表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第四章 アメリカ+

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

151/155

第百五十話 ダゴン2

 

 改めて、体格差を感じる。

 見上げんばかりとはまさにこのこと。



 とはいえ、脱出するためには、ここを突破しなくてはいけない。


 ダンジョンは、大ボスを倒して初めて、地上への道が開くものだからな。


 逃げ場はない。

 そう念じて、己を鼓舞する。


 何かを見落としている感覚がしたが、関係ない。


 いくしかない。


 ダゴンの口から漏れる声は、おぞましくて、この世のものとは思えない。

 相変わらずホラー風味増しましだ。


 だが、負けるつもりは毛頭ない。


 うねるように下半身から触手が伸びる。


 邪神系特有の触手攻撃。

 そろそろ慣れてきた。


 紅葉刃一本でも、切って、動きを止めて後ろにかわして、と言った風に捌くことができる。

 紅葉刃の、「紅変」もちゃんと効いてくれるのも相まって、危うさが皆無だ。

 ただ、こちらが触手の機能を停止させても、後から後から追加の触手が用意されていく。その一点だけは、厳しいと言わざる得ない。


 質量保存則を無視して、異界からでも持ってきているのかダゴンの触手は後から後から追加され続けていく。大人しくしていても埒が明かない。

 長期戦は明確に不利だ。しかし触手の数が多い。


 苦戦している俺たちに向かって、ダゴンの本体が動き出した。


 自らの出した触手を踏み潰しながら、拳を構えて、打ち出す。


 砲弾のようなパンチが飛んできた。

 視界いっぱいに拳が広がる。


 これが、ナルデの食らった攻撃。生半可じゃない。


 躱す⋯⋯。いや、後ろには二人がいる。

 通すわけにはいかない。


 大丈夫だ。俺の速さを信じろ。

 隣にはサトラもいる。二人で力を合わせればできないことなんて何もない。


 目の前に迫るダゴンの拳。それに紅葉刃を突き立てて、それを支点に飛び上がる。

 体がくるりと一回転して、気づけば、ダゴンの腕の上。


 紅葉刃の紅変と、サトラの突きの影響で、ダゴンの腕は痺れて動けないようだ。


 これは千載一遇の機会だ。


 瞬時に判断して、腕の上を駆ける。


 肩から顔へ飛び乗った。

 顔もでかい。

 だが、突起が多くて登りやすい。


 神だろうとなんだろうと、人体を模しているのであれば、弱点は、変わらない。


 ぎょろぎょろと、魚のように動くその瞳めがけて俺は紅葉刃を突き刺した。


 身悶えするようにダゴンは体をくねらせる。


『ぐぎゃぎゃががぐぐぎぃーー!』


 苦悶の呻き。


 効いている。

 そりゃ毒に似た効果を及ぼす短剣を急所に受けたんだ。当然そうなるか。


 ダゴンの体が大きく揺れて、流石に俺も振り落とされる。


 触手を増殖以上の速度で殺しているサトラの近くに降り立った。

 うん、体が身軽すぎる。

  ヨセミテダンジョンと、このダンジョンで体を動かしてきたから、このLv700を超えた身体能力に、体が適合したと言えるだろう。


 肉薄できるのなら、なんの問題もない。

 俺の身体能力で、なんとでもできる。


「畳み掛けるぞ!」



『うん!』


 サトラとともに触手を飛び越える。

 後ろは、大丈夫だ。


 触手たちの指向性は、ダゴンの狂乱によって失われている。


 そこにレンさんから火炎魔法が飛べば、押しとどめることは簡単なはずだ。


 その間に、俺たちは距離を詰める。


 魚人の体と触手のつなぎ目。


 そこに、攻撃を集中させる。


 元を断てば、この厄介な触手攻勢は終わる。


 物量をそれ以上の手数で上回る。


 俺とサトラなら可能だ。


 戦いが始まる前に、ナルデが言っていた言葉。それを思い出す。


『不自然なところがあるんだ。そこを突けば、突破口が開けるかもしれない。』


 不自然なところ。それは、間違いなく、触手と魚人のつなぎ目だろう。


 魚人の腹を突き破って、触手が無理やり生やされたような不自然さ。


 それを突く。

 もはや完全に物理的に突いている。

 これで構わないだろう。


 削りとる。


「うおおおおお!」


 左手の紅葉刃、そして、素手の右。

 くっ。千鳥が、あれば⋯⋯。


 とはいえ、素手の殴りも思っていた以上にダメージを出せている気がする。

 これがレベルの暴力というやつか。力押しでなんとでもなりそうだ。



 未だダゴンの上本体は、紅葉刃の影響で停止している。


 だが、触手部分はとてつもなくタフだ。


 俺とサトラが全力で攻撃しているのにも関わらず、元気に触手を繰り出してくる。リソース切れは望めないのか⋯⋯?


 こちらも、称号「神殺し」と「邪神討伐者」があるから、ダメージは伸びているはずなんだけど⋯⋯。


 そろそろこの広い神殿が触手で一杯になるぞ。


 生臭い匂いが一面から漂ってきている。



 後ろで炎魔法が発動している熱気はあるから、レンさんは無事だし、ナルデも大丈夫だ。


 ⋯⋯うーん。

 手詰まりだ。


 いや、もちろんこのまま削っていけばいつかは効いてくると思う。

 だけど、それがいつになることか。全然予想できない。


 でも、ぼやぼやしていたら、上が復活してしまう。


 呻き声が、小さくなってきた。

 今、そちらに意識を取り戻されると、流石に対応できない。


「削り切らないと⋯⋯!」


 つぶやきが漏れてしまう。

 余裕がない。


『わかった。やるよ?』


「サトラ、何を?」


 君は俺以上の速度で触手をすりつぶしてるだろ。


 サトラは体をかがめた。


『技能「縮地」発動』


 一瞬で、距離が詰まる。


『んんん!んりゃあぁ!』


 そのまま槍と一緒にサトラは砲弾のように突き刺さった。

 正面からとんでもない威力にさらされて、ダゴンの体に穴が開く。


 そのままサトラは、体の向こうまで突き進んだ。


 触手部分は軟体だったのかな⋯⋯。


 ともあれ、触手の生産は止まった。


 まずは一手、これでかなり有利になったはずだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ