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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第四章 アメリカ+

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第百四十九話 ダゴン

 

 それからも扉は何個かあったが、すでに開かれた後だった。

 何かしらの操作をしたらしき石盤の跡がある。

 だが、俺たちが再度ギミックを解きなおす必要はないようだった。


 正直なところ、ありがたい。


 俺たちの力で解けたかは微妙だ。


 こう言う分野に関しては、ナルデの力が突出しているからな。


 その力を借りられるのなら、言うことはない。


 重苦しい、石の通路。

 ところどころにあの、インスマス水妖をかたどった石像が置かれている。

 幸い、最初の部屋のように動き出すことはないようだったが、それでも心臓に悪い。いつ動き出すかわかったものじゃないからな。


 その石像は、先に進めば進むほどに、その大きさを増しているようだった。


 もともと俺の肩くらいの高さしかなかったはずなのに、いつの間にやら、俺の背丈の二倍近い高さになっている。

 徐々に核心部へと近づいているのは間違いないようだ。

 ただ、このサイズの相手が出てくるのは勘弁だな。そんなにレベルが高くない相手だったらいいんだけど、今までの相手から考えると望み薄だ。

 ボスはレベル500くらいになっていてもおかしくはない。

 もっと上であることもありうる。せめてクロノスレベルであって欲しい。

 もう夜に吠えるものレベルの相手と戦いたくない。


 流石に本の中のダンジョンでそう言うことはないと思うけど、あたりの不気味さ的には十二分にあり得る範囲内に思えてくる。


 ナルデがボスに到達する前に、俺たちが追いついて力を合わせられればいいんだが。


 見たところ、戦闘がほとんどなくて、ギミックを解くものが大半だった。

 それじゃあナルデの足止めはできない。


「ダンジョンボスとナルデが戦っているかもしれない。出来るだけ早く追い付こう。」


 そう、その可能性が一番高い。

 二人とも気を引き締めたようでうなずきあう。


 俺たちが追いつくまで、無事でいてくれよ。


 ●


 戦闘音が聞こえてきた。


 ナルデの放つ銃声。狂乱の叫び。


 重々しい打撃音。


 一気に速度のギアをトップまで引き上げる。


 今まで使っていなかった、最高速度で、俺とサトラは、その場に飛び出した。



 天井の高い部屋だった。


 これまで天井が高かったことはあったが、今回のは、まさしく玉座の間というべき高さだ。


 そこに大きな椅子が置かれている。

 大きな生物が座っている。

 ナルデの銃撃を受けたのか、ぷすぷすと頭から煙が出ているが、大した痛手には見えない。

 ヌメヌメとした肌。足元に触手。

 夜に吠えるものを想起させるような肉体。

 流石に、あの時ほどの圧は感じないが、それでも、それは、こんなところにいていいものであるはずがなかった。

 そこにいたのは、体長10mに達しようかという、インスマス水妖の巨大版だった。いや、ちょっと違うか。

 インスマス水妖には、触手なんてものはなかった。

 後から無理矢理に触手を付与したような、いびつな構造。


 どこか嫌悪感を抱かせる姿をした、四つ目の魚巨人。

 それが俺たちの目にしたこのダンジョンの大ボスの姿だった。



 ダゴン

 Lv666

 技能「津波」「畏怖」「追跡」

 称号「深きものどもの長」「堕神」「水神」



 その眼前で、小さな体を横たえている姿が目に入った。


「ナルデ!」


 今は彫像のように動かないダゴンの動きに注意しながら、俺たちは駆け寄る。


『⋯⋯はあ。はあ。⋯⋯ううぅ。そう⋯⋯か。君たちが、いたな⋯⋯。』


 ナルデは、息も絶え絶えと行った様子だったが、死んではいなかった。

 消えた記憶も戻ったようだ。


『一発、もらってしまった。あいつが、この世界の核心だと突き止めたまでは良かったんだけどね⋯⋯。』


「助かったから、下がっててくれ。」



『いたいけな私は一歩も動けないよ。』


「それはいたいけな人から出るセリフじゃなくない?」


『こんなに可愛い美少女に、なんてことを言うのかな?』


「少女って年齢じゃないでしょ⋯⋯。」


 少なくとも大学に在籍していたのは間違い無いんだから。

 飛び級という可能性に関しては考えないものとする。


 ともあれ、それだけ軽口を叩けるのだったら、心配しなくても大丈夫そうだ。


「こちらは任せろ。」


『一つ。あいつには、どうにも不自然なところがあるんだ。そこを突けば、突破口が開けるかもしれない。』


「よくわからないけどわかった。」


『任せた!』


「よし。レンさんは援護を。相手はLv666。あのクロノスと同じレベルだ。肉弾戦は俺たちに任せてほしい。」


『仕方ないね。なら、私はナルデを守っているよ。』


 不服そうではあるけど、レンさんは引き下がった。

 レンさんも強いけれど、俺たちほどチートなわけじゃ無い。


 神レベルの相手と戦うには、力不足だ。


 それをいうなら、千鳥を持ってきていない俺もその疑惑があるが、まあ、近接役は多いほうがいいだろう。


 自らをチートと言ってはばからない日が来るなんて、サトラと会う前は想像もしなかったな。

 サトラと出会ったから、強くなって、サトラと会ったから、こんな戦場に臨んでいる。

 自分のレベルが上がるにつれて、相手のレベルも上がっていく。

 少しも楽になった気がしない。


 それでも、相対したのなら、戦うしかない。


「いくぞ。サトラ。」


『うん。』


「まずは触手だ。斬りはらうぞ!」


 千鳥があれば楽だったんだが、装備の不足を嘆いても仕方がない。


 ダゴンの巨大さを前に俺の持っている紅葉刃の小ささが、頼りなく感じる。


 進む俺たちを確認して、ダゴンが重々しく立ち上がった。

 呻き声のような音を上げて、巨体が震える。


 ネクロノミコンダンジョン、最後の戦いが、始まる。


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