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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第四章 アメリカ+

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第百四十六話 館への海中道

 

 もちろん当然のごとく襲撃は行われた。


 四方八方から水の玉が飛んできた。


 安定しているとは言い難い足場だ。


 難しい対処を迫られた。

 左をレンさん、右をサトラが受け持ち、そちらへ炎魔法を放って相殺。


 相殺しきれなかった水は俺が捌く。


 切り裂けばそこで水球は割れて落ちるのでなんとでもなる。


 とはいえ、決してこちらに姿を見せようとしない相手に、俺たちは防戦することしかできなかった。


 敵の数が減らせていないというのは、正直辛い。


 ナルデが本当にこの道を押し通れたのかわからなくなってきたな。


 彼女の戦闘スタイルなら、水球を射抜いて威力を減衰させるのはお手の物だろうが、これほどまでの敵がいたら、その限りではないのではないだろうか。

「無事でいてくれよ。」


 我知らず、焦る。


 それでも、じりじりと前進し続けるしかない。


『埒が明かない。』


「どうにかできるか?」


 俺の手札では無理だ。


『多分、行ける。私ならできる。』


『そうだよ、サトラならできる。』


 レンさん、何もわかっていないのに乗っかったな⋯⋯。


 でも、サトラが何かを思いついたのなら、それは現状を打破できる一手かもしれない。


「頼む。」


『もちろん。任せて。』


 俺の言葉でより一層気合が入ったようだった。


『水火魔法。』


 彼女が放ったのは、複合魔法とでもいうべきものだった。


 水の中で炎が燃えている。

 相反する二つの魔法を、一つに合わせて、両方の性質を兼ね備えた魔法とする。


 理屈はわからなくもないが、それを本当に実践するとは⋯⋯。


 水火魔法は、海の中に着弾しても、炎を宿したままだった。


 まるで熊本の海で見られるという不知火しらぬいのように、海面を炎で染め上げる。



 水であり、火である。


 その性質は、海中に潜んでいたインスマス水妖には、とても効くようだった。


 いや、もともと火が弱点で、海水によって守られていたのだろう。


 その水が炎となって襲う。

 間違いなくこいつらにとっては悪夢に違いない。


 耳障りな断末魔を残しながら、インスマス水妖たちは消えていく。


『こっちにも!』


『うん。』



 レンさんの受け持っていた方の海にも水火魔法が着弾する。


 こちらも同様に、燃える炎で、インスマス水妖たちが炙り出される。


 目を覆いたくなるような数の、魚似の人間じみた化け物が苦しむ姿は、不気味ではあるが、少し滑稽だった。



「やったぞ、さすがサトラだ!」


 俺はサトラの頭を撫でる。


『えへへ。』


 サトラは控えめに笑った。


 可愛いんだよな。大好きだ。


『ほんとすごいよ、サトラはやっぱり頼りになるね。』


 レンさんもはしゃいでいる。そのまま俺とサトラの体を抱きしめた。


『うん。君たちとなら、何処へだって行けると思う。』


 レンさんの体が暖かいし、何よりサトラに触れているので、心がぴょんぴょんしてくる。

 それを誤魔化すように俺は言った。

「そうだな。とりあえずここからだ。」


『もうちょっと情緒を噛み締めてもいいんだよ?』


「今のうちに抜けるぞ。」


『もう。』


 もう、妨害はなさそうだ。


 燃える海を背景に、黒々とした神殿が浮かび上がっている。

 大きな扉には、邪悪な像が飾られており、嫌な予感をひしひしと感じさせる。


 もしかしなくてもガーゴイルでは?


 鑑定をしてみたけど、普通の石像のようだ。


 それにしては、魚っぽい上に触手まであって気持ち悪いけど。

 魚とタコのあいのこかな?


 まあ、実害がないなら放っておこう。



「よし、開けるぞ。注意してくれ。」


 二人が頷くのを確認して、俺は扉を開いた。


 内開きの扉は、しばらく使われていなかったらしく、錆びたような抵抗感だた。


 二人が火魔法を放つ。


 二人ともMPはまだまだ余裕がありそうだ。


 見たところ、部屋には何もないようだった。


 4隅の石像も動く気配はない。


 そこそこ大きくて、5mくらいはあるが、動かないのなら大丈夫だ。


 正面に扉。


 そして、上方にも扉。


 到底届くとは思えないが、脱出用だろうか。



『ねえ、直方。足元を見て。』


 レンさんに言われて、見る。


 岩を直接削り取ったらしい黒色の床。

 その床からじわじわと水が滲み出してきていた。


「これは、水が入ってきている?」


『おそらくね。』


 となると、早めに次の部屋に向かいたい。

 上の出口は、水が回りきった時への逃げ道か?


 それは随分優しい作りだな。


 普通に、正面の扉を開けるのが一番早いだろう。


 だが、俺たちが扉の前に立つのと同時に、4隅の石像が動き出した。

 扉は開かない。

 これが、ギミックか。

 石像を倒したら、扉が開くのだろう。


「みんな、やるぞ。」


 戦闘開始だ。


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