。サトラが日本語を理解していないことに気づいたらしい。


「わかった。あー、サトラ。大和杉を倒すつもりはあったのか?」


『なんのこと?』


 まあ、やっぱりそうだよな。

 多分輝夜が言っているのは、サトラが宇宙から落ちてきた時のことだと思うが、あの時彼女は意識を失っていた。偶然に違いない。


「彼女には大和杉を倒すつもりなんてこれっぽっちもない。」


「やはりな。」


「じゃあ、誤解⋯⋯?」


「そのようだ。⋯⋯謝るくらいはしてもいいんじゃないか?」


「そうね。悪かったわ。ごめんなさい。」


 輝夜は、サトラに向かって頭を下げた。

 自分の中で結論を出してしまう側面はあるが、それを反省することはできる人みたいだ。


 サトラは困ったように首を振った。

 でも、すぐに思い直して輝夜に向かって手を差し出す。


 輝夜は一瞬あっけにとられたようだが、すぐに納得したようで、その手を握った。


 言葉は通じなくても、これなら通じる。

 これで解決かな。


 ただ一人、怪しい動きをしている奴がいる。


「ところで、そこのお前は何をしているんだ?」


 俺の言葉に反応して、ダンジョンマスターの男はピクリとした。


「気づくとはな。だが、もう遅いぞ。フィールド変更。眷属召喚!」


 部屋の景色が変わる。


 ゴツゴツとした岩がダンジョンマスターの下に生まれて、成長する。

 岩の上から彼は俺たちを睨みつけた。


 ついでに彼の隣に人影が生まれる。



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