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Lv666の褐色美少女を愛でたい  作者: 石化
第四章 アメリカ+

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第百三十九話 便り


リンレンパパの隣で毛布にくるまりながら、俺は唐突に思い立った。


そうだ。両親に連絡を取ろう。


最後に話をしたのは中国を離れるときだからもう二週間くらいになるか。ちょくちょくメッセージは入れているから、心配はさせていないと思いたいけど、ダンジョンに潜って連絡が取れないことも一度や二度じゃなかった。

一度電話をした方がいいと思う。


レンさんとリンさんのパパとママは、二人の帰りをとても喜んでいた。

たまに帰ってくる我が子を迎える親は、これほど喜ぶものなんだと、自分ごとのように感じた。

ギリシャの後はフランス。その後はアメリカと、なかなか落ち着く時間は取れなかったけど、もう、事件が舞い込むこともないだろう。


今度こそ実家に帰ってダラダラするというミッションを成功させなくてはいけない。


そのためにも連絡だ。


そういえば時差があるんだったっけ。でも夜中なら大丈夫だろ。


多分向こうは昼だ。


だいぶガバガバな計算のもと、俺は通話をすることにした。


『ん。どうした?』


唐突に立ち上がった俺を見てパパさんが不思議そうに言う。


「ちょっと両親に連絡を取ろうと思います。」


『それはいいことだ。親ってのはどんな時でも連絡が欲しいものだからな。』


深く頷いている。

同じ親として思うことがあるのだろう。


ありがたく話をさせてもらうことにした。


とりあえず、母の携帯にかける。

父は仕事な可能性があるから、やめた方がいいだろう。


「もしもし。」


「はいはい。あら仁久しぶりね。いなくなったと思ったらどこほっつき歩いていたのかしら。」


「いや連絡はちゃんとしてるよね?」


「冗談よ。苦言と言い換えてもいいわ。」


「はい⋯⋯。」


ヨーロッパとアメリカをぶらぶらしていたのは事実なので何もいえない。

この機会に見て回ろうと言う気持ちがなかったかと言われると嘘になる。


「まあ、なんにせよ無事でよかったわ。元気そうね。」


「だいぶ元気だよ。今はレンさんの実家に泊まらせてもらってる。」


「まあまあ。あちらの両親によろしくお願いしますって伝えておいて。」


「それをいうのはだいぶ恥ずかしいんだけど⋯⋯。」


「こういうのは最初が大事なの。礼儀正しくいきなさい。」


母さんの言っていることは正論ではある。


俺は、仕方なく頷いた。


「そういえば父さんはいる?」


「ついさっき帰ってきたところよ。」


「それはちょうど良かった。変わってほしい。」


「はいはい。あなた。仁からの電話よ。」


しばらく間がある。

そうか、向こうは夕方くらいか。2時間くらいの時差なのかな⋯⋯。

そんなこともないと思うから多分20時間くらいだろう。おそらく。きっと。


「もしもし。変わったよ。」


「父さん。久しぶり。」


「ああ。久しぶり。全く一日でいなくなるものだから何も話せなかったな。」


「ごめん。」


「何かに巻き込まれたんだろ。仕方ないさ。しかし早く帰ってこいよ。もう一回女の子を連れてくるとなお良しだ。愛想はつかされていないよな?」


久しぶりの会話だというのにだいぶ下世話な話になってしまった。


「大丈夫だよ。」


「ならいいが。ああ。結婚の準備は万全に整えておくから、機会が来たら積極的に狙っていけ?次に帰ってくるときはそういう関係になっていろよ?」


「プレッシャーだあ⋯⋯。」


別の意味のプレッシャーがきたよ。


結婚したいかしたくないかと言われたらとてもしたいです。

二人でこれから歩んでいくという誓い。

それが結婚だと考えれば、とても良いものと言えるだろう。


「そうでもしなけりゃ仁はうじうじするよね。」


おっしゃる通りです。さすが父さん。俺のことをよくわかっている。


「近くにいるからって安心しちゃダメだよ。近くにいるからこそ遠いんだ。思いがあるなら、伝えて、届けて、約束しなさい。」


「わかったよ。」


「よろしい。楽しみにしているからね。」


「ありがとう、父さん。」


「どういたしまして。頑張れよ。」


激励の言葉で電話は終わった。


さっきまでの俺は正直、やることがなくなってしまったなと思っていた。

望む強さをほとんど手に入れて、サトラと並び立てるようになったことで、慢心していた。

ダンジョンに入って、お金を稼いで、美味しい飯を作る。

そんな風に現状維持をしていれば問題ないと思っていた。


でも、それじゃあ足りなかった。

もう一つ先があった。


確かにそれは、俺のやりたいことだ。

勇気がないとか不安だとか、全部ただの言い訳だ。


俺は、何としてもサトラに結婚を申し込む。


拳を固く握り締めた。


「やってやる。」


呟く。

この決意は、俺個人の中にしまっておくものだ。



『あー、興奮するのはわかるが、早く寝ろよ。』


その呆れた声を聞いて、リンレンパパが見ていることを思い出して俺は恥ずか死した。

全くもって一人ではなかった⋯⋯。



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